宇宙に関するスタートアップ企業だけでなく、異業種の企業が宇宙事業に参入するケースは2018年頃から急激に増え、現在100社を超える。中でも〝宇宙を利用〟した企業の身近なサービスについて紹介しよう。
年々拡大しているスタートアップの役割
宇宙ビジネスを語るうえで、スタートアップ企業は欠かせない存在だ。例えば、スペースデブリの除去サービスを開発するアストロスケールは、本物のデブリに衛星を接近させ、周囲を飛行して撮影することに世界で初めて成功した。デブリを捕獲し、軌道から離脱、除去する実証プロジェクトもJAXAから受注しており、日本のスタートアップ企業のひとつが世界的な重要課題であるデブリ問題の緩和につながる新技術を、世界に先駆けて獲得しようとしている。
スタートアップを育成・支援すべく、文部科学省と経済産業省はスタートアップ育成5か年計画の一環で、中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)の枠組みのもと、最大388億円を宇宙スタートアップ企業に交付することを決定。政府の支援が本格的に動き出している。
宇宙ビジネス市場で特に成長が期待されているのは、人工衛星を活用する事業だ。政府や宇宙機関の衛星が撮影した画像の一部は、無償で公開されていて、商業利用も可能。こうした衛星画像を活用すれば、少ない資金でも、アイデア次第でビジネスの最初の一歩を踏み出せる。同画像を使った新しいビジネスの動向にも注目だ。
実務効率化
国土地理院が作る地図を簡単更新
[社名]Ridge-i(リッジアイ) [調達総額]約20.6億円※
※2023年に東証グロース市場に上場
国土地理院のデジタル地図(電子国土基本図)の更新は、地図情報と空中写真を目視で比較して更新する範囲を決める。そのため、作業に多大な時間を要し、1年で更新できる範囲は国土全体の10分の1程度に限られていた。その更新業務を大幅に効率化しているのが、ITスタートアップのRidge-iによって開発されたソリューション。異なる時期に撮影された2枚の衛星画像から家屋や道路の変化を抽出する。
Imagery©Maxar Technologies. Processed by Ridge-i
ウェルネス
目が不自由な人の歩行を支援
[社名]Ashirase(あしらせ) [調達総額]約5.25億円
ホンダ発スタートアップ企業のAshiraseは、視覚障がい者の歩行をサポートするナビゲーションデバイス「あしらせ」を販売中。靴に装着するデバイスとスマホアプリが連動し、同デバイスの振動を活用しながら目的地まで案内する。位置情報の取得には日本版GPSの測位衛星システム「みちびき」を活用。本体価格は5万4000円。2024年10月には進化版モデルが発売済み。