
企業が成長するには、顧客満足度を向上させるだけでなく、EX(従業員体験)を高めることが重要です。EXの意味や重要性、向上のための具体的施策を解説します。
目次
EX(従業員体験)の意味とは?
EX(従業員体験)は、企業の成長と競争力強化に欠かせない要素として、注目を集めています。従業員が職場で経験する、あらゆる体験を包括的に捉えるこの概念は、企業の成功に大きな影響を与えます。
まずは、基本的な概念と企業にもたらすメリットを見ていきましょう。
■従業員が企業で体験する全てのこと
EXとは『Employee Experience』の頭文字を取ったもので、日本語では『従業員体験』と呼ばれます。従業員が企業で得る全ての体験を指し、業務内容・働き方・職場環境・人間関係・福利厚生などのあらゆる要素が含まれます。
EXの明確な定義はありませんが、従業員の満足度や幸福度と関係の深い概念といえるでしょう。
EXと似た言葉に、『従業員エンゲージメント』があります。愛社精神や会社への帰属意識を指す言葉で、EXと従業員エンゲージメントは相互に影響し合っています。
■EXを向上させるメリット
人材の流動性が増す現代、多くの企業では、優秀な人材の確保・定着が課題です。EXが向上すれば、従業員のエンゲージメントが高まり、生産性の向上や離職率の低下、組織の活性化などにつながるのがメリットです。
従業員エンゲージメントの高いチームは、顧客満足度や生産性においても優れた成果を上げることが分かっています。「この会社で働けて良かった」という従業員の気持ちや行動が、企業に持続的な成長と競争力向上をもたらすのです。
EXを向上させるための具体的施策
EXを向上させるには、従業員の視点に立った施策が欠かせません。多くの企業では、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?ここでは、代表的な例を紹介します。
■職場環境の改善とワークライフバランスの促進
EX向上に欠かせないのが、職場環境の改善とワークライフバランスの促進です。企業は従業員のニーズを把握し、柔軟な働き方を可能にすることで、EXの向上と企業成長の両立を図れます。
従業員の満足度を高めるため、フレックスタイム制やリモートワークを導入したり、有給休暇の取得を促進したりする企業は少なくありません。
オフィス環境の整備や福利厚生の充実、コミュニケーションツールの導入も重要です。社内アンケートを実施し、従業員のニーズに応じた職場環境の改善を検討するのが望ましいでしょう。
■キャリア開発と成長機会の提供
キャリア開発と成長機会の提供は、EX向上の重要な施策です。企業は、一人一人の能力やキャリアプランを理解し、適切な育成の機会を提供する必要があります。具体的には、スキルアップ研修やメンタリングプログラム、社内公募制度などが効果的です。
また、『エンプロイージャーニーマップ』を活用し、従業員のライフステージごとに適切な支援を行えば、個々の成長を促進できます。エンプロイージャーニーマップとは、入社してから退職するまでに経験する一連の出来事を可視化したものです。
このように、キャリア自律を支援しつつ、組織へのエンゲージメントを高める施策設計が、EX向上の鍵となるでしょう。
■オンボーディングやトレーニングの強化
オンボーディングとは、新たに入社した従業員が、円滑に組織になじめるように設計する一連の取り組みです。日本では、中途採用者に対するオンボーディングが手薄く、放置に近い状態にされることも珍しくありません。
徹底したオンボーディングを行うことで、従業員の能力向上とモチベーション維持が図れ、結果として組織全体のパフォーマンス向上につながります。企業理念や文化を体験的に学ぶプログラムを導入したり、メンター制度を設けたりするのもよいでしょう。
EXと関連性のあるキーワード
EXに関連性があるキーワードには、CXやUXが挙げられます。これらの概念は、企業の成功に不可欠な要素として注目されています。それぞれがどのように関連し、企業成長に貢献するのかを理解しましょう。
■CX(顧客体験)
CXは『Customer Experience』の略称で、日本語訳は『顧客体験(顧客体験価値)』です。企業の製品・サービスの認知から解約・破棄に至るまで、顧客が得る全ての体験を意味します。
CXが重要視される背景には、製品・機能・価格などの面での差別化が難しくなっていることが挙げられます。顧客の体験価値を高めることで、他社に差を付けようとする企業が多いのが現状です。
EXが高まれば、顧客サービスの質も向上することが分かっています。また、顧客満足度が上がれば、従業員のモチベーションやパフォーマンスが高まるでしょう。このように、EXとCXは企業成長の両輪として機能しています。
■UX(ユーザー体験)
UXは『User Experience』の略称で、日本語訳は『ユーザー体験』です。製品・サービスのユーザー(利用者)が得る全ての体験のことで、UXはCXの一部に含まれます。
良質なUXを提供するには、アクセスのしやすさ・使いやすさ・見つけやすさといった『ユーザー目線での開発』が不可欠です。
EXが高い企業では、従業員がユーザーのニーズをより深く理解するため、優れたUXが創出される傾向があります。EXの向上はUXの改善につながり、結果として企業全体にプラスの効果をもたらします。
EXは企業の成長に欠かせない要素
生産年齢人口の減少により、多くの企業は人材の確保に頭を抱えています。EXの改善・向上は、従業員の満足度・働きがいを高め、結果として離職率の低下や生産性の向上をもたらすでしょう。
EXは、CXやUXといったキーワードとも密接に関係しています。これらの要素を総合的に考慮し、戦略的にEXを向上させることが、企業の持続的な成長につながるといえるでしょう。企業は、従業員のニーズをよく理解した上で、具体的な施策を講じる必要があります。
構成/編集部