
『ピンキリ』とは『ピンからキリまで』の略語で、ポルトガルから伝わった『天正カルタ』の『pinta』と『cruz』を語源とする言葉が語源だという背うがあります。TPOをわきまえた正しい使い方をマスターしましょう。
目次
『ピンキリ』という言葉は耳にしたことがあっても、正確な意味や使い方を知らない人もいるのではないでしょうか。
「ピンキリ」の意味とは?
まず、意味や語源について解説します。
■ピンからキリまでの略
『ピンキリ』は、『ピンからキリまで』という表現を略したもので、物事の程度や範囲が広いことを表す際に使われます。語源は、16世紀にポルトガルから伝わった『天正カルタ』にあるとされています。
この『天正カルタ』は4つの紋にそれぞれ12枚ずつ、計48枚のカードから構成されています。
カルタの1枚目の札を『ピン』と呼んだことから、「ピン」は最初を意味する言葉となり、カルタの最後の12枚目のカードは『キリ』と呼んだことから、最後を意味する言葉になったと言われています。
『ピンキリ』は『最初から最後まで』を意味する言葉ですが、現代では、品質や価格の幅を表現する際によく使われます。
■「ピン」と「キリ」のどちらが上?
『ピン』と『キリ』では、『ピン』が上位を示します。それぞれ、『1』と『10』を意味することから、数字の大きい『キリ』の方が上位だと思う人も多いでしょう。
本来は『キリ』が上という意味で使われていましたが、江戸時代以降に上下が逆転したという説があります。そのため、現在では『ピン』が上で『キリ』が下という認識が一般的です。
ただし、最近ではものの優劣を表すのではなく、「好みはピンキリだ」のように単なる幅の広さを表現する際に使われるケースもあります。
■「ピン」と「キリ」は単体でも使える
それぞれ単独でも使われる言葉なので、日常会話やビジネスの場面で意識せずに使用している人もいるかもしれません。『ピン』は『一人』を表す言葉として使われ、『ピン芸人』や『ピンショット』といった表現があります。
一方、『キリ』は『区切り』『終わり』を表すときに使われることがある言葉です。例えば、「この仕事はキリがいいところで終わらせましょう」のように使用できます。また、「キリがない」と言えば、いつまでやっても終わりにならないことを意味します。
「ピンキリ」の類語と英語表現
似たような意味を持つ類語も、いくつかあります。類語を知っておくことで、状況に応じた適切な言葉遣いができるでしょう。また、ビジネスシーンなどで役立てられるよう、英語表現も紹介します。
■玉石混交
『玉石混交』(ぎょくせきこんこう)は、良いものと悪いものが混じっている状態を指します。宝石(玉)と石ころが混じり合っている(混交)様子から生まれた言葉です。
例えば、「インターネット上の情報は玉石混交だ」と使うことができます。これは、価値ある情報と信頼性の低いうわさ話などが混在しているという意味です。
幅広さや優劣を強調するというより、質の差や多様性を表現するのに適しているといえるでしょう。さまざまな価値が混在する中から、良いものを見極める必要があるときなどに使われる言葉です。
■当たり外れ
『当たり外れ』は、物事が予想通り当たったり外れたりすることを意味する言葉です。そこから、物事の良しあしや、成功と失敗の差を表現する際に使われることがあります。
例えば、「今年のりんごは天候の関係で、味に当たり外れがある」という使い方ができます。ビジネスシーンでは、「新規事業は当たり外れが大きいものだ」といった具合に使用できるでしょう。
物事の幅や多様性を表現するより、二極化した状況を表すのに適している言葉です。リスクや不確実性を含む状況を、簡潔に伝えたいときに使えます。
■「ピンキリ」の英語表現
ビジネスで海外とやりとりする機会がある人は、英語表現も知っておくと便利です。英語での表現にはいくつかの言い方があるので、場面に応じて使い分けてみましょう。
- wide range in price:価格の幅広さを表す際に使える表現。例)There is a wide range in price.
- prices range from $〇〇 to $〇〇:具体的な価格帯を示す場合に使える表現。例)The prices range from $10 to $700.
「ピンキリ」の使用例
最後に、具体的な使い方も確認しておきましょう。日常会話のさまざまな場面での使用方法を、例文とともに解説します。
■ランクやレベルに対して使う
ピンキリは、物事のランクやレベルを表現する際に使われます。
- ホテルのサービスもピンキリだから、高級なところもあれば、簡素なところもある。
- 大学のレベルはピンキリだから、選び方が重要だ。
- レストランの味もピンキリだから、事前に評判をチェックした方がいい。
- 医者の質もピンキリだから口コミを参考にした方がいい。
『ピンキリ』は、さまざまな物事のレベルの差を簡潔に表現できる便利な言葉です。ただし、フォーマルな場面では使用を控え、より丁寧な表現を選ぶよう注意しましょう。
■価格帯に対して使う
価格帯に対しても、ピンキリはよく使われます。
- 腕時計といっても、ブランドによって値段はピンキリだ。
- 新築マンションの価格はピンキリで、数千万円から数億円まである。
- パソコンの値段もピンキリだから、予算に合わせて選ぼう。
- 当社の製品ラインアップは価格帯がピンキリなので、さまざまな顧客ニーズに対応できます。
このように、価格の多様性を簡潔に表現でき、幅広い選択肢があることを効果的に伝えられます。
正しい意味を知って適切に使い分けよう
『ピンキリ』は、品質や価格の幅広さを表す表現です。ビジネスシーンでも使われることがありますが、ややカジュアルな印象を与えるため、使用の際はTPOに注意する必要があります。
フォーマルな場でも使える類語や表現なども、知っておくとよいでしょう。場面に応じて、適切に使い分けることが大切です。
構成/編集部