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「103万円の壁」引き上げに対して企業の約7割が賛成

2024.12.01

衆議院選挙で議席を伸ばした国民民主党は、手取りを増やす政策を訴え、なかでも年収「103万円の壁」を178万円に引き上げる案に、強い意欲を見せている。人手不足が深刻化するなか、年収の壁が引き上げられれば、パートタイマーなどの働き方が変わり働き控えの解消につながるほか、減税効果による実質賃金の増加なども期待でき、注目されている。

そこで帝国データバンクは、103万円の壁の引き上げについて企業にアンケートを行ない、その調査結果を公表した。なお、アンケート期間は2024年11月8日~12日、有効回答企業数は1,691社(インターネット調査)となる。

「賛成」と「撤廃すべき」を合わせた約9割の企業が103万円の壁について見直しを求めていることが判明

■調査結果

日本の社会全体にとって「103万円の壁」引き上げをどう考えるか尋ねたところ、引き上げに「賛成」が67.8%、「反対」は3.9%だった。他方、103万円の壁自体を「撤廃すべき」は21.9%だった。これにより、「賛成」と「撤廃すべき」を合わせた約9割の企業が103万円の壁について見直しを求めていることがわかる。

企業からは「103万円の壁を意識するパートの方が多く、引き上げれば働き控えが解消される」(飲食店)、「最低賃金の引き上げが加速するなか、制度の見直しは避けられない」(運輸・倉庫)、「減税効果により消費活動が活発化する」(不動産)と、働き控えの解消に一定の効果を果たすと考えるほか、減税効果によって手取り収入が増えることに期待する企業が多かった。

一方で、引き上げには賛成ながらも、「社会保険料の106万円・130万円の壁もあるので、所得税のみの見直しでは働き控えはそれほど変わらない」(情報サービス)と社会保険料も含めた制度見直しの必要性や、財源をどう確保するかについての声も聞かれた。

また、「撤廃すべき」と回答した企業からは「働いても税金を払うことが損になるとの世間の風潮を感じる。103万円の壁は制度が古く、撤廃し、働いたら金額に関わらず応分の税を徴収する文化が最も公平」(情報サービス)と、複雑な現行の制度刷新や公平性を求める声も聞かれた。

・企業からのコメント

<「103万円の壁」引き上げに賛成>

専門サービス:最低賃金の増加に対し「年収の壁」がともなっておらず、労働時間をセーブして働く短時間労働者がおり、賃金が増加しても年収が増えない。「年収の壁」が労働時間を抑制させ、人手不足も促進させている一面がある。

放送:パート・アルバイトの応募状況が厳しいなかで、「年収の壁」引き上げで現状の人員でも回転させることが可能となり、人手不足の問題が軽減されるのではないかと考える。

飲食店:年々、最低賃金が上がる現状で、働ける年間時間が減ってきている。飲食業は、ほぼ9割をパートやアルバイトで運営しており、働ける時間に制限がかかると売り上げに影響するため、103万円の引き上げは賛成。

飲食料品小売:壁の引き上げと最低賃金の上昇はどちらもやらないと、このままでは賃上げをしても労働時間が減るだけになる。

繊維・繊維製品・服飾品製造:税制だけでなく社会保険料とセットで議論すべき。年金の3号保険制度そのものを廃止しなければ、103万円の壁だけ撤廃しても意味がない。課税基準を178万円に引き上げても130万円の壁がある限り、働き控えは依然残る。

<撤廃>

紙類・文具・書籍卸売:夫の扶養になる範囲で働くパート従業員がいるため、労働時間が限られ、少ない人材での会社運営に苦慮している点の改善が見込まれる。一方で、社会保険料の負担増が発生するため、一概に賛成できない。

精密機械、医療機械・器具製造:収入の壁や労働時間の壁はない方が有難い。実際に忙しいのに、優秀な女性が12月に勤務を控えたり、賞与を辞退したりするケースなどが起きている。

その他製造:扶養と控除の仕組みが税金の計算を複雑にしている。扶養をなくしシンプルにみんな働いた分だけ累進課税で納税して、家族がいる場合は状況に応じて給付する方が分かりやすい。

<反対>

建設:壁の引き上げによって財源不足となり、増税となるのではないか。

関連情報
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241114-1-03mwall/

構成/立原尚子

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