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「反省はしてもいいけど、後悔はしていけない」とブッダが説いた理由

2024.12.19

「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。

私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。

YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。

後悔しない人生のコツとは?

■「自分への強い怒り」が後悔を生む

「あのときにこうしておけばよかった」

「なぜあんなことをしてしまったんだろう。やらなければよかった」

こんなふうに過去の出来事を思い出し、クヨクヨと落ち込んでしまうことがあります。そこには、やったことに対する「後悔」と、やらなかったことに対する「後悔」のふたつが存在するわけですが、根底にあるのは自分に対する「怒り」です。

ですので、後悔も「瞋」=怒りのグループに属する感情です。

後悔は、記憶力があるからこそ、過去の出来事を覚えているからこそ生まれる感情であり、人間特有のもの。おそらく、人間以外の動物にはないはずです。

うちのお寺で飼っている犬やヤギを見ていても、彼らが「○年前のあの失敗を後悔している」とは、とうてい思えません。

人間はかなり高度な脳の使い方をしており、「あのときにこうしていたら、今とは違う結果になっていたかもしれない」という想像をめぐらせることができます。だから後悔が生まれるのです。

でも、当たり前のことですが、どんなに悔いたところで過去は変えられません。

私たちには、つねに〝今〟しかなく、今できることをやるしかない。

後悔の念を持ち続けていると、判断力やパフォーマンスの低下を引き起こします。考える必要のない過去に執着するあまり、今現在に悪影響を与えてしまう可能性があるのです。

仕事の失敗を悔やんで「なんで、あんなことをしてしまったんだろう」と引きずっていたら、次の仕事の効率が悪くなり、生産性が落ちます。

「次は失敗しないように気をつけよう」と気持ちを切り替えて、今、目の前にある仕事に全力で取り組みましょう。

仕事の失敗は、次の仕事で取り返せばいいのです。いつまでも過去にこだわっていたら、次の仕事の質の低下をまねくばかりか、心身を病んでしまうことにもつながりかねません。

■「後悔」は心の自傷行為

「反省はしてもいいけれど、後悔をしてはいけない。まったく意味がない」ブッダは後悔というものを非常に厳しく諫めました。

「あのときこうしておけばよかった」「あんなことしなければよかった」という後悔は、心の傷口を自分で刺しているのに等しいこと。過去に抱いた嫌な気持ちを、わざわざ、自ら、もう一度味わっていることになるのです。

同じ失敗を何度も悔やむということは、グサッ、グサッと自分をめった刺しにしているのも同然と考えましょう。

いったん気持ちが落ち着いたとしても、その1年後、2年後に再び思い出して……ということをやっていると、全身傷だらけ、トラウマまみれになってしまいます。

いうなれば〝心の自傷行為〟であり、自分で自分を痛めつけていることになります。

後悔の念が生まれるのは仕方がないことですが、ただ悔やむのではなく、なぜそれをやってしまったか(やらなかったか)を冷静に分析して、未来につなげる糧として活かそうとする姿勢を持つことは大切です。

これは後悔ではなく「反省」であり、ブッダも推奨しています。

あえて後悔を楽しむのであれば、それもありでしょう。

「あのときは俺もガキだったなぁ。なんであんなことをしたんだろう。若気の至りって怖いなぁ」

こんなふうに自分のなかで、あるいは他人に対して笑い話にできるのであれば、自分の感情や過去の言動を客観的に見つめられているということです。いわゆる〝黒歴史〟を明るい話題に変えることができているのなら、思い出したときに心に傷を負うことはありません。

要は、過去に起こった出来事をどうとらえるか。どのように考え、自分のなかでいかに処理していくかが重要ということです。

■「誰かのせい」にしても苦しみは消えない

自分で選んでやった(やらなかった)ことだと自覚する。

決して他人のせいにしない。

これらも、後悔してしまったときにとるべき、有効な対処法です。

「親がこの学校のほうがいいというから入学したのに」

「○○さんの言葉を信じたせいでひどい目にあった」

こういった考え方は、他人に責任を押しつけてしまっています。

相手とどんな関係にあろうが、いかなるアドバイスをされようが、最終的に行動に及んだのは自分自身。その決断を下したのは、あくまでも自分なのです。

ひとしきり悔やんだあとは、他人に責任転嫁せず「自分がバカだった。もう同じことはくり返さないようにしよう」と反省しましょう。

そして、あとになって他人のせい、なにかのせいにしないように、行動したり決断したりするときは、「本当に自分がやりたいことなのか?」「本心から望んだことなのか?」を自分自身に問いかけたうえで実行していくようにしましょう。

