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次世代宇宙ステーション開発の命運を握る意外な日本企業とは?

2025.01.14

2030年に運用を終える国際宇宙ステーション(ISS)。その後継を目指し、低軌道向け商用宇宙ステーションを開発する計画が進行中だ。各詳細とともに計画にかかわる日本大手商社の宇宙ビジネスについて解説する。

三菱商事

宇宙ステーションの開発参画だけでなく
宇宙ごみ問題に取り組むスタートアップに出資!

〈主な宇宙事業〉宇宙ステーション事業 軌道上サービス事業 衛星データ事業

宇宙ごみの問題は年々深刻化しており、低軌道には現在も多くのデブリが漂っている。人工衛星や宇宙ステーションの運用に影響を与えるリスクが高まり、通信衛星の破損や有人ミッションの安全性も脅かされている状況だ。三菱商事はこの問題にも積極的に取り組み、アストロスケールホールディングス社に出資している。同社はデブリを自動追跡して回収可能な技術を持ち「ELSA-d」(右上写真)という衛星を使ったデブリ除去技術の実証を進めているほか、静止軌道の衛星について寿命延長を可能にする技術も開発中だ。さらに三菱商事は日本スペースイメージングや日立製作所とも連携。衛星画像データを活用して災害対応や通信技術の発展に貢献している。

宇宙ごみに接近して自動で捕獲三菱商事

Starlab Space

『Starlab』『Starlab』

一度に打ち上げ可能!すぐに運用を開始できる

米国Voyager Spaceと仏国Airbusの合弁会社Starlab Spaceを中心に様々な国の企業が参画。一度に打ち上げられる8×8mの大型モジュールは、宇宙空間に到達後すぐに運用を開始できる設計だ。資本参加中の三菱商事は8分野でビジネスを展開する総合商社の強みを生かし、同ステーションの微小重力環境下でしかできない技術や製品の開発などを様々な企業に提案している。

兼松

宇宙ステーションの開発参画だけでなく
宇宙港の開発など幅広く事業を展開

〈主な宇宙事業〉
人工衛星および衛星搭載用システム・部品の輸入販売
ロケット打ち上げ時の地上局の維持管理および打ち上げ支援
衛星妨害波の発信位置特定
大分空港の宇宙港化計画
月周回有人拠点の支援

兼松は、宇宙事業に20年以上取り組み、最近では地球低軌道ビジネスに注力してきた。2020年代後半に「Pathfinder」の打ち上げを計画しているSierra Spaceとは、2021年から提携を開始。Amazon.comの生みの親ジェフ・べゾス氏が創設したBlue OriginがSierra Spaceとともに進める「Orbital Reef」開発にも参画中だ。さらに、再利用可能なSierra Spaceの宇宙往還機「Dream Chaser」(左写真)のアジアにおける着陸拠点を、大分空港に設ける計画も進行している。なお、商用宇宙ステーション「Pathfinder」にはIHIエアロスペースが開発し兼松と共同提案を行なったパッシブドッキング機構を採用予定だ。

大分空港と宇宙をつなぐ構想を進行中兼松

Blue Origin×Sierra Space

『Orbital Reef』『Orbital Reef』

省スペース&低コストで様々な企業に活用を提案

特徴のひとつとして、膨張式モジュール「LIFE」が挙げられる。縮んだ状態で打ち上げられる省スペース&低コスト設計で、軌道上に到達すると膨張して広い居住空間を確保できる仕組みだ。このステーションは2020年代後半から段階的に運用が開始され、製造業、バイオテクノロジー、観光業、エンターテインメント業界など、様々な分野での商業利用が期待されている。

Sierra Space

『Pathfinder』『Pathfinder』

企業のニーズなどに合わせてカスタマイズ

「Unity」というコンセプトのもと、モジュールを次々に打ち上げて拡張させるのがコンセプト。モジュール式の設計により、企業や研究機関は特定のニーズに合わせてカスタマイズでき、効率的な研究環境が提供される予定だ。製造業やバイオテクノロジーといった分野の商業利用のほか、科学や医療の研究用途も検討されており、技術の進歩を支える拠点としても期待される。

三井物産

宇宙ステーションの開発参画だけでなく
宇宙の実験棟開発や衛星の打ち上げを支援

〈主な宇宙事業〉
衛星打ち上げサービス 衛星ワンストップサービス 
地上局サービス 宇宙エンタメサービス

1990年代から取り組んできた宇宙事業について、一度は規模を縮小した三井物産。2018年にJAXAから選定された、ISSの日本実験棟「きぼう」から超小型衛星を放出する事業を皮切りに、宇宙事業へ再参入する。現在はAxiom Space社に出資しているだけでなく「きぼう」の後継機開発に注力しているほか、総合商社として関わりのある森林事業者などの潜在ニーズを見据え、観測衛星の撮影データを利活用することも模索している。なお、子会社の三井物産エアロスペースでは、米国Firefly Aerospaceの代理店として、打ち上げサービス(下写真)、月向け輸送サービス、軌道遷移サービスを展開中だ。

衛星を宇宙へ打ち上げ三井物産

Axiom Space

『Axiom Station』『Axiom Station』

ISSと連携するところから運用をスタート

2026年末〜2027年初頭、宇宙ステーションの一部モジュールを現在運用中のISSに接続させるところから開始し、徐々に拡張させ、ゆくゆくはISSから分離する建設ステップが特徴的だ。同プロジェクトには宇宙飛行士として活躍した若田光一さんのほか、NASAを退役した複数の宇宙飛行士が参加。運用開始に向け、3回の宇宙有人飛行ミッション、105を超える実験テーマなどをすでに完了済み。

取材・文/中川真知子、編集部

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