昨今、ビジネスシーンでも意思決定や行動に与える影響が問題視される、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」。このバイアスは、自覚のないまま個人や組織に潜み、イノベーションの阻害要因や非効率の原因となり得るものである。特に昭和時代に形成された性別や役割に関する固定観念は、令和の社会においても根強く残り、個人の選択肢を狭める要因となっている。
婚活コンサルタントの松尾知恵氏は、3万人以上の婚活サポート経験から、相談者の多くが、こういった古い価値感の呪縛が、幸せな結婚の妨げになっているという結論に至った。そして、彼女の婚活ワークを通し、心を解放し結婚を成就させていくクライアントのトランスフォームを目の当たりにし、そのプロセスは、婚活以外のケースにも応用出来るのではないかとの気づきを得、そこから着想されたのが今回の新刊『あなたの生きづらさ“昭和な呪い”のせいでした』である。
“昭和な呪い”について、松尾氏に話を伺った。
“昭和な呪い”という名のアンコンシャスバイアス!?3万人の結婚迷い人を導いた婚活コンサルタントが指南する解呪術
3万人の婚活迷い人をサポートしてきた婚活コンサルタント松尾知枝氏の新刊、令和なマインドエクササイズ本『あなたの生きづらさ“昭和な呪い”のせいでした』が発売された...
あなたも気づかない「昭和の呪い」とは!?令和の価値観と逆行する〝アンコンシャス・バイアス〟の実態
昨今、よく見聞きするワード「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」とは、私たちが無意識に持っている価値観や偏見が、行動や判断に影響を与える現象である。特に「昭...
『あなたの生きづらさ “昭和な呪い” のせいでした
古い価値観から心を解放するマインドエクササイズ』
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婚活の背後に潜む“昭和な呪い”
より良いライフワークバランスの鍵は意識改革にあり
彼女は、古い価値観に囚われた状態を“昭和な呪い”と表現し、それが婚活を含む多くの意思決定に無意識に影響を与えていることを指摘。古い固定観念に気づき、それを解放するプロセスが婚活を成功に導く鍵であり、それは婚活シーンだけでなく、古い価値感にしばられ停滞する日本社会全体の変革にも寄与するのではないかという思いに至った。
彼女のコンサルティングでは、まず「昭和な呪い」に気づき、無意識の偏見を意識化するステップを重視している。
松尾氏は古いアンコンシャス・バイアス“昭和な呪い”として以下の七つに分類。
・集団の調和を最優先し、個人を抑圧する「空気を読めの呪い」
・性別に基づく役割を固定する「ジェンダーの呪い」
・過度な働き方を美徳とする「24時間戦えますか?の呪い」
・年齢によるステレオタイプ化を促進する「年齢の呪い」
・母親の家事過多を生む「ママなんだからの呪い」
・他者との優劣を競わせる「マウンティングの呪い」
・親子間で過干渉を生む「アットホームの呪い」
まずはこれらの“呪い”のフレーズに気づくことの大切さに言及する松尾氏。
今回は、この中の「ママなんだからの呪い」について伺ってみた。
ママなんだからの呪い
「母性神話が色濃く残る日本では、ママに向けられる期待値の高さは圧倒的! 核家族化、共働きなど、昔より子育てのハードルがどんどん上がっているのに、古き良き昭和の理想像がとまかり通っています。自分は全然母親らしいことができていない……と罪悪感にさいなまれる人が急増。
ここ数年、出生率は最低記録を更新し続け、少子化の深刻さに政府が支援策を打ち出すも、国民の反応は冷ややか。 仕事と家庭の両立だけでも「無理ゲー」なのに、手間と時間をかけることが家族への愛情になるとか、現実離れした期待値の高さが、「ママなんだから」の呪いとなっています」
