
よく耳にする「ベストプラクティス」の意味を知っているだろうか。ビジネスシーンや専門領域でニュアンスが異なる言葉の正しい使い方を解説する。
目次
ベストプラクティスとは、現時点で考えられる最善の方法を指す。業界におけるベストプラクティスを実践することにより、ゼロから自社で方法を考える労力を抑えられる。
ビジネスの場で「ベストプラクティス」という言葉はよく使われるが、業界によってどのような意味合いで使われているのか異なる。IT業界や医療業界では一般企業とは異なるニュアンスで使われるため、注意しよう。
今回は、ベストプラクティスの一般的な意味や業界ごとの使われ方を解説する。
ベストプラクティスの一般的な意味と使い方
まずは、ベストプラクティスの一般的な意味と使い方から確認しよう。業界や職種に関係なくベストプラクティスという言葉を使う場面があるため、どのような意味があり、どのような場面で使うのか知っておくとよい。
■一般企業・ビジネスシーンにおけるベストプラクティスの意味
一般企業や一般的なビジネスシーンにおけるベストプラクティスとは、特定の課題や目標に対して、最も効果的・効率的な手法や実践例のことを指す。現時点における「最も優れたやり方」「成功事例」「模範的な取り組み」といったニュアンスもある。
ベストプラクティスは、すでに効果が実証されており、どの企業でも取り入れやすい特徴がある。ゼロからやり方や方法を考える必要がなく、データの裏付けがある以上、従業員からの理解も得やすいだろう。
導入できるリソースさえあれば、どの企業でも再現可能性があるといえる。手順やプロセスが明確で、最小限のコストで最大の効果が期待できるだろう。
■一般企業・ビジネスシーンにおけるベストプラクティスの使い方
ベストプラクティスは、業務改善や組織管理の方法を模索する際に使われることがある。業務改善においては、生産性向上を目指したりコスト削減の効果的な方法を実践したりする際に、ベストプラクティスを導入する場面が考えられるだろう。
組織管理においては、残業時間を抑制するための取り組みや人材育成を行う際に、ベストプラクティスを導入する場面が考えられる。たとえば、厚生労働省では働き方改革に積極的に取り組んでいる企業を「ベストプラクティス企業」として認定しており、一つの模範として参考になるはずだ。
ベストプラクティスを導入する際には、 業界や企業規模による違いを踏まえたうえで、自社にあった方法に調整する必要がある。行政機関から認定されている企業の取り組みを真似するだけでは不十分だ。
また、時代変化に合わせて定期的な見直しが必要となるため、一度導入して終わりというわけではない。
※出典:厚生労働省「ベストプラクティス集(中小企業における両立支援推進のためのアイディア集))」
ベストプラクティスのIT・技術分野の意味と使い方
IT・技術分野において、ベストプラクティスの意味は一般企業とは異なる面がある。業界の性質上、技術的・セキュリティ的な観点から、ベストプラクティスが定義される点を押さえておこう。
■ベストプラクティスのIT・技術分野の意味
IT・技術分野でのベストプラクティスとは、特定の技術課題に対する最も効果的で、信頼性の高い解決方法や実装方法を指す。
具体的には、複数のプロジェクトで実証済みで、エラーやバグが少なくパフォーマンスが最適化されている方法をベストプラクティスと呼ぶ。技術的信頼性が高いだけでなく、業界標準のセキュリティ要件を満たしている必要がある。
ベストプラクティスを導入することで、バグの減少やシステムの安定性の向上、セキュリティの強化といった効果が期待できる。すでに効果が実証されているため、開発速度を向上させ、メンテナンスコストを削減できるメリットも得られるだろう。
ただし、ベストプラクティスを導入したあとも継続的なモニタリングを通じてパフォーマンスを測定したり、エラー率を監視したりする必要がある。また、プロジェクトの特性や要件に応じて適切にカスタマイズする必要がある点に留意しよう。
■ベストプラクティスのIT・技術分野の使い方
IT・技術分野における「ベストプラクティス」の具体的な活用場面を、事例で見ていこう。たとえば、ITインフラ運用の現場では作業の自動化やクラウドの活用が挙げられる。これにより、作業ミスの削減やコスト削減、スケーラビリティの向上が期待できるだろう。
情報セキュリティを高めたい場合は、自社のセキュリティレベルを評価したうえで、業界のベストプラクティスを参考にするとよいだろう。機密性や可用性で問題があれば、他社の業界全体のベストプラクティスを導入すべきだ。
ほかにも、クラウドサービスやIT資産管理など、さまざまな技術分野においてベストプラクティスが有用な存在となる。技術の発展に伴ってベストプラクティスは変わるため、最新情報をキャッチすることも欠かせない。
ベストプラクティスの医療分野における意味と使い方
医療分野における「ベストプラクティス」も、一般的な使い方とはニュアンスが異なる。医療業界という性質上、治療の効果と安全性が担保されている方法が、一般的にベストプラクティスとして評価されている。
■ベストプラクティスの医療分野における意味
医療分野におけるベストプラクティスとは、科学的根拠(エビデンス)に基づいて最も効果的で安全性が確認された医療行為や治療方法を指す。医療業界では健康に与える影響が大きいため、科学的根拠に基づいている必要があるのだ。
科学的根拠とは、臨床研究による実証や統計的な有効性、複数の医療機関での検証などが挙げられる。患者が安心して医療を受けるうえでも、科学的根拠があるベストプラクティスは有力な選択肢となるだろう。
また、安全性が確保されていなければベストプラクティスとはいえない。副作用を把握し、緊急時の対応手順まで明確でなければ、医療を提供する側も受ける側も安心できないだろう。
実際にベストプラクティスを導入する際には、スタッフの技能レベル向上や設備・機器の整備が必要になることもある。実践できる環境と技量がなければ、ベストプラクティスといえども用を成さない。
なお、医療のベストプラクティスは医学の発展に合わせて更新する必要がある。また、地域や医療機関の特性に応じて柔軟に適用しなければならない。
■ベストプラクティスの医療分野における使い方
医療分野におけるベストプラクティスの具体的な活用場面と事例について解説する。たとえば、新型コロナウイルスのような感染予防対策での活用例として、以下のようなベストプラクティスが考えられるだろう。
- 手指衛生
- 個人防護具(PPE)の使用
- 適切な廃棄
ほかにも、服薬管理においては以下のような活用例が考えられるだろう。
- 与薬準備時薬剤名・用量・服薬時間を確認する
- 与薬時には患者氏名・薬剤・投与経路を確認する
- 与薬後は服用と副作用の有無を確認する
あくまでも一例で、ほかにもさまざまな場面で効率性と安全性を両立できるベストプラクティスがある。
ベストプラクティスを導入することにより、合併症の減少や患者満足度の向上をはじめとした医療の質向上が期待できる。医療機関側としても、安全性を確保し医療事故を未然に防ぐことで、訴訟リスクを低減できるだろう。
まとめ
ビジネスマンであれば、自分が働いている業界のベストプラクティスは随時情報を集めるとよいだろう。現時点における最善の方法を意味するため、業務の効率化を進めるうえでも有用だ。
ただし、ベストプラクティスは業界ごとの特性を踏まえる必要があり、企業ごとのリソースによっても左右される。また、時代の変化によってベストプラクティスは異なるため、最新情報を追いかけることも欠かせない。
文/柴田 充輝(しばた みつき)
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。