自分と向き合うこと、自分の頭で考えることにはパワーが必要で、とてもしんどい作業です。「誰かの言っていること」を鵜呑みにして決断するほうがずっと楽なので、ついそうしたくなってしまいます。でも、後悔のない人生を歩んでいくためには、自分で考えることを諦めてはいけません。

とことん考え抜いて自分の判断で行ったことであれば、たとえどんな結果になったとしても「自分で選んだ道だから仕方がない」と納得することができます。後悔をゼロにすることはできないかもしれませんが、頻度は少なくなるはずです。

また、起こってしまったことに対する評価を変えるというのも、ひとつの方法です。

私は子どものとき、親の言いつけを守らずに大けがをしてしまったことがあります。

「危ないからストーブの前で着替えちゃダメだよ」

母親にこう言われていたのに、両親が留守のあいだにストーブの前で着替えようとして、私の真似をしようとした妹と場所の取り合いになり、ストーブの上のやかんをひっくり返して足に大やけどを負ってしまったのです。

そのやけどの跡は、一生消えない傷として残りました。

何度も手術を受け、一時は車いす生活にもなりました。当時はそれがすごくショックで、「どうして言いつけを守らなかったのか」という後悔と、親への申し訳なさでいっぱいでした。

でも、大人になるにつれて、この出来事は自分に対する戒めなのだと思えるようになりました。今では「調子に乗っちゃいかんな」「やってはいけないことをやるのはダメだな」と、傷を見るたびに思うようにしています。

失敗をくり返さないためのありがたい傷。

こう思えるようになるには、人によってある程度時間が必要になるかもしれません。それでも、このように見方や評価を変えることによって、後悔とさよならすることもできるのです。

■生きているうちに墓穴を掘れ

人生において究極の後悔は、自分が死ぬ直前になって、「あれをやっておけばよかった」「あの人にこれを伝えたかった」などと思ったり、亡くなってしまった人に対して「もっとこうしてあげればよかった」などと思ったりすることです。

そんなタイミングで悔いが発生してしまうと、そこから取り戻すことは難しくなってしまいます。

だから、後悔は若いうちにたくさんして、手放すテクニックを磨いていくに越したことはないと思います。

失敗はいい。

反省もいい。

でも、後悔は良くない。

今からこれを、強く意識しましょう。

元気に生きているうちは、償いや埋め合わせができます。「明日があるさ」が通用します。

しかし、当たり前のことですが、人はいつ死ぬかわかりません。これは自分だけでなく、相手や周りの人だって同じです。後悔しない人生を送るためには、今現在抱えている心のモヤモヤへの対処を先送りせず、そのときそのときにしっかりと向き合っていくようにしましょう。

私のお師匠さんは、よくこう言っていました。

「早く墓穴を掘れ」

墓穴を掘るとは、「自ら身を滅ぼす」という意味で使われることわざですが、お師匠さんは違う意味で使っていました。

生前に自分のお墓を建てる、文字どおり墓穴を掘ると幸せな人生を送れるようになるというのです。

これは霊的な力が働くとか、そういうスピリチュアルな話ではなく、自分のお墓をつくる、つまり死を意識すると「いつか自分はここに来るんだ」という自覚が芽生え、残された人生を無駄にせず、一日一日を一生懸命生きねばならないという覚悟が決まる――そんな意味合いを含んでいます。

この言葉を最初に聞いた瞬間はきょとんとしてしまいましたが、今ではその真理がよくわかりますし、まさにそのとおりだと実感しています。

生きているうちに墓穴を掘ることは、後悔のない人生を強烈にバックアップしてくれる有効な行為なのです。

だから、明日死ぬつもりで決断し、今日を全力で生きるように意識してみてください。自分の行動や言動に対して後悔するケースは、今よりも格段に減っていくと思います。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。

人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。

大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?

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■著者情報

大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。

YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答

構成/DIME編集部

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