「子どもを持ちながら働く女性が増えたものの、依然として昭和の頃に形成された専業主婦の理想像が残っていて、品数の多い料理やお弁当づくりなど家庭に求める期待値が高く、ママたちはいつもギリギリの中で仕事、家事、育児の綱渡りを強いられています。社会の状況がこれだけ変化しているのに、古い制度や価値観が残存される中、いざとなったら母親がなんとかしてくれるでしょ、という甘えが根強く残っていて、ママなんだからの呪いにつながっているのでしょう。
そういうママを見て「子育てって大変そう」「両立するのはもっと無理ゲー」と思い、育てられる自信がないと感じている独身者たちも少なくありません。結婚するかしないか、子どもを持つか持たないかは、もちろん個人の選択の自由に委ねられるべきですが、今子育てしているママたちが背負っている呪いを解かない限り、若い人たちは子どもを持つことに後ろ向きになるばかりでしょう」
「仕事と家庭、どっちも完璧にやらなくちゃ」
「共働き世帯が7割を超えてワーママはすっかりメジャーな存在になりましたが、ママなんだからの呪いは今でも根深くて、三重苦の申し訳なさを抱えていたりします。
(1) 専業主婦並みに家事ができないという家事の申し訳なさ
(2) 長く子どものそばにいてあげられない育児の申し訳なさ
(3) 育休や時短勤務など、仕事面で周りに迷惑をかける申し訳なさ
責任感の強い女性ほど、母親、仕事、妻という全ての役割に対して『ちゃんとやらなきゃ』『どれも抜かりなく完璧に!』と自分を追い込んでしまいがちです。
昔、業務委託の在宅秘書で小さな子どもを持つ女性に仕事を依頼したことがあったのですが、いつも夜中にメールが届くのでびっくりして尋ねたら、子どもの授乳や夜泣きで起きた時に事務作業を片付けるからだと話してくれました。
そこまでして頑張っても「働いて子どもがかわいそうに」なんて呪いの言葉を言われた日にはたまったものではありません……。これらは、おそらく日本にいまだ根強く残る「三歳児神話」から来るものではないでしょうか。子どもが三歳になるまでは母親は家にいて子育てしないと子どもの成長に悪影響があるというものです。しかし「三歳児神話」について合理的な根拠は認められないという見解もあります。
考:厚生労働省(1998年)「平成10年版厚生白書の概要 自立した個人の生き方を尊重し、お互いを支え合える家族」
○類似する呪いのフレーズ
「フルタイムで働いて、子どもがかわいそうに」
「お母さんが働いてる家庭は、子どもが荒れやすいって聞くよ」
「キャリアばかり追い求めて、家庭を犠牲にしてるんじゃない?」
「ママがお家にいてあげないと子どもが寂しがるわよ」
「育児よりキャリアを優先するのは子どもがかわいそう」
「一年は産休取るでしょ? 保育園早すぎると子どもがかわいそう」
「すぐ休むから迷惑!仕事巻き取るのしんどい」
「好きでやってるんでしょ? 嫌ならやめれば」
まずはこうした“呪い”のフレーズに気づいていくことが現状を変えていくきっかけになると語る松尾氏。
そして、さらに、呪いを解き、より良い自分らしい生き方を得るために、ジャーナリングという手法を使ったワークによる方法を紹介している。
気になるかたは是非、御一読いただけたら。
●著者プロフィール
松尾 知枝(まつおちえ)
婚活コンサルタント、株式会社インプレシャス 代表取締
10歳から8年間、児童養護施設で暮らす。 つらい幼少期を経て、 自身で考案したメンタルエクササイズにより呪いを解き、 目標達成する面白さに目覚める。 新卒で日本航空に入社。CAとして国内線、国際線に乗務。 2011年より自身の経験と心理学をベースにした婚活支援を行う。 自己肯定感を高め、心から望むライフデザインを描きたい女性から 大きな支持を受ける。情報番組出演や東京都の婚活支援事業、 ゼクシィ縁結びのコラムに監修として携わるなど、活躍の場を広げている。 著書に『3ヶ月でベストパートナーと結婚する方法』(かんき出版)、 『3年以内に成功する男、消える男』(フォレスト出版)、 『1日5分で夢が叶う 日記の魔法』(中経出版)
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構成/DIME編集部