大学卒業後、誰もが新卒で会社員や公務員にならなければいけないわけではない。自営業や起業も選択肢の一つだろう。では実際のところ、起業したいと考えている大学生はどれくらいいるのだろうか?
THE SEEDはこのほど、昨年度に続いて、東京と関西(大阪・京都)の大学生を対象に「起業に関するアンケート」を実施し、300名から回答を得た。詳細は以下の通り。
4割以上の学生が起業に興味あり。身近に起業家がいる人の方が起業意識が高い傾向
起業に興味があるか尋ねたところ、43.0%が「興味がある」と回答した。
<起業に興味があると回答/一部抜粋>
・20歳 東京 女性:自分で動き、成功させた方がやりがいを感じる
・19歳 大阪 女性:社会の役に立ちたいという漠然とした思いがある
・21歳 大阪 男性:仕事をしながら資金を貯めて、起業のことについて勉強したい
・21歳 東京 女性:資金集めと経営のあり方や従業員との関係などを現場で学んでからしたいと考えた
<起業に興味がないと回答/一部抜粋>
・20歳 京都 男性:起業するにはそれなりの技術とかが必要で、そのような能力はまだないと思う
・22歳 京都 女性:起業するための知識がない。人を雇って動かしていく自信がない
・19歳 東京 女性:現在お金を稼いでいるわけではないので、失敗したときが怖い
・19歳 東京 男性:起業のイメージが湧かず、怖い
また、家族や親戚、友人、知人に起業した人がいるか尋ねたところ、周りに起業した人がいる層のほうが、起業意識が高い傾向にあることもわかった(n=300)。
YouTubeやXなど身近なSNSが起業意識を高めるきっかけに
起業に興味をもったきっかけを尋ねたところ、「YouTube」が35.7%で最も多く、「X(旧:Twitter)」が25.6%、「起業家の先輩や友人・知人からの影響」が23.3%と続いた。また、「TikTok」も17.1%の回答を得ており、SNSが学生の起業意識に大きな影響を与えていることがわかった(n=129/起業意欲がある人)。
起業に関する情報収集も上位は「YouTube・X・TikTok」と、SNSが主流
起業に関する情報はどのように得ているか尋ねたところ、「YouTube」が38.8%で最も多く、「X(旧:Twitter)」が23.3%、「TikTok」が20.9%と続いた。
起業に興味を持ったきっかけと同様に、YouTubeやSNSが情報源になっていることがわかった(n=129/起業意欲がある人)。
大学における起業サポートは「情報提供」のニーズが最も高く、実践的なサポートや教育機会の強化も求められる
在籍する大学に起業に関するサポートがあるか尋ねたところ、「情報提供」が27.3%で最も多く、「相談相手になる教員」が17.3%、「授業やゼミ」が16.3%と続いた。
また、どのようなサポートがほしいのか・強化してほしいのか尋ねたところ、「情報提供」が23.0%で最も多く、「授業やゼミ」が21.3%、「相談相手になる現役のプレイヤー(起業家/VCなど)」が18.0%と続いた。情報提供に対するニーズが高く、実践的なサポートや教育機会の強化も求められていることがわかった(n=300)。
起業したい理由は「使えるお金を増やしたい」が最多。昨年度と比較し、お金以外の理由も増加
起業してみたいと思う理由を尋ねたところ、「使えるお金を増やしたい」が34.1%で最も多く、「ビジネスに関心がある」が33.3%、「自分のスキルやアイデアを活かしたい」が29.5%と続いた(n=129/起業意欲がある人)。
使えるお金を増やしたい:34.1%
ビジネスに関心がある:33.3%
自分のスキルやアイデアを活かしたい:29.5%
純粋に憧れがある:24.8%
社会貢献がしたい:21.7%
資産家になりたい:18.6%
尊敬できる経営者・起業家に出会った:17.8%
最新のテクノロジーを社会実装したい:14.7%
会社員を続ける自信がない:10.9%
世の中を変える素質が自分にはあると思う:7.8%
モテたい:2.3%
昨年度の調査では、「使えるお金を増やしたい」が47.6%で最も多く、「資産家になりたい」が34.1%と続いていた。今年の結果を見ると、お金以外の理由で起業に興味を持つ人が増えていることが明らかになった。
起業に対するイメージは1位「失敗した時のリスク大」、2位「莫大な資金が必要」、3位「資金調達が難しい」
起業についてどのようなイメージを持っているか尋ねたところ、「失敗した時のリスクが大きい」が48.7%で最も多く、「莫大な資金が必要」が34.7%、「資金調達が難しい」が33.7%と続き、起業時の大変さや資金集めの難しさをイメージする人が多くいることがわかった(n=300)。
