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【ヒット商品開発秘話】想定以上の大ヒット!世界一のパン職人の味を再現するツインバード「匠ブランジェトースター」

2024.12.01

■連載/ヒット商品開発秘話

「匠」と呼ばれるほどの腕を持つ超一流のパン職人が焼き上げたパンは、想像しただけで、食欲がそそられる。そんなパンを家で簡単に再現できるのが、ツインバードの『匠ブランジェトースター』である。価格が2万5800円(同社公式オンラインストア)と高価ながら想定以上に売れており、2023年11月の発売からこれまでに2万台以上を売り上げている。

開発に3年近くの時間を要した『匠ブランジェトースター』は、パン職人の世界大会『iba cup』で2015年に総合優勝した世界一のパン職人、浅井一浩氏(トモニパン)が監修。浅井氏の暗黙知を元に組まれた火力調整プログラムを搭載し、パンの種類(食パン、クロワッサン、フランスパン、カレーパン)と状態(常温/冷凍)に応じ全自動でおいしく焼き上げる。

2023年11月に発売された『匠ブランジェトースター』。世界一のパン職人、浅井一浩氏が持つ匠の技で家庭でもおいくパンを焼くことができる。価格は2万5800円(同社公式オンラインストア)

開発に協力した世界一のパン職人の想い

2万円を超える高級トースターが注目を集める中、これまで中低価格帯のトースターを手がけてきた同社は、慣れない高価格帯ということもありなかなか企画・開発に着手できないでいた。そのよう状況下で開発本部企画デザイン部 部長代理の岡田剛氏は、既存の高級トースターを見て次のようなことを感じていた。

「高級トースターはおいしいトーストをつくるための特徴を備えている印象を持ちましたが、パンは食パンだけではありません。いろんなパンに合った最適な焼き方ができるトースターは、意外にもあるようでなかったです」

ツインバード
開発本部企画デザイン部
部長代理
岡田剛氏

パンの好みは人それぞれ。そこで、食パンをおいしく焼くことのほか、食パン以外のパンのリベイク、サブスクリプションサービスなどにより定着してきた冷凍パンがうまく焼ける高級トースターを志向するようになった。

後発ではあったが、2018年10月に発売した『全自動コーヒーメーカー』の成功が開発を後押しした。『全自動コーヒーメーカー』は3杯用と6杯用があり、価格が同社公式オンラインストアで3万8500円(3杯用)/4万8888円(6杯用)と高価だが、累計販売台数が約13万台を超える。コーヒー界で「レジェンド」と称される、カフェ・バッハ(東京都台東区)の田口護氏が監修し、田口氏が持つ匠の技を再現することにこだわって開発されたものだ。

左が2018年10月に発売された『全自動コーヒーメーカー』。コーヒー界のレジェンド、田口護氏が持つ匠の技を忠実に再現した。匠の技の忠実な再現は『匠ブランジェトースター』に受け継がれた

浅井氏に初めてコンタクトを取ったのは2020年7月。千葉県成田市で浅井氏が営んでいるトモニパンに、自社のオーブントースター3機種とともに出向いた。浅井氏は最初、トースター開発の監修に半信半疑だったが、同社と想いが合致したこともあり開発に関わってくれることになった。岡田氏は次のように話す。

「浅井氏が焼いたパンは種類ごとに食べてほしいベストコンディションが決まっていますが、SNS にアップされた各家庭で焼かれたトモニパンの写真を見ると、正しい状態で食べられていないそうです。そのことに浅井氏はもどかしさを感じており、家でもベストな状態で食べてもらいたいという願いがあることも知りました。われわれは、浅井氏が焼いたものをはじめとしたパンをおいしく食べることができるトースターをつくりたかったので、パンを最高の状態で食べてほしいという想いは両者で合致していることが確認できました」

