古くからある衛星通信だが、用途は災害対策などに限定されていた。低軌道衛星や成層圏の活用が見えてきたことで、この状況が変わろうとしている。目指すのは国土カバー率100%。大手キャリア4社の主な動きをまとめた。
上空から電波を吹くことで、広いエリアを構築できる衛星通信は、以前からキャリア各社が活用していた。基地局を置くことが物理的、コスト的に難しい山間部や離島、洋上などをカバーでき、空が見えれば通信できるのが利点だ。しかし今までは高度3万6000km(GEO)に打ち上げた静止衛星を使うのが一般的。大型アンテナ付きの専用端末が必要で、用途は音声通話などに限定されている。
こうした中、SpaceX社が6000機以上のStarlink衛星を打ち上げ、通信サービスに参入。2000km以下の低軌道(LEO)で、ブロードバンドサービスに活用できることから、キャリア各社もこれを導入している。スマホのような小型デバイスの通信には、衛星側の改良も必要だったが、それも完了。ユーザーの端末がそのままつながるため、キャリアは一気にエリアを広げられる。日本ではKDDIがSpaceXとタッグを組み、スマホの直接通信を2024年内に開始する予定。楽天モバイルもLEOを活用し、2026年のサービス開始を目指す。
より高度が低い成層圏に通信システムを搭載した無人機(HAPS)を飛ばしてエリアをカバーする計画もある。LEOよりもエリアは限定されるが、スマホとの通信がしやすくなり、運用の小回りも効く。ソフトバンクが研究・開発を進めていたが、ドコモも活用に本腰を入れ、2026年にサービスを開始予定。今後数年で宇宙との通信がより身近になりそうだ。
ケータイジャーナリスト 石野純也さん
出版社でモバイル関連誌の制作などに携わった後に独立。ケータイやスマホに特化したジャーナリストとして、幅広いメディアで活躍している。主な連載は「石野純也のMobile Eye」(ITmedia)。
高度が異なる各衛星通信の違い
高度3万6000kmのGEOは、高い位置で静止しており、カバー範囲は広いが通信速度は遅い。対するLEOは高度2000km以下で、Starlinkのようなブロードバンドサービスにも使えるが、カバー範囲は狭いため、それを衛星の数で補う。
『iPhone』の緊急SOS通信にはGlobalstar社のLEOを利用
『iPhone 14』以降の機種は「衛星経由の緊急SOS」に対応済みで、2024年に日本でも利用可能になった。衛星はGlobalstar社を活用しているが、ユーザーの契約は不要。専用のセンターに位置情報やメッセージなどが送られる。
取材・文/石野純也
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