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「販売した先にまで責任を持つ」MiMCがパッケージを通じてユーザーに伝えたいこと

2024.11.23

ビューティーディレクター MICHIRUさんとともにおくる、連載「Wellbeing Beauty by MICHIRU」。

第二回は日本のオーガニックコスメブランドの草分け的存在、「MiMC」の開発者兼代表北島 寿さんが考える「ウェルビーイングビューティーとは」を伺っていく。

後編となる本記事では、北島さんのビジネス論ともう一つのリジェネレーションな取り組みを紹介する。

前編はこちら

「地球と人を美しく」を世界にひとつの物語に、オーガニックコスメブランドMiMCが提案するウェルビーイングビューティーとは?

オーガニックであることとサステナブルであることは、どれくらいイコールなのだろう。 ビューティーディレクター MICHIRUさんとともにおくる、連載「Wellbe...

中編はこちら

MiMCが発売した香りのアイテムにみるコスメブランドが担う新たな役割

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独自開発の素材に包まれたコフレコレクション

今回、MICHIRUさんがもう一つどうしても北島さんに話を聞きたかったのが、「2024 ホリデーコレクション」のコンパクト容器について。

古紙を主原料にプラスチックを配合した紙パウダーバイオプラスチックを独自に開発。サステナブルな天然原料でつくられた中身とともに、パッケージでも環境負荷の低減を目指している。

「作る」から「捨てる」まで環境への責任を持って商品をお届けする

MICHIRUさんがカラーディレクションに入り、星読み係でヒーラーのyujiさんとコラボレーションした2024コフレコレクション。クリアフィクシングサンダルウッド プレスト(左)とシームレスカラーズ(右)。11月1日より発売開始

MICHIRUさん(以下・MICHIRU):MiMCのウェルビーイングな取り組みのなかで、コフレの容器が一番新しい取り組みのように感じています。プラスチックのようで、触ると温かみがある不思議な素材。古紙とプラスチックを組み合わせたというこの素材を採用したきっかけを聞かせていもらえますか。

北島さん(以下・北島):昨年のコフレコレクションでは四角型のパッケージを発表したのですが、今年は円型コンパクトも実現できました。MICHIRUさんと一緒に化粧品本体の原材料やサステナビリティであることにはずっとこだわってきたのですが、そろそろパッケージも考えていく時代だと感じ、開発を重ねてきたものです。

MICHIRU:はじめにご相談いただいたときには、紙のパッケージをいろいろお見せしましたよね。

北島:初めは紙100%も検討したのですが、濡れるとふにゃふにゃになってしまったり、端が欠けてしまったりと、どうしても長くは使えません。サステナビリティとは物を長く大事に使うという面もあると思います。家具なども磨いて削って、長く使う。そんな時代に戻りつつあると思ったときに、環境負荷を減らすとともに耐久性を両立したいという結論に至りました。そこで古紙を主原料に、一部にプラスチックを混ぜた紙パウダーバイオプラスチックを独自に開発しました。

MICHIRU:プラスチックが入っているのですが、燃やすゴミとして廃棄して大丈夫だと聞きました。

北島:実は今、ゴミ焼却炉では生ごみなどの水分量が多く、焼却の際に石油をかけたりプラスチックのパウダーを噴霧したりしないと燃焼しないという問題が生じているそうです。焼却炉の燃焼率が悪いと、それも環境問題になってしまいます。工学系の専門家にも確認して、プラスチックが混ざったこちらのパッケージが捨てられた際に、ゴミの燃焼に寄与できると考えました。

MICHIRU:世界初のオリジナルの素材なのですよね?

北島:世界中をスクリーニングしているわけではないので世界初とは謳えないですが、このBlack woodカラーは原料自体がMiMCしか持っていないので世界にはない物だと思います。もちろん、日本初は言えますよ。

紙とプラスチックを混ぜると粘性が出るので型を取るのがとても難しく、開発にあたってはさまざまな技術的な難題がありました。工場の方達と再三やりとりをして、創意工夫を重ねて実現した前例のないパッケージです。なによりも化粧品ですので、中身に対する耐性のチェックも厳しくテストも重ねました。

MICHIRU:コストも時間もかなりかけられたパッケージなのですね。この素材が世の中にもっと広がったらいいのにと思うのですが。

北島:同業者の方にもどうやって作ったかわからないと言われています。前例がない物ですので今はまだ限定で、お客さまの声や使い続けていただいた過程などを確認したいという状況です。

コフレコレクションという限定数の販売にはなってしまいますが、お客さまとこういったサステナブルな物を取り入れていくことや、物を大切にすることを共有して一緒に向き合っていけたらと思っています。扱っているのは化粧品ですが、ゴミや環境の問題など伝えられることがたくさんありますよね。

MICHIRU:コスメは日々たくさんの新しいものが販売されます。売れた後、使い切らなくて捨てられていくコスメも多いですよね。そう思うと販売したその先にも作る側の責任があると感じています。コスメを紹介する側としても、最終的に地球を汚さないものかどうかというのはとても大切に考えています。最近ではMiMCさんのようなオーガニックブランドだけでなく、ビューティー業界全体にその波が来ていて嬉しく思っています。

正解のない時代に、ブランドの物語を正解にしていく

MICHIRU:北島さんは前例のないことにどこよりも早く取り組んでいる方のように思います。そこにビジネス的な戦略はあるのでしょうか。

北島:実は私、経営コンサルタントの大前研一さんの経営者会で学んでいます。そういう意味ではバリバリのビジネスマンなんですよね。

MICHIRU:意外です! ではしっかりコンサルティングをして……?

北島:いえ、その大前さんが今は「もうコンサルティングの時代じゃない」と言っているんですよね。お話しを聞くと、土の時代から風の時代に変わるってこういうことだなと腑に落ちるのですが、今はプロットを作って、ターゲットに向けて、というようなコンサルティングの正解がつくれないんだそうです。マスがなくなっているんですよね。

逆に正解がない時代だから、自分が選んだものを仕事にしていく。時代を鑑みながら、自分の信念・考えに合わせてチョイスして、それをみんなで正解にしていく手腕の方が必要だと。私の解釈ですけどね。だからMiMCもマスに合わせてとか、正解を目指してというような戦略は全く取っていないです。

MICHIRU:「世界で一つくらいこういう会社もあっていいんじゃないか」とおっしゃっていましたもんね(前編)。伝えたいこと、作りたいものを正解にしていっているというのはとても強く感じます。信念を正解にしていくという姿勢こそ、ウェルビーイングの始まりなのかもしれないですね。

<プロフィール>
北島 寿(きたじま・ことぶき)
株式会社MIMC(エムアイエムシー)開発者兼代表取締役。化学を専門に研究していた大学院時代に化学物質過敏症になり、大学院卒業後、自然派化粧品会社に入社。その後、本物のオーガニックを知るために渡米。渡米中にミネラルメイクと出会い、MIMC.incを設立。世界で初めての日本人のためのオーガニックコスメブランド「MiMC」を立ち上げる。

MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。

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