TMT(テクノロジー・メディア・通信)業界に特化した国際的な調査会社であるカウンターポイント・リサーチ・エイチ・ケー (Counterpoint Research HK 以下、カウンターポイント社)から、2025年XRグローバル市場における市場動向予測を含むAI360による最新調査が公開された。
本稿では同社発表リリースを元に、その概要をお伝えする。
2025 年以降、AIはXR市場の成⻑を促進する重要な役割を果たす
2025 年以降、AIはXR市場の成⻑を促進する上で重要な役割を果たすだろう。具体的には、AIは、XRコンテンツ作成、パフォーマンス最適化、全体的なユーザーエクスペリエンスの向上に⼤きく貢献し、AIアシスタントと⾃動コンテンツ⽣成によってXRの⼤量導⼊が加速すると考えられる。
Meta、Samsung、Apple はいずれもAIと統合されたXR 製品を発売する予定で、市場にプラスの影響を与えると考えられる。AIがXRの既存の課題の多くを解決し、実⽤的なユースケースを拡⼤することで、2025 年にはXRの⼤量採⽤と投資の増加が予測される。
2024年、XR市場は予想を下回る結果となり、特にApple Vision Pro(AVP)は市場が期待するものに繋がらなかった。その⾼い平均販売価格と限られた⽤途が圧倒的な需要に繋がった結果、XR技術への投資と関⼼は低下した。
画像はイメージ
■⽣成AIの台頭がXR から注⽬と投資をそらし、市場は再び停滞
Meta、Apple、Samsungなどの⼤⼿企業は、XRの⻑期的な可能性を模索しているが、XRの成⻑を促進する実質的なイノベーションが不⾜していた。その⼀⽅、⽣成AI(GenAI)の台頭がXR から注⽬と投資をそらし、市場は再び停滞期を迎えた。
FacebookはベストセラーとなったQuest 2の発売後の2021年に、期待を込めて社名をMetaに変えた。しかし、XRの⼤流⾏がそれに続くことはなかった。
ハイテク業界においてスマートフォンの次の⼤物はXRだと期待されていたにも関わらず、そうはなっていない。⼀⽅で、GenAI(⽣成AI)は、ユーザーの関⼼が⾼まっているだけではなく、Microsoft やNVIDIA の株価にみられるように、投資家の信頼も獲得している。
これらGenAIの波に乗った企業は時価総額においてAppleに迫りつつあり、後れを取ったGoogleやMetaは必死に挽回しようとしている。
出典: カウンターポイント社
■AIがXR の勢いを奪ったのではなく、実際にはAIがXR 市場を活性化させる可能性
まるでAIがXR の勢いを奪ったかのようにも⾒えるが、実際にはAIがXR 市場を活性化させる可能性があると推定できる。
XRを⼿掛けるMeta、Apple、Samsungなどの企業は、依然として⻑い⽬でみればXRの時代が来ると信じており、MetaはスマートグラスにAIを搭載し、Samsung は次機種で追随するとみられ、Apple Intelligenceも、やがてAVPの上で動くようになると想像できる。
これは、単にAIアシスタント機能がデバイスに追加されるということではなく、コンテンツ⽣成⽀援や性能最適化をAIが担い、それに伴い、ユーザー体験の向上、電源管理の効率化、ネットワーク通信の最適化といったことが実現され、その結果、使い⼼地の良いデバイスになれば、その時こそ⼤衆に受け⼊れられ、XRのポテンシャルが最⼤限に発揮できるようになると考えられる。
調査概要
今回の発表は、チャネル情報、POSデータ、ディストリビューターアンケート調査、公開データなどボトムアップデータソースとトップダウンリサーチの組み合わせによるカウンターポイント社独⾃の調査⽅法で実施された。
調査時期/2024年1⽉1⽇〜2024年9⽉30⽇
関連情報
https://japan.counterpointresearch.com
構成/清水眞希