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「妄想」ばかりしている人が抱えているリスク

2024.12.20

「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。

私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。

YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。

妄想で嫌いな相手を「巨大化」させている

■怒りの〝モンスター化〟が憎しみや恨みを生む

「怒り」の感情が妄想によりどんどん大きくなってしまうと、「憎しみ」や「恨み」に変わってしまいます。

「とにかく、その存在自体が許せない!」というレベルで嫌ってしまったり、気に入らないと思ってしまったりする感情が「憎しみ」で、相手の行動によって自分がなにかしらの不利益を被ったときに湧き上がってくる感情が「恨み」といえるでしょう。

先ほども述べたように、怒りは長時間にわたって続く感情ではありません。

燃料さえくべなければ、「なんであんなに怒ってしまったのだろう……」と自然に沈静化していくものです。

いうなれば〝時間が解決してくれる〟というやつですね。

しかし、憎しみや恨みの場合はそうはいきません。

憎い、恨めしいという感情にずっと油を注ぎ続けてしまうと、火の勢いはどんどんと増していき、消そうと思っても自分では消火できないほどの大火事になってしまいます。

こうなると、自分の心と体を壊してしまうほど大きなダメージを与えてしまいます。また、感情が歪んだ形で外にあふれ出してしまうと、いじめやハラスメント、ストーカーなど、誰かに害を与えることにもなりかねません。

憎しみや恨みは、怒りを悪い方向に成長させてしまった巨大なモンスターのようなものです。たとえ小さな火種であっても、放っておいていいものではありません。心の中で「危険‼」という緊急アラートが鳴り響いている状態だと思ってください。

■「嫌いの巨大化」は自分が損をするだけ

怒り自体は生きものに本能的に備わった情動なので、時として欠かせず、なくすこともできません。

しかし、憎しみや恨みは違います。

人間が生きるうえでまったく必要のない感情ですし、持っていたところで良いことはなにもなく、自分のなかに嫌な気持ちがあることで損をするだけです。

例えば、なにか嫌なことがあって怒りが湧き上がったとします。

これ自体はしょうがないことです。でも、その「嫌なこと」に対して、自分でどんどん嫌いな理由を付け足していないでしょうか?

例えば、職場でどうにも気の合わない人がいたとします。最初は「ちょっと感じが悪いな」程度の気持ちだったとしても、「自分にだけ冷たい気がする」「すれ違ったときに目を逸らされたかもしれない」など、あんなことやこんなことをすべて結びつけて、自分のなかで「嫌だと思う気持ち」を大きく育ててしまう。

そのように、自分の想像力を最大限に駆使して〝嫌いを巨大化〟させていませんか?

人間ですから、好き嫌いがあるのは、仕方のないことです。

だからといって、相手を憎むほどの感情を芽生えさせてはいけません。

なぜなら、自分で勝手につくり出した妄想で、さらに「嫌い」という感情に餌を与え続けてしまうことになるからです。

また、自分のなかでは勝手に妄想が膨らんでいきますが、相手にとっては与あずかり知らない話ですので、憎んでみたところでなにも変わるはずがありません。

逆に、あなたから発せられる負のオーラで、あなたのほうが周りから避けられたり浮いてしまったりする可能性もあります。

憎しみや恨みとは、自分のなかで怒りの感情が消えることなく続き、それが炎症を起こしてがん細胞のようにしこりになってしまった状態。いわば、心に悪性のポリープを増殖させているようなものです。

健康によろしくないことはいうまでもありませんよね。

こちらがどんなに「許せない」と思ったとしても、相手がそれをくみ取って自ら変わってくれることはないでしょう。

自分自身で勝手につくり出した妄想なのですから、自分でなんとかするしかないのです。

どんどん増え続ける心のポリープは、誰も切除してくれません。

■自分の心を「善いもの」で上書きしていく

憎しみや恨みに心を支配されないためには、「事実」と「妄想」をしっかりと分けて考えることが大切です。

憎しみや恨みが自分にとって必要のない感情であることを理解し、自分自身で乗り超えていかなければなりません。

もちろん、理解したところで簡単には消え去ってくれないでしょう。

憎しみになるほどの感情ですから、それこそ根深く、心の中に残り続けようとします。

では、悪いものに占拠されてしまった心を取り戻すためにはどうすればいいのか?

自分の心を善いもので上書きして、バージョンアップさせていく――これに尽きます。

詳しくは第5章でお話ししますが、「善心所」という善なる心所を育てていくことが重要で、ある種の根本治療が求められるのです。

恨みに関しても同様です。私のところにも親子間で起こる虐待についての相談が多く寄せられますが、もう親が亡くなっているのに「いまだに許せない」という方も少なくありません。

親もまたひとりの人間ですから、不器用で、愚かだったということです。

「なぜ虐待するようになったのか?」という事実に目を向けていくと、その生い立ちや人生の不運などに同情の余地がある場合もありますが、虐待を受けた側の立場としては、理性をもって事実を事実として受け止め、自分の心の中に満ちあふれている「悪なる心所」を書き換えていくしかないのです。

謝ってもらいたくても、謝ってもらいたい相手は、この世にもういません。

「お墓の前に行って、思っていることを全部吐き出してしまいなさい」

そんなことを私もよくお話ししますが、お墓でも、仏壇でも、位牌の前でもいいので「こんなことがあった」「あんなことがあった」と語ってみましょう。そうやって自分の感情を口に出して言葉にすることで、自分の感情を客観的に見つめ、理性を働かせて考えていけるようになるのです。

虐待を受けた人ほど「もっといい親に育てられていたら、自分はこんなふうには育たなかった」と親の理想像を妄想します。

でも、誰しも多かれ少なかれ親に対してなんらかの不満を持ちながら育っていくものですよね。

それに、いざ自分が親の立場になってみると「親ってこんなに大変だったんだな……」と痛感すると思います。

いずれにしましても、決して憎しみや恨みを正当化させてはいけません。

私の経験則からしても、ろくなことにならないと断言できます。最終的に自分だけが損をする感情であると、肝に銘じてください。

人を憎んだり恨んだりしている間は、絶対に幸せになることはできません。

「私はあの人を憎んでいるけれど、心はおだやかで幸せだ」などということはありえないのです。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。

人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。

大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?

今回紹介した書籍はこちら

自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法

怒り、悲しみ、不安、嫉妬、後悔――。あなたを苦しめるネガティブな感情との向き合い方、上手な手放し方を身につける方法とは?長年にわたり数多くの人々の悩みや苦しみと向き合ってきた禅僧である大愚和尚が、仏教の思考法に基づき、自分の心との向き合い方、負の感情の手放し方を伝授する必読の一冊!

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■著者情報

大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。

YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答

構成/DIME編集部

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