幅が狭く奥行が深い独特の形状
『匠ブランジェトースター』は幅が狭く奥行が深い。おおよそのサイズは幅250×奥行371×高さ253(mm)。同時に焼ける食パンは2枚で、焼く時は前後に並べて焼く。取り出しやすくなるよう、扉を開けると焼き網が前方に大きくせり出す。
扉を開けたところ。焼き網が前方に大きくせり出すので、奥の食パンも簡単に取り出すことができる
本体はパンを焼く窯からヒントを得て設計したもの。熱を逃がさず閉じ込められることから安定した火力コントロールが可能になり、おいしいパンを焼く温度バランスを実現する。
しかし、最初から現在のようなものを考えていたわけではなかった。当初は一般的な背の低いオーブントースターと変わらないが扉の開き方がガスコンロの魚焼きグリルのように前後にスライドするものを考えたこともあった。
現在の本体を考える上で意識したのが、『全自動コーヒーメーカー』の隣に置けること。着目したのが奥行方向のデッドスペースだった。限られたスペースにコーヒーメーカーと一緒に置けるよう、奥行を深くする代わりに幅を狭くした。これにより扉が小さくなることから、熱効率を高めやすくなった。
試食会で匠の味を伝える
初の高級トースターということもあり、当初の販売計画は頑張っても年間8000台から1万台と控えめ。しかし、発売と同時にテレビなどメディアで取り上げられて認知が急拡大。年間販売見込みをあっという間に達成した。
いっぽう、商品の魅力やパンのおいしさを伝えたのは店頭での実演や試食会であった。同社本社がある新潟をはじめ関東や関西で精力的に実施。『全自動コーヒーメーカー』とともに実演し、コーヒーと一緒に焼きたてのパンを試食してもらうことにした。
「営業が頑張り、おいしさを実感できる場を数多くつくってくれました」と岡田氏。試食会では主に、スーパーやコンビニで売られている袋入りのカレーパンをリベイクしたものを提供しているが、「こんなにおいしいの?」「どこかで買ってきたやつじゃないの?」と味を高く評価する満足の声が多く聞かれた。
満足している様子は、同社公式オンラインストアでの購入者を対象に実施している「30日間おためしサービス」の結果にも反映されている。購入するも満足できなかった場合、出荷から30日以内に申し出れば購入金額から事務手数料を差し引いた金額を返金しているが、返金申し出率は購入者全体の1%を切っている。
また、ホワイトを要望する声が多かったことを受け、2024年11月に新色として追加した。
2024年11月に追加された新色のホワイト。『全自動コーヒーメーカー』でも2024年10月にホワイトが追加されている
取材からわかった『匠ブランジェトースター』のヒット要因3
1.コンセプトが受け入れられた
各社の高級トースターはおいしいトーストをつくることに重きを置いた感がある。そこで食パンをおいしく焼くことのほか、食パン以外のパンをおいしくリベイクすることや冷凍パンをおいしく焼くことも目指した。このコンセプトが他の高級トースターとの差別化ポイントとなり、生活者が高く評価した。
2.匠の味を身近にした
監修した浅井一浩氏が焼いたパンは浅井氏が経営するトモニパンでしか買えなかったが、どこで買ったパンでも浅井氏が焼いたかのように仕上げてくれる。匠の味を身近なものにしたといってもいい。
3.妥協なきつくり込み
世界一のパン職人である浅井氏の暗黙知を形式知に変換して火力調整プログラムに反映。途中でヒーターの仕様を変えるなどしながら、匠の理想の仕上がりを忠実に再現することにこだわった。その結果が試食会の声に反映されている。
匠の技を家庭で活用できるので、パン屋で買ったパンを焼いたりリベイクしたりして食べるのが楽しくなる。全自動で焼ける新たなモード追加など今後期待したいこともあるが、『匠ブランジェトースター』はおいしいパンのあるちょっと豊かな生活を実現してくれる魔法のアイテムのようだ。
製品情報
https://www.twinbird.jp/lp/toaster/
文/大沢裕司
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