【対談】コカ・コーラ ボトラーズジャパン荷堂真紀さん×コスタンティーニ東大特任講師
セカンドライフのデザインやワーク&ケアバランスなどをテーマに、東京大学未来ビジョン研究センターで産学連携のプロジェクト研究を進めるコスタンティーニ ヒロコさんが、仕事やプライベートを通して出会った魅力的な人をゲストに迎えトークを繰り広げるスペシャル対談。今輝いて見える理由、これまでのキャリアと来たる「セカンドステージ」をどのように見据え、デザインしていくのかを語り合います。
今回のゲストは、コカ·コーラ ボトラーズジャパン執行役員の荷堂真紀さん。東京ミッドタウンのオフィスにお邪魔しました。
左/荷堂真紀さん(コカ·コーラ ボトラーズジャパン執行役員 フードサービスカンパニー プレジデント 最高経営戦略責任者 兼 経営戦略本部長) 右/コスタンティーニ ヒロコさん(東京大学特任講師)
子持ち新卒でキャリアをスタート
コスタンティーニ ヒロコ(以下、コスタンティーニ)荷堂真紀さんは、コカ·コーラ ボトラーズジャパンの最高経営戦略責任者、日本屈指のビジネスリーダーとして活躍されていらっしゃいますが、ご出身は?
荷堂真紀(以下、荷堂)広島生まれ、広島育ちです。今でも何かに熱中すると、広島弁が出ちゃうんです。
コスタンティーニ 子どもの頃は、何になりたかったのですか?
荷堂 2歳半過ぎには、歯医者か医者になりたいと決めていたのを覚えています。それ以来、15~16年くらい「医者になるんだ」と思い込んで生きてきたのですが、香川大学に進学し、工学部で情報工学やコンピューターを学びました。
コスタンティーニ 短大に進む女性も多かった時代、工学部で学ぶ女性は少なかったのでは?
荷堂 そうですね。就職活動のときも「女性で、エンジニアで、コンピューターが出来る」ということで、自分で言うのも何ですが、引く手あまたでした(笑)。実際、既婚者でもOKでした。
コスタンティーニ 既婚者?
荷堂 私、学生結婚したので、大学を卒業してNEC(日本電気)に就職した時には既婚者でした。
コスタンティーニ あら! 私も大学院の時ですが、学生結婚です。
荷堂 子どもの頃から、自分は手に職つけて生きていくんだと考えていました。一方で、結婚して、子どもも育てたいと思っていました。
コスタンティーニ 卒業してすぐに、仕事と子育ての両立ですか! パワフルですね。
荷堂 欲張りなんですよ(笑) 子ども連れで出張していました。
コスタンティーニ 当時は、企業からも行政からも、子育て支援のサポートもシステムもあまりなかったですよね?
荷堂 全然、なかったですよ。産休の間は、会社にお金を払っていたくらいですから。
コスタンティーニ 個人が会社にお金を払う?
荷堂 当時は自己都合での休職扱いでしたから、会社が負担する社会保障費分のお金を払って在籍させてもらっていました。
コスタンティーニ 今じゃ、考えられないですね!
荷堂 働かないとお給料がもらえないうえに、社会保障費も払わなくてはならない状況が続くのは厳しいので、2か月ぐらいで仕事復帰しました。
コスタンティーニ 当時の女性は、短大に進学するか、それとも4年制大学に進学するか、就職したらしたで、結婚するかどうか、子どもを産んだ後も仕事を続けるかどうか……。常に選択を迫られている中、荷堂さんは見事に両立されたのですね。
荷堂 当時、行政機関の極秘システムを作っていて、出張する際、夫と空港で待ち合わせして、私が上の子を連れていくから、下の子たちをよろしくと言って頼んだこともあります。
コスタンティーニ 子どもたちの様子は?
荷堂 「お母ちゃん、ぼくたちを置いて、どこに行ってるの?」と聞かれたことがあります。でも、極秘の仕事ですから、どこで何をしているか言えませんでした。それで、堂々と子どもたちに説明ができる仕事をしようと思い、転職することにしました。
産後48時間で派遣先との顔合わせへ。出たとこ勝負の転職人生
コスタンティーニ 転職先は?
荷堂 スヌーピーの作者であるシュルツさんの代理店に転職しました。27~28歳の頃です。
コスタンティーニ どんな仕事をされたのですか?
荷堂 法務、マーケティング、社長補佐……いろいろな仕事をしました。キャラクターの権利関係や書類など、アメリカの弁護士さんとやりとりすることもありました。
コスタンティーニ 英語は得意だったのですか?
荷堂 いいえ、全然! 必死にビジネスで通用する英語を勉強しました。今の会社でも英語は必要ですが、あの頃、身につけておいてよかったと思います。
コスタンティーニ さらに転職されましたね。
荷堂 仕事は充実していたのですが、唯一の悩みは職場が自宅から遠いことでした。そのころ次男を妊娠したので、家に近い会社で働きたいと思い、派遣会社に登録しました。
コスタンティーニ 派遣会社に登録? それもユニークですね。
荷堂 次男を生んだとき、産院に持ち込んでいた携帯電話に、派遣会社から連絡がありました。「派遣先とお顔合わせに行かれますか?」と。
コスタンティーニ 入院中でしょう? 行かれたのですか?
荷堂 いいお話だし、派遣先ではエンジニアリングや英語など身に付けたスキルも活かせるなと思い、すぐに夫に「ベルトを貸して」と言いました。
コスタンティーニ ベルト?
荷堂 紺色のマタニティドレスを着て入院していたので、ベルトでウエストを絞めれば、面接にふさわしい服装に見えなくもないな……と(笑)。その姿で、タクシーに乗って面接を受けに行きました。
コスタンティーニ ダイナミックな展開ですね!
荷堂 面接が終わって、病院へ帰っているときに、派遣会社から「来週からどうですか?」と連絡がありました。それで、「実は、子どもを産んでまだ48時間しか経っていないので、来月の後半からお願いします」と答えました。
コスタンティーニ NECのコンピューターエンジニアからキャラクターの代理店、そして外資系ソフトウェア企業……。どの会社でも全く違う仕事をされていますが、新しいことに挑戦することに不安は?
荷堂 ドキドキはしますが、不安はあまり感じません。タイミングよく「こういう仕事をやってみませんか?」「やる気はありますか?」とお声がけいただけて、ありがたい運命だなあと思います。
コスタンティーニ 果たして「運命」だけでしょうか? 何がチャンスを呼び寄せていると思いますか?
荷堂 誰にでも、チャンスはあると思います。巡ってきたチャンスに無謀にチャレンジするかどうか、根拠のない自信をもってやってみるかと思うか……。私は、「大丈夫、何とかなる」という根拠のない自信はあると思います。
コスタンティーニ アメリカでは子どもに「自信を持ちなさい」とよく言いますよね。一方、日本では「控えめでいなさい」と教育される。自分に自信があるのは、もしかしてお母様がアメリカ型の教育をされたとか?
荷堂 いいえ、全然! 両親ともに生粋の九州人で、私は生粋の広島育ちです。どちらも生命力たくましい土地柄ですが、おそらくこの無謀な性格は、生まれ持ったものだと思います。
コスタンティーニ それこそ、天賦の才能なのかもしれませんね。