匠の暗黙知を形式知化

浅井氏を交えて実際の開発が始まったのは初コンタクトから約1年後。実現したいことがある程度まで実現できる試作機とともに再訪問した。

開発を進めるに当たり不可欠だったのが、浅井氏の暗黙知を形式知に変換することだった。「クロワッサンは何℃で焼けばいいのかといった数値情報がいっさいありませんでした。窯の温度を測るなどして浅井氏の暗黙知をわれわれが形式知に変換してからトースターの仕様に落とし込む必要がありました」と振り返る岡田氏。パンの種類ごとに窯の温度測定を行なったり、試作機で焼いてパンの食味評価を重ねたりすることになった。

本体正面左のモードダイヤル。左からアレンジトースト、トースト、クロワッサン、フランスパン、カレーパン、マニュアル。マニュアル以外は選択したら本体正面右のセレクトダイヤルで冷凍のON/OFFを選択・決定した後にスタートボタン(本体正面右)を押せば全自動で焼き上げてくれる(アレンジトーストとトーストは冷凍のON/OFFを選択・決定する前に枚数と焼き色を選択)。マニュアルモードを選択すれば、餅を焼いたりフライの温め直しができたりする

形式知に変換された浅井氏の暗黙知を元に開発された火力調整プログラムは、パンを含む庫内温度のセンシング結果と連動。センシングは秒単位で実施され、その結果を元にヒーターのON/OFFを頻繁に繰り返すことで温度を制御している。

従来のトースターと『匠ブランジェトースター』の庫内温度の比較。従来のトースターはヒーターがONになるとゆるやかに温度が上昇し続けるのに対し、『匠ブランジェトースター』は素早くヒーターが立ち上がった後に温度が上がったり下がったりを繰り返す。また、従来のトースターと異なり、パンが焦げ始める温度まで上がらないようプログラムされている

試作機で焼いたパンの評価は食パン、カレーパン、クロワッサン、フランスパンの順に作業を進めた。難易度が最も高く一番苦戦したのがカレーパン。リベイクで外側を焦がすことなく中の具材を温める条件が常温と冷凍では大幅に異なるためだ。

従来のトースターでリベイクしたクロワッサン(左)と『匠ブランジェトースター』でリベイクしたクロワッサンの比較。従来のトースターでリベイクしたものは新たな焼き目がついた焼き過ぎの状態だが、『匠ブランジェトースター』でリベイクしたものは焦げ目がつかず焼きたてそのままを再現する

「外側はいい具合に仕上がっても食べると中の具材が冷たいままであったり、中の具材にしっかり熱を通すと外側が焦げてしまったりします。浅井氏は外側がサクサク中の具材がアツアツでないと良しとしませんでした」と岡田氏。浅井氏が認めるカレーパンを実現するためにヒーターの選定をやり直した。

ヒーターは当初、短時間で発熱するグラファイトヒーターを上下に搭載していたが、試行錯誤の末、現在のように上にカーボンヒーター、下にハロゲンヒーターとした。

カーボンヒーターは表面を加熱しパリッと仕上げ、ハロゲンヒーターは内部まで温めもっちり食感に仕上げる。ハロゲンヒーターの採用は、「中に火を通すには下火が大事」という浅井氏のアドバイスに基づいたもの。カレーパンの具材は下にたまり上に空気の層ができていることから、上から熱をかけても空気で熱が遮断され具材が温まりにくくなっている。

カレーパンをリベイクしているところ。リベイク中はヒーターのスイッチを頻繁にON/OFFするため、庫内は明るくなったり暗くなったりを繰り返す

ヒーターの選定時、冷凍カレーパンに金串を刺して温めてみたこともあった。これは浅井氏から、「バーベキューで肉を焼く時に金串を使うのは肉の中に熱を通す意味もある」と教わったことからヒントを得たもの。1回試したところ思っていたより良好な結果が得られたが、リベイクする前の冷凍カレーパンに金串を刺すのは手間な上にアタッチメントとして金串を用意しなければならなくなることから、採用は見送られた。

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