学級委員、アルバイトリーダー、管理職、総理大臣、大統領など、世の中にはたくさんの「リーダー」と呼ばれる人達がいる。では、理想的なリーダーとはどのような人なのだろう。
リクルートマネジメントソリューションズは、従業員規模が50名以上の会社に勤める25歳~59歳の正社員7,405名に対し、「働く人のリーダーシップ調査2024」を実施し、その分析結果の第1回を公開した。
今回の調査は、同社の管理者適性検査「NMAT」のフレームを用いた簡易版診断として、「自分自身」「理想のリーダー」「直属の上司」のそれぞれについて、AとBのどちらにあてはまるかを以下3点の質問でたずね、リーダーシップタイプを分類した。
1.組織内における集団との関わり方は、「A.周囲と協力し合う」「B.自分が引っ張る」
2.課題に対して取り組む姿勢は、「A.改善・維持」「B.変革・拡張」
3.迷った際の判断のよりどころは、「A.周囲の気持ち・心情」「B.ロジック・理性」
理想の上司は「調和型リーダー」!年代が上がるにつれ理性で判断するリーダーが求められる傾向
図3は、図表1・2のフレームを用いた理想の上司のタイプ別の結果だ。調整×維持×心情という性質を持つ「調和型リーダー」が29.8%と最多。次いで多かったのは調整×維持×理性という性質を持つ「安定型リーダー」で26.7%。
周囲と協力し合い、大きな変革を起こすよりは現状を維持しつつ、適宜改善に取り組んでいく上司像を理想とする人が多いことがわかる。
年代別の回答では大まかな傾向に違いはあまり見られなかったが、年代が上がるにつれて「安定型リーダー(調整×維持×理性)」、「民主型リーダー(調整×変革×理性)」を理想的とする人の割合が上がっている。
心情よりも理性を判断のよりどころとしてほしい人が、20代と比べて50代は多いという結果が出た。
人生において働いている期間が長くなるほど、上司のさまざまな判断に直面するだろう。そのなかで、以前の判断との間に齟齬を感じる場面では、心情ではなく理性で判断したほうが納得できると感じるようになるのかもしれない。
続いて、直属の上司のリーダーシップタイプについて回答してもらったところ、「調和型リーダー(調整×維持×心情)」が最も多く、次いで「安定型リーダー(調整×維持×理性)」となり、「理想の上司」と同様の結果に。
ただし、3番目に多かったのは「開拓型リーダー(統率×変革×理性)」となり、前の質問の「民主型リーダー(調整×変革×理性)」とは違いがあった。
一番多い「調和型リーダー」と正反対の性質を持つ「開拓型リーダー(統率×変革×理性)」が、実際の直属上司においては3番目に多いというのは、組織というものの面白さを感じさせる結果ではないだろうか。
上司のリーダーシップタイプによって部下からの信頼感や昇進意欲に違い
まずは、「上司は、私の幸福を気にかけてくれる」「上司は、仕事についての知識が豊富である」など15項目の平均値(6点満点)で、上司のリーダーシップタイプによって部下からの信頼感がどのように異なるかを確認した。
部下である回答者からは、「民主型リーダー(調整×変革×理性)」が最も信頼感を持たれていることが判明。
時に強権的に見えかねない「統率」と比較し、穏健派な印象の「調整」の上司に信頼感を抱く部下が多いようだ。
<図6> 上司のリーダーシップタイプ別 回答者の上司への信頼感の得点
次に、「組織で評価され昇進したい」「将来は他の人々を指導し、管理職として仕事をしたい」など9項目の平均値(6点満点)で、部下の昇進意欲が高い上司のリーダーシップタイプを確認した。
「共創型リーダー(調整×変革×心情)」を上司に持つ回答者は、他のタイプと比較すると昇進意欲がやや高い傾向にあった。次いで「情熱型リーダー(統率×変革×心情)」であり、「変革×心情」の特徴が共通している。
上司が積極的に変革に取り組みながらも、心情を拠り所に判断している姿を見たメンバーは、リーダーという立場の面白さや親近感を感じやすく、昇進意欲が高まるのかもしれない。
そのため、たとえば次世代リーダーとして育成したい若手社員は「共創型リーダー(調整×変革×心情)」や「情熱型リーダー(統率×変革×心情)」のもとに配属すると有効である可能性がある。
<図7> 上司のリーダーシップタイプ別 回答者の昇進意欲の得点
求められるリーダーシップタイプ、事業環境が安定している組織は「調和型リーダー」、変動している組織は「民主型リーダー」や「共創型リーダー」が多い傾向
「所属している会社の外部環境の状況として、あてはまるものをひとつ選んでください。」という設問において、「市場の競争状態が激しい」「市場の環境変化の速度が速い」「市場の成長率が高い」に対する回答の平均値によって「事業環境変化群」「事業環境安定群」に分け、現在の上司のリーダーシップタイプの違いを確認した。
維持の性質を持つ「調和型リーダー(調整×維持×心情)」などの4タイプは「事業環境安定群」の出現率が高く、変革の性質を持つ「共創型リーダー(調整×変革×心情)」などの4タイプは「事業環境変化群」の出現率が高い傾向にあった。
このことから、事業環境によってリーダー(上司)に任命される人のリーダーシップタイプは異なると言えるだろう。
現在昇進できないと悩んでいる人であっても、異なる部署や会社では必要とされるリーダーシップを持っているとも捉えられる。
また、管理職の育成に課題を感じている企業等にとっても、事業によって、リーダーシップを発揮しやすいタイプが異なることに鑑みれば、候補者に広がりが出てくるかもしれない。
調査概要
関連情報
https://www.recruit-ms.co.jp/
構成/Ara