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新卒者の採用活動が一服すると、10月以降に企業による内定式が行われることがある。内定式では、取締役から企業理念を聞いたり、先輩社員とコミュニケーションを取ったりするのが一般的な流れだ。
4月の入社に向けて重要なプロセスとなるため、内定式でどのように振る舞えばよいのか、どのような流れで進んでいくのか知っておくとよいだろう。
内定式の主な内容とは
内定式とは、新卒者の採用が決まったあと、企業理解の深化や懇親を目的に行われる式典だ。
まずは、内定式に関する基本的な情報から見ていこう。
■内定式とは
内定式とは、企業が内定者(新卒採用予定者)を一堂に集めて行う式典だ。新卒者に企業の理解を深めてもらう目的だけでなく、既存の従業員と新卒者の懇親を主な目的として行われる。
式典では、代表取締役が登壇して企業理念や経営方針について話すこともある。求められる人物像について触れることもあり、企業への帰属意識を醸成する目的もあるといえるだろう。
■内定式を行う時期
多くの場合、内定式は10月に開催される。日本経済団体連合会(経団連)の「採用選考に関する指針」では、正式な内定日を卒業・修了年度の10月1日以降とするよう定められているため、基本的には10月1日以降となる。
採用スケジュールの関係で、年末年始に開催する企業もあるため、企業ごとに異なる点を押さえておこう。10月1日より前に行われる式典は「内々定式」と呼ばれ、正式な内定式とは異なる。
また、中小企業の中には内定式を開催しない企業もあるため、必ずすべての企業で内定式が行われるとは限らない。
新型コロナウイルスの影響で内定式を行わない企業も多かったが、脱コロナが進んだ影響もあり、内定式の実施を再開する企業が増えている。
※出典:一般社団法人日本経済団体連合会「2025(令和7)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」
■内定式の大まかな流れ
企業ごとにプログラムは異なるが、内定式の一般的な流れは以下のとおりだ。
- 受付・集合
- 開式
- 取締役の挨拶
- 取締役からの祝辞
- 企業紹介・経営方針説明
- 入社までのスケジュール説明
- 各種手続きの案内
- 配属に関する説明
- 内定者研修の案内
- 先輩社員との懇談
- 内定者同士の交流
- 閉式の辞
全体の所要時間は、おおむね3〜4時間程度になるだろう。また、内定式後に2次会として、より打ち解けた雰囲気での懇親会を実施する企業もある。
■内定式では何をする?
内定式は、取締役が挨拶したり入社までのスケジュールを確認したり、内定者の入社意欲を向上する目的で行われる。また、社会人経験がない新卒者の緊張をほぐし、安心して入社できるようにする目的も含んでいる。
新卒者からすると、「取締役はどんな人なのか」「先輩社員はどんな人なのか」は気になる問題だ。取締役や先輩社員とのコミュニケーションを通じて、企業の雰囲気や働く意義を理解できるだろう。
さらに、新卒者同士で親交を深めることにより、一体感を醸成できる。入社後のスムーズな人間関係構築に役立ち、モチベーションを向上させるうえで内定式は労使の双方に役立っている。
【内定者向け】内定式の注意点
内定式に出席するにあたって、どのような準備をすればよいのか、どのように振る舞えばよいのか判断に迷っている内定者もいるだろう。
以下で、内定者が内定式に参加する際の注意点を解説する。
■内定式に参加する際の注意点
内定式では、スーツを着用するのが一般的だ。企業によってはオフィスカジュアルを推奨しているところもあるが、スーツが無難な選択肢といえる。
髪型や髪の毛に関しても清潔感のある身だしなみを意識し、同期となる他の内定者や先輩社員に対して悪い印象を与えないように気をつけよう。
内定式に遅刻すると印象が悪くなってしまうため、時間厳守だ。集合時間の15~20分前には到着しておき、ゆとりをもって行動しよう。
