AIを活用した売り手特化のM&Aサービス『RISONAL』を運営するオーナーズ株式会社(以下「オーナーズ」)は、日本国内のスタートアップ経営者を対象に「出口戦略としてのM&Aについてのアンケート」を実施。結果をグラフにまとめて発表した。
約3割が出口戦略としてM&Aを優先的に検討
M&Aを出口戦略の一つとして検討しているか聞いたところ、「優先的に検討している」が28.1%で最も多く、「IPOと並行して検討している」が24.6%、「IPOのみ検討している」が7.0%と続き、出口戦略としてM&Aを優先的に検討している経営者が多いことがわかった(n=57/出口戦略を検討している人)。
■約半数がIPOは「社会的な信頼を得るため」と回答
IPOを出口戦略として検討する理由を聞いたところ、「社会的な信頼を得るため」が50.0%で最も多く、「資金調達のため」が44.4%と続いた(n=18/IPOを出口戦略として検討している人)。
・社会的な信頼を得るため:50.0%
・資金調達のため:44.4%
・企業の成長を加速させるため:22.2%
・創業者や従業員の持ち株を現金化するため:11.1%
・投資家の要望:5.6%
■約6割がM&AとIPOの準備の違いを理解していない
M&AによるEXITを選択する際に、IPOを選択する場合と準備にどんな違いがあるか理解しているか聞いたところ、「全く理解していない」が30.3%で最も多く、「あまり理解していない」が26.6%と続き、違いを理解していない経営者が約6割いることがわかった(n=109)。
■M&Aの懸念点、1位「適切な買い手探索」2位「適切な自社価値の評価」3位「M&Aのプロセス」
出口戦略としてM&Aを選択する際に、どのような懸念・課題があると思うかl聞いたところ、「適切な買い手が見つかるか」が38.5%で最も多く、「自社の価値が適切に評価されるか」が29.4%、「M&Aのプロセスがわからない」が24.8%と続いた(n=109)。
半数以上が「出口戦略としてのM&Aにメリットを感じている」
M&Aがスタートアップにとって出口戦略として有効であると思うか聞いたところ、「とても有効である」と「やや有効である」が合わせて52.3%と、半数以上の方が出口戦略としてのM&Aにメリットを感じていることが判明した(n=109)。
<M&Aが有効だと思う理由/一部抜粋>
56歳 男性:企業価値を毀損することなく、他社へ承継できることは社会的意義が大きいから
60歳 女性:自社の力だけで伸びるには限界があるため
35歳 男性:知識と人脈が十分でないから
60歳 男性:IPOはある程度の規模が必要だが、M&Aの場合は小さな会社でも利用できそうだから
59歳 男性:IPOに比較し、組織の整備が不要だから
59歳 男性:会社の規模を大きくするための手段として最適だから
<M&Aが有効だと思わない理由/一部抜粋>
57歳 男性:M&A自体に不信感がある。自身が投資してきた金額より安くなるのではないかと不安
51歳 男性:買い手がそう簡単に見つからないから
57歳 男性:M&A自体は問題ないと思うのだが、企業価値に対して相応の金額提示をしてもらえるのかがわからない
■スタートアップのM&A支援に必要なことは「適切な買い手の紹介」
スタートアップのM&Aに関して、どのような支援が必要だと思うか聞いたところ、「適切な買い手の紹介」が40.4%で最も多く、「M&Aに関する専門知識の提供」が23.9%、「自社のバリュエーション(価値評価)の明確化」が22.0%と続いた(n=109)。
・適切な買い手の紹介:40.4%
・M&Aに関する専門知識の提供:23.9%
・自社のバリュエーション(価値評価)の明確化:22.0%
・M&Aプロセスのサポート:21.1%
・買収後の統合(PMI)支援:13.8%
・その他:0.9%
・必要なことはない:11.0