ChatGPTやGeminiなど、チャット形式の生成AIを使いこなすだけでは、“時代遅れ”と言われる日が、もう近付きつつある。
「AIエージェント」という、さらに進化したAIソリューションが台頭しているためだ。AIエージェントとは何者なのか?本記事では、生成AIとの違いやどのような活用事例があるのかを探っていく。
「AIエージェント」と「生成AI」の違いは“自律性と行動範囲”
AIエージェントとは、自律的に行動してくれるAIのこと。
ChatGPTなどの生成AIは、投げかけた質問や依頼に対しての回答をくれるが、人間からの詳細な依頼が無いと動けないので消極的なAIであるともいえる。
一方AIエージェントは、何か特定の目標や目的を与えると自律的に行動し、他のAIエージェントや生成AIツールを、人手を介さずに利活用して課題解決に導いてくれる。
後述するAIのレベル分けでは、生成AIがレベル1、AIエージェントはレベル2~3と能力差があるように見えるが、利用目的や機能が異なり、また生成AIとAIエージェントの得手・不得手も異なり、目的に応じて使い分けが必要である。と理解しておきたい。
■OpenAIによるAIのレベル分け定義
出典:米bloombergのOpenAI社インタビューより編集部にて作成
ChatGPTなどの生成AIは「レベル1」に定義され、AIエージェントは「レベル2~3」に相当する。質問者である人間の意図をきちんと理解できるか。またそれに対して行動ができるか。ひいては、1を聞くだけで10まで理解できるかどうかでレベルが分かれる。
最上位の「レベル5」は、組織をマネジメントする管理職が部下に対して指示を出したり、他者と交渉したりなどの高次な仕事ができる状態である。
AIエージェントの事例。生成AIと同じく様々なビジネスシーンでの利用が広がりそう
さまざまな業界での活用事例が相次いで発表されている。個人ユーザーとして一番お世話になるのは、カスタマーサポートでのQ&Aではないだろうか。
「Eコマースサイトにログインできない」「パスワードを忘れた」という事務対応から、「季節に合ったファッションを提案してほしい」「初心者が投資を始めるにはまずどうしたらよいか」、といった具体的な商談に繋がる話まで、様々な悩みや相談に対する解決策を提案してくれる。
ビジネスシーンでは、ほぼすべての業務で活躍できるといっても過言ではない。
業種の切り口で例えば、教育分野では、生徒の教育カリキュラムを作ったり学習の進捗に対してアドバイスを送ったりできる。
業務分野の切り口では、マーケティング戦略を立案する際に、既存の顧客データを分析しながら、ブログやSNSで流通する最新の情報を引用し、事業内部のデータと外部のデータを付け合わせて最適な顧客アプローチ方法を提案し、自動的に実行するといった使い方が可能だ。
具体的な事例をいくつか紹介するが、パッと見はレベル1の生成AIと見分けがつかないものが多い。これは利用者とAIとのインターフェイス的には生成AIだろうがAIエージェントだろうが、対話が必須であるためである。が、中身は生成AIに比べて答えや回答を詳しく出してくれるのが、AIエージェントの違いであると理解しておきたい。
■楽天グループ「楽天コンシェルジュ」
出典:楽天市場
ユーザーに合わせて様々な提案をしてくれるAIエージェントで、楽天市場でのショッピングでの専門家として、また相談相手として機能する。
■楽天証券「投資AIアシスタント」
出典:楽天証券
NISA口座の手続きのやり方など、初心者にはハードルが高い投資に対する悩みについて答えてくれる。
■メルカリ「かんたん出品」
出典:AI出品サポート
フリマアプリで出品する際に、画像から商品カテゴリーや商品の特長・説明文を自動で生成してくれる。商品説明の記述を丸ごとしてくれるAIエージェントである。
BtoBでのAIエージェント開発の事例も増えている。
■「XinobiAI」
出典:XinobiAI記者発表会 2024/12/5資料
行政機関や企業向けにAIエージェント開発を手掛けるXinobiAI社は、行政窓口の問い合わせ負担を目指したAIエージェント開発を行なう。その他の企業も参入し始めており、2025年はさらに開発競争が激化しそうだ。
■孫泰蔵さんによればAIエージェント=「寿司のトッピング」
同社Co-Founder CEOの孫泰蔵さんは、生成AIやAIエージェントの基になるOpenAIやGeminiなどの「LLM」はシャリ。それにネタとなる具がのり、さらにトッピングとなるのが「AIエージェント」であると説明する。つまり上に乗るものほど具体的なノウハウやデータがないと品質の高いAIソリューションとならないし、また、このノウハウやデータがAIエージェントの動作原理にもなる。
AIエージェントを正しく合理的に使うために、リスク認識も忘れずに
AIエージェントが頭角を現すほどに、我々ビジネスパーソンが行なう業務の品質が向上したり、まだ見ぬビジネスチャンスに出会えたりと、様々な可能性を秘めている。一方、AIには様々なリスクが潜んでいることも忘れてはなるまい。
■AIに潜む懸念やリスク
例えば、倫理的なリスクでは、自動運転車を制御するAIエージェントが事故を起こしたときに誰が責任を負うのか。またAIエージェントが差別的な判断を下した場合にどう対処するかといったリスクがある。
また、大量のデータを収集し分析するので、プライバシーを侵害してしまうリスクや、AIエージェントが台頭しすぎて人間の仕事がなくなり失業率が上がってしまうリスクもある。
これらのリスクに対処する人間の行動を恐れて、AIが暴走して人間を物理的に処分しようとするSF映画のような事態にもなりかねない。
業務で利活用したり個人で利用したりするときは、このようなリスクがあると認識し、足下を救われないように使いこなして欲しい。
文/久我吉史
NVIDIAが2025年のイノベーションを予測、AIエージェントやデジタルヒューマンの注目度が高まる
2024年は生成 AI が旋風を巻き起こし、イノベーションや創造性を高め、顧客サービスの向上、製品開発の変革、さらにはコミュニケーションの促進のため、このテクノ...
人がAIを育てて、AIがAIを育てる!?アクセンチュアが示すAIの未来
テクノロジーやコンサルティングなど、幅広い分野でサービスやソリューションを提供するアクセンチュアが「テクノロジー ビジョン2024」を開催。今回の主な題材は、「...
Googleがエージェント時代に向けた新たなAIモデル「Gemini 2.0 Flash」の試験運用をスタート
グーグルは2024年12月11日(アメリカ現地時間)、次世代AI「Gemini 2.0」ファミリーの最初のモデルとして、Gemini 2.0 Flashの試験運...