なお、取締役の話や入社に向けたスケジュールの説明を受けている際には、必要に応じてメモを取って差し支えない。
先輩社員とコミュニケーションを取るときは、元気よくはっきりと話すことを意識するとよいだろう。明るい印象を与えられれば、入社後の人間関係の構築がスムーズに進む可能性がある。
他の内定者と話すときは友好的な態度で接し、積極的にさまざまな人と交流するとよいだろう。式典中は他の内定者との関わり方も見られている可能性があるため、誰と話すときでも一般的な礼節をわきまえることが大切だ。
■内定式の髪型と服装
内定式にふさわしい身だしなみについて、髪型と服装を具体的に解説する。
【髪型】
男性 |
清潔感のある短髪 前髪は目にかからない長さが望ましい 黒髪か自然な茶髪 整髪料は控えめにする |
女性 |
長い場合は後ろで一つにまとめる 前髪は目にかからない長さに 派手な髪色は避ける アクセサリーは控えめにする |
【服装】
男性 |
ダークスーツ(紺・グレー・黒) 白のワイシャツ 無地かストライプのネクタイ(派手でないもの) 黒の革靴 黒か紺の靴下 |
女性 |
パンツスーツまたはスカートスーツ(紺・グレー・黒) 白のブラウス スカートの場合は膝丈 黒のパンプス ストッキング(肌色) |
当日の持ち物としては、ビジネスバックに筆記用具やメモを取るノートなどを入れておけばよい。招待状や当日に提出する書類がある場合は、忘れずに用意しよう。
内定式後のお礼メールの書き方
内定式後に企業へお礼のメールを送ると、丁寧な印象を与えられる。以下で、お礼メールを書くときの注意点や具体的な例文を紹介する。
■内定式後のお礼メールの書き方の注意点
内定式後のお礼メールは、内定式が行われた翌日までに送るとよい。「どのような話を聞いたのか」「誰と何を話したのか」などの記憶が残っているうちに、文面を作成できるからだ。
宛先については、人事部の担当者宛てで問題ない。件名は「内定式出席のお礼」「○月○日 内定式参加のお礼」など、シンプルなものでよいだろう。
メールの本文には、内定式に招いていただいたことに対する感謝や、印象に残っている話などを含めて書くとよいだろう。最後に、4月の入社に向けて自己研鑽に励む旨を記載すれば、好印象を与えられる。
入社後はテキストコミュニケーションを取る場面が多いため、お礼のメールを作成するときも「読みやすい文章」「相手を不快にしない文章」を意識するとよいだろう。
■内定式後のお礼メールの記載例
内定式後のお礼メールは、ビジネスマナーをわきまえたうえで書く必要がある。以下で、文例を紹介するので参考にしてみてほしい。
○○株式会社 人事部 ○○様 お世話になっております。 内定者の○○大学○○学部の○○○○です。 本日は盛大な内定式を開催していただき、誠にありがとうございました。 社長様からのご講話では、御社の目指す未来像について理解を深めることができ、入社後の目標がより明確になりました。 また、先輩社員の皆様との懇談を通じて具体的な業務内容についても理解が深まり、より一層入社への期待が高まりました。 4月の入社に向けて、残りの学生生活では語学力の向上と業界知識の習得に励んでまいります。 今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○○大学○○学部 ○年○○ ○○ |
以上のように、完結でわかりやすく、入社へのモチベーションを伝えられるような文面で作成するとよいだろう。
まとめ
内定式は、取締役をはじめとした経営陣の話を聞き、先輩社員とのコミュニケーションを通じて企業の理解を深められる有用な場だ。また、同期となる内定者とも親睦を深められ、入社後の人間関係の構築をスムーズに進められる役割を果たす。
内定式は、一般的なビジネスマナーをわきまえるだけでなく、自発的に企業の文化や理念を深めることを意識しよう。内定式後には担当者にお礼メールを送り、感謝と入社に向けたモチベーションを伝えよう。
文/柴田 充輝(しばた みつき)
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。