失敗した時のリスク大きい:48.7%
莫大な資金が必要:34.7%
資金調達が難しい:33.7%
自分の経験や能力が生かせる:29.7%
専門的な経験や知識が必要:26.7%
好きなだけ仕事ができる:23.7%
とにかく忙しい:23.3%
自分の価値が上がる:19.3%
桁違いの資産を得られる:16.3%
社会貢献ができる:14.7%
最も起業のハードルになりそうなことは「ビジネスの基礎知識不足」「資金調達」「自己資金」など
起業するにあたり、どのようなことがハードルになると思うか尋ねたところ、「ビジネスの基礎知識が少ない」が48.7%で最も多く、「資金調達」が39.0%、「自己資金」が35.3%と続いた(n=300)。
ビジネスの基礎知識が少ない:48.7%
資金調達:39.0%
自己資金:35.3%
ネットワーク不足:23.7%
人材不足:23.7%
相談できる相手がいない:21.7%
学業との両立:20.3%
事務所や店舗の確保:19.0%
親など周囲からの反対:11.0%
ハードルはない:7.7%
最も求められている支援は1位「資金調達」、2位「税務や法律関連の相談支援」、3位「相談できる先輩経営者との接点」
起業する際に、どのような支援があったらいいか尋ねたところ、「資金調達の支援」が46.7%で最も多く、「税務や法律関連の相談支援」が39.0%、「相談できる先輩経営者との接点」が30.3%と続いた(n=300)。
資金調達の支援:46.7%
税務や法律関連の相談支援:39.0%
相談できる先輩経営者との接点:30.3%
切磋琢磨できる同世代の起業家との接点:28.3%
技術や知識向上の機会:27.7%
共同創業者を探す支援:26.7%
申請関係の支援:24.7%
プログラミングなどのスキル獲得支援:24.0%
起業の意向がある人のほうが、起業やスタートアップに関するイベントに参加している傾向に
起業の意向がある人とそうでない人を比較したところ、起業の意向がある人の方が起業やスタートアップに関するイベントに参加していることがわかった(n=300)。
オンライン情報が起業意識に影響大。オフラインイベントならではの良さを感じるという声も
オンラインとオフラインでの情報収集のどちらが起業意識により影響を与えたと感じるか尋ねたところ、手軽に調べることができるオンラインに影響を受ける人が多いことがわかった(n=300)。
オンライン(SNS、Web記事、動画など):41.9%
オフライン(イベント、セミナー、起業家との接点など):20.9%
どちらも同程度:16.3%
どちらも特に影響はない:20.9%
<オフラインのほうが影響があると感じる理由/一部抜粋>
・18歳 大阪 男性:目の前で生で話を聞く方が印象深かった
・20歳 大阪 女性:対面でお話することでより具体的に身近に感じることができ、その場で質問もしやすい
<オンラインのほうが影響があると感じる理由/一部抜粋>
・21歳 東京 女性:身の回りにはいない実業家の声が聞けるから
・21歳 大阪 男性:コロナ明けもオンラインのイベントが増加していると感じるから
約4割が、AIはキャリアにチャンスをもたらすと感じている
AIは自身のキャリアにどのような影響があると考えているか尋ねたところ、「AIがスキルや可能性を拡張し、新しいチャンスが生まれる」が39.7%で最も多く、「AIに人間の仕事を取って代わられる脅威を感じる」が27.3%、「AIを活用して新しいビジネスを立ち上げるチャンスがある」が22.0%と続き、可能性やビジネスのチャンスに感じている人が多いことがわかった(n=300)。
AIがスキルや可能性を拡張し、新しいチャンスが生まれる:39.7%
AIに人間の仕事を取って代わられる脅威を感じる:27.3%
AIを活用して新しいビジネスを立ち上げるチャンスがある:22.0%
影響はないと考えている:31.7%
また、スタートアップへの就職や起業に興味のある人とそうでない人とを比較した場合、スタートアップや起業に興味のある人のほうが、AIに対してポジティブな印象を持っていることがわかった。
キャリア検討で関心のあるキーワードについて調べたところ、起業を志す人も、スタートアップを志す人も「AI(人工知能)/ML(機械学習)」がそれぞれトップとなった。
<調査概要>
調査名称:起業に関するアンケート
調査機関:Freeasy
調査対象:東京と関西(大阪・京都)の大学生
調査方法:Webアンケート
調査日:2024年10月4日~2024年10月5日
有効回答数:300件
※各回答項目の割合(%)は、端数処理の関係上、合計が100%にならない場合がある。
出典:THE SEED調べ
構成/こじへい