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伊藤忠商事と丸紅が衛星を活用した宇宙ビジネスに進出する理由

2025.01.15

現在、地球の軌道上には1万基以上の人工衛星(以下、衛星)が周回し、通信や観測などに活用されている。そんな衛星に関する宇宙ビジネスに国内の大手商社の伊藤忠商事と丸紅が参画中。それぞれの取り組みを取材した。

伊藤忠商事

奥田晃崇さん伊藤忠商事 
情報・金融カンパニー 
奥田晃崇さん

海上のオイル漏れをSAR衛星で素早く検知!
環境汚染と回収費用を抑える

 伊藤忠商事は資本関係のあるスカパーJSATを起点とし、通信ビジネスを中心に宇宙関連のサービスに力を入れている。注目は、2023年にカタール環境省向けに提供を開始した「オイル漏れ検知サービス」。同社、ノルウェーKSAT社、スカパーJSATの3社が連携して提供している同サービスは合成開口レーダー技術を搭載する衛星(SAR衛星)のデータを利用し、オイル漏れを迅速に検知。同衛星は曇りや夜間でも地上の観測が可能だ。データはKSAT社によって解析され、結果は1〜2時間以内にカタール政府のシステム上に表示される

「迅速な対応により、環境被害を最小限に抑えるだけでなく、対策コストの削減にもつながります」

 そう話すのは、伊藤忠商事の奥田晃崇さん。同プロジェクトは、2019年に中東で発生した大規模なオイル漏れ事故を受け、カタール政府が対策を模索しはじめたことがきっかけで始動した。

「カタールでは多くの船舶が行き交っており、オイル漏れ対策は不可欠です」(奥田さん、以下同)

 同サービスは開始以来、高く評価され、延長契約も締結されている。今後、他国への展開も視野に入れ、オイル漏れの検知に限らず、SAR衛星の画像を活用した様々なサービスを顧客のニーズを汲み取って提案していく考えだ。

「商社の産業横断的な強みを生かして、顧客開拓とサービス利用促進を図ります」

 また、地理空間情報を提供しているパスコ社への出資を公表した。空間情報の活用を通じて、インフラ管理などの新たなビジネス創出にも期待を寄せる。

 伊藤忠商事は通信ビジネスで足元を固めたうえで、好機を見計らいながら、今後、宇宙空間全体でのビジネス展開を目指す方針だ。

伊藤忠

SAR衛星

SAR(合成開口レーダー)とは、電波を使って地表や物体を観測するリモートセンシング技術のこと。天候や昼夜を問わず観測可能なのが特徴だ。動くレーダーで広範囲のデータを集め、高解像度の画像を合成する。地形の変動や自然災害の状況を監視する目的のほか、軍事、農業、環境モニタリングなど、多分野で幅広く利用されている。

地上局

KSAT(Kongsberg Satellite Services)社は、ノルウェーに本社を置く衛星追跡および地上局サービスを提供しているプロバイダーだ。SAR衛星から送られてくるデータを同社の地上局で24時間受信している。低軌道衛星向けの地球局サービスで世界をリードする同社は、スカパーJSATと協力し、海外地上局の運用も支援している。

衛星画像解析

SAR衛星が撮影したデータだけを見れば、オイル漏れが直ちに検知できるわけではない。KSAT社による高度な画像解析技術により、オイル漏れを起こしている船の特定や、海上に浮かんでいるオイルの状況を正確に把握できるのだ。オイル漏れを起こした船が接岸するとさらに大きくなる被害を、最小限に食い止められるという。

丸紅

早坂宏己さん丸紅 
航空宇宙・防衛事業部
早坂宏己さん

ロケットへの搭載から軌道への移動まで
衛星の打ち上げをフルサポート

 大手総合商社・丸紅が宇宙事業へ参画してきた歴史は長い。

「宇宙開発が政府主導の1990年代から衛星バスシステムやセンサーを輸入・販売してきました。現在は民間宇宙開発の加速に伴い、スタートアップ事業にも参画しています」(丸紅・早坂宏己さん、以下同)

 2016年に日本発の小型ロケットスタートアップ「IST(インターステラテクノロジズ)」と業務提携を開始。さらにイタリアの宇宙ロジスティクス企業「D-Orbit」に出資し、代理店として〝衛星のラストマイル輸送〟を提供中だ。

「ラストマイル輸送とは、大型ロケットによって宇宙空間まで運ばれた小型衛星を、OTVという自力推進可能なプラットフォームを使って、目的の軌道まで移動させること。一般的に、小型衛星は大型ロケットによって放出された地点から、自身の目的軌道まで遷移する必要があります。小型衛星の軌道遷移には、推進器や燃料が欠かせません。『推進器や燃料をできるだけ最小化したい』『遷移する時間を短縮したい』という衛星事業者にとってはラストマイル輸送が必要となるのです」

 衛星はミッションごとに使用する軌道が異なる。そのため、顧客の衛星を各目的の軌道まで運ぶOTVが求められるというわけだ。衛星を輸送した後のOTVは、4〜5年の寿命を生かし、センサーやコンピューターなどの技術テストにも活用されているという。

「D-Orbitのサービスを利用すれば、実証するデータを取得するために必要なロケットや衛星に関する手配・調整が不要になります」

 宇宙ビジネスのスタートアップが新たな技術を開発しても技術実証されていなければ販売は難しい。

「D-OrbitのOTVを使えば運用を任せられるし、多額の費用と時間を節約できます」

丸紅

OTV

2024年8月時点で14機の打ち上げに成功済みのOTV。顧客の衛星を輸送した後は、衛星カメラをはじめとする宇宙機器の軌道上実証に使用。OTVを利用すればコンポーネント会社が衛星やロケットを手配する必要がない。OTVの運用をD-Orbitに任せられるので、コンポーネント会社は機器の受け渡しのみで実証データを得られる。

小型衛星

顧客の衛星は、OTVに設けられた賽の目状の穴部分に詰め込まれ、『Falcon 9』から放出後、宇宙空間での推進装置がなくても目的となる軌道まで到達できる仕組み。50㎏未満の小型軽量衛星なら『Falcon 9』に〝相乗り〟できるのもOTVの利点だ。なお、OTVとは軌道間輸送機「Orbital Transfer Vehicle」の略称。

Space X『Falcon 9』

米Space X社の大型ロケット『Falcon 9』は1段ブースターの回収と再利用が可能な、民間の商業打ち上げロケットだ。徹底した低コスト化により、1回の打ち上げが約74億円という他のロケットに比べて安価なサービスを実現。同社の通信衛星サービス『Starlink」の打ち上げに使われているほか、ライドシェアやOTVにも利用されている。

日本初の〝宇宙商社〟
Space BD社も衛星の打ち上げと 宇宙を利活用するビジネスを開拓

Space BD社

日本初の〝宇宙商社〟Space BDは、2017年に三井物産出身者が創業し、宇宙事業に造詣が深い技術者が数多く所属。創業から約半年後に、ISSから衛星を打ち出して軌道に乗せる放出サービスを展開する事業者として、JAXAから選定された。現在、様々な宇宙ビジネスをすでに展開中だ。Space X社のロケット『Falcon 9』において数百Kg分の搭載枠をまとめて買い付け、衛星や実験装置を打ち上げたい企業が相乗りできるようなサービスを展開。ISSを活用した宇宙利活用サービスも提供している。

取材・文/中川真知子、編集部

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