台風などの自然災害、国家間の武力衝突や経済対立などで混とんとする現代社会を4つのキーワードで表したビジネス用語が「BANI」だ。2018年に米国の作家ジャメイ・キャッシォ氏が提唱した。社会心理や経営戦略に詳しいConoris Technologiesの井上幸社長が説明する。
BANI
「このような社会の様相を表すキーワード群はいくつかあり、BANIが登場する前はVUCA(図参照)が有名でした。VUCAは1980年代以降の世の中の発展に伴う大きな社会環境変化の状態を表現していましたが、BANIはコロナ禍などの社会不安に対する人の気持ちに寄り添って考えられた定義だといえます。SNSが発展し拡散されやすい現代に、サービスやコンテンツを世に出していくときに、熟考すべきキーワード群であるともいえます」
こうした世相を表す言葉が、企業経営の旗印になるという。
「ビジネスの現場でBANIは、経営判断時のリスクマネジメントの観点で、ローンチするサービスが『多様性に富む世の中にどう評価されるか』といった炎上防止に使われます。ただ売上に直結するわけではないため実践する企業は少ないのが現状です」(井上さん)
【DIMEの読み】
モノやサービスに主眼を置いていた企業の経営方針が、BANIによって「人の情動」に注目したフレームワークに寄り添うようになれば、現代人に寄り添った革新的なアイデアが生まれるかもしれない。
現代の社会環境やビジネス状況を説明する4つの英単語群
なじみのない「非線形性」は、努力と結果が比例しない(予測できない)先行き不透明な世相を表している。
2020年代の世の中を表現
「デジタル化・多様化・災害増加などで玉石混交な情報流通が増えた結果がBANIだと言えます」(井上さん)
取材・文/久我吉史