過酷な環境に晒されているビジネスパーソンの悩みは深い。だが、日々の課題の中にこそ人生を豊かにするためのヒントが詰まっている。異色の経歴を持つVTuberが、今回は「どこからがセクハラか?」について答えます!
セクハラへの処方箋
最近、中間管理職向けのセクハラ研修を受けてふと「セクハラ」と「コミュニケーション」の境界線ってどこにあるのか疑問に思いました。ある人の行動が「セクハラ」に当たったとしても、同じことを別の人がやると「コミュニケーション」として成立することも。何がその差を分けるのでしょう?
【結論】
セーフラインを探ろうとしない!コミュニーションに「性」は不要です
そもそもセクハラとは?
回答する前に簡単に、職場におけるセクシュアルハラスメントの定義を設定しようと思います。
厚生労働省のとある資料によると、職場におけるセクシュアルハラスメントとは、〈「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されること〉をいうそうです。
さて、ここでお話ししたいのは、「アナタの言動がどう伝わるかは、結局は受け手次第」ということです。受け手がセクシュアルハラスメントと解釈して気分を害してしまえば、セクハラとなってしまう可能性があると言うことです。
そもそも、一般に業務内でセクシュアルハラスメントに該当する言動が、正常なコミュニケーションの1つとして機能している場面を想像することのほうが難しいですが、実際セクシュアルハラスメント研修を受けて「これはダメなのか」「あれもダメなのか」という質問が後で挙がることはそれなりにあるそうで……。
セクハラと普通のコミュニケーションの違い
さっきも話しましたが、ある言動が「セクハラ!訴えてやる!」と言われるのではないかと思うと、女性従業員にどう声をかけてよいか分からないという人はそれなりにいます。この怯えから解放されるには、セクシュアルハラスメントと普通のコミュニケーションの違いを理屈立てて理解することが大事になります。
まずは、合意性と快適性の違いです。そもそも、普通のコミュニケーションは双方の合意を前提にしています。日常的な会話においても、同じ会話内容でも二者間の関係性が親密なのかそうでないのかによって、相手の受け取り方が変わることは容易に想像できることですよね。他方で、セクシュアルハラスメントの場合、相手が合意性や快適性を感じていないことが多いです。このような二者間で同意されていない言動は相手を一方的に不快にさせて仕事の効率や円滑な業務遂行を妨げてしまう要因になってしまいます。
また、普通のコミュニケーションとセクシュアルハラスメントでは、その目的も変わってきます。前者が一般に情報の伝達や関係性の構築を目的としたものが多いのに対して、セクシュアルハラスメントは不適切な身体的な接触、性的なコメント、下品な冗談など性的な内容を不適切に持ち込んで、自身の性的欲求や相手の性的羞恥心を煽って楽しもうとするものであることが多いです。しかも、後者は、しばしば権力や立場の不均衡を利用して行なわれます。例えば、上司が部下に対して行なう場合のセクシュアルハラスメントはイメージしやすいと思いますが、不快な思いをした部下は何も言い返すことができません。
普通のコミュニケーションは双方がポジティブまたはニュートラルな反応を示し、関係を深めたり、業務効率の改善などの良い効果がある一方で、セクハラはコミュニケーションの受け手が不快感、不安、恐怖を覚え、その結果仕事への影響(例:仕事効率の低下や退職の意思など)を感じることが一般的です。優秀な人材がアナタのミスコミュニケーションの結果、会社を去ってしまう……考えただけでも恐ろしいことですし、場合によっては訴訟にまで発展するかもしれません。
もちろん、セクハラの定義や認識はアナタの質問通り、個々人によって異なる場合があり、ある人にとっては普通のコミュニケーションでも別の人には深刻なセクハラと受け止められることがあります。そのため、基本的には相手の快適さと同意を重視することが重要になるのです。
まずは何より、相手を思いやる気持ちが大事。ハラスメントのみならず、コミュニケーションを取る上での大前提だ。
大事なのは「日頃の人間関係と伝える力の修業」
さて、ここまでいろいろと話してきました。大事なのな「コミュニケーションの大原則」である相手への思いやりを忘れないことです。中間管理職ということでいろいろと大変なことも多いと思いますが、改めてコミュニケーションの形を見直すなどの対策を考えていただいて職務に邁進していただければと思います。
そもそも、業務に必要な声かけに性的なものは1つも存在しないはずですから、そこも忘れないでいただければと思います。
犯罪学教室のかなえ先生
元少年院の先生で、犯罪心理学や教育犯罪学の知見からニュースなどを解説するVTuber。近著に『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』。
©夢乃とわ SDイラスト/紀羅わたり
※「教えてかなえ先生」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME1月号に掲載されたものです。