2024年もあと残すところ1か月となった。会計期間を4月から翌3月におく企業が多いため、9月までの中間実績を10月末から11月に公表するところが多い。中間まで来るとその進捗率からみて、通期の決算予想も確実性が高い。そして、その実績によっては年間の予想である通期予想が修正されることもある。
11月に出揃った各企業の2024年度中間決算から、2025年度の見通しを読み解いていく。
2024年度は各社好決算の結果に
2024年10月末から11月に公表された日本企業の中間決算、通期予想ともに好決算が多く、多くの企業が売上を伸ばし最高益や増益だった。
トヨタ自動車は認証不正による一時生産停止なり、2024年度の世界販売の通期見通しは1,085万台(当初見通し1,095万台)と、2023年度実績の1,109万台の2.7%減となった。
一方、過去最高益となるのが三菱重工業だ。受注高が2022年から2022年にかけて伸びていたが、2024年は更に増加した。特に、GTCC(※)、航空エンジン、製鉄機械が伸びている。海外において、中東の脱石油の動きや北米のデータセンター向けの安定電源需要による発電設備や冷却装置が伸び、今後は国家安全保障の取組による防衛関連事業の伸びが期待できそうだ。
※GTCCとは火力発電の発電設備。排熱を利用して発電することで効率よく発電できる。
国内においても、百貨店やスーパー、観光関連の売上が拡大している。三越伊勢丹ホールディングスでは、百貨店において訪日客含む消費者の消費意欲が強く、入店客数は拡大し、高額品から衣料品の幅広い商品は好調な売上となった。
イオンも、3年連続増収増益、過去最高益となった。ただ、国からの賃上げの要求、原価の値上がりの流れから、パートの賃金引上げにより正社員との格差をなくすこと、幅広い商品で値上げによって価格転嫁が広がるなかプライベートブランドで値上げ幅をできるだけ縮小してシェアを広げる戦略をとった。そのため、全体の35%を占める総合スーパーで増収だが、コスト増により営業赤字となり、他の金融やドラッグストア事業で補うという構造だった。
2025年3月期の懸念材料
前述したように、2024年度の決算は好調な企業が多く、このまま通期予想通り推移すると考えられる。しかしながら、2024年度末(2025年3月期)に向けて懸念事項は為替変動だ。
2024年は、年初から7月まで1ドル=141円から7月161円まで円安になったが、9月には140円まで円高になったものの、ここ5年で最も円安の水準であり、その円安を背景にして輸出企業は好決算となっている。
例えばトヨタの場合、為替レートの前提を前期1ドル141円から1ドル147円と6円円安においており、その為替変動による影響額は、営業利益2兆4,642億円で6,100億円と大きく、今のように1ドル=151円と147円より円安水準であればさらなる利益上振れも考えられるが、逆に147円より1円でも円高になると1,000億円単位で減益となる可能性がある。
日本では輸出企業が多いため、現在151.83円(11/28時点)であるが、多くの企業が想定する145円レベルを下回る円高となれば、減益となる企業が増えるだろう。
さて、2025年度はどうなる?
2025年度を占う、各企業の中間決算説明会での発言をみてみる。
トヨタ自動車の2025年3月期第2四半期決算説明会では、宮崎副社長は「(北米市場について)、米国自動車市場は(景気後退のような)景気変化をストレートに感じていない。(中国市場について、利益が大幅に減ったことについて)2024年度の中国事業は優秀な中国メーカーの利益水準とほぼ同じ。需要が供給を上回り価格競争が一段激化しても、それに巻き込まれないように中国事業に向き合い、中国で選ばれるメーカーになりたい。」と述べている。
他社を見ても、中国の自動車市場は競争が厳しくなっているものの、多くの企業が主力とする米国では変調が見られるようなサインはないようだ。
一方、好決算を出す企業が多いなか、社会的責任を述べる発言も多くみられた。第99期イオン株主総会では、岡田取締役は「パートタイマーの賃金引上げです。正社員との格差容認、不平等、国の最低賃金さえ上回ればよいとしてきたこれまでの責任は重大です。ここから得られた利益は不当であり、株主への利益還元は正当な利益でなければならない。」と述べている。また、「国の価格転嫁値上げ推奨の圧力を受け入れることを必ずしもよしとしない。」と述べた。
2025年においては、さらなる賃上げ、原材料高があってもできるだけ低価格で消費者に提供するという日本企業は多い。ただ、社会的責任を負うべき上場企業では避けられないことであろう。
また、ファーストリテイリングの柳井社長も2024年8月期通期決算説明会で「世界中の個人がスマートフォンを手に自らダイレクトに情報を発信受信する時代になりました。(中略)個人も企業も『社会性』が問われています。売り手の都合、企業の都合、国家の都合などといった、自分の理屈を押し付けようとしても、もはや通じません。『社会の役に立つ企業』であることが、ますます重要になってきます。」と企業の社会的責任の重要性について述べていた。
各社の決算の中間発表をみていくと、2025年度においても2024年度のような好業績が続き、さらなる増収増益となる企業も出そうだ。また、賃金上昇や原材料高は現状のような利益水準であれば十分吸収できる水準だろう。ただし、米国の経済状況により、為替が一時的ではなく大きく円高となれば、賃金上昇や原材料高のコストは重くのしかかり、2025年度の決算が2024年度と様変わりする可能性もある。
9月期の米雇用統計は予想を上回る好結果に、株高が持続するかどうかの見極めには国内企業の中間決算に注目
アメリカの景気状況を示す重要な指標の一つである雇用統計。これはアメリカ労働省が国内の雇用情勢を調査した経済指標のことで、毎月第1金曜日に発表される。 内容は小売...
(参考)
株主総会 | 株式・債券情報 | 株主・投資家の皆さま | イオン株式会社
2025年3月期 第2四半期決算説明会 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
決算説明会 | FAST RETAILING CO., LTD.
文/大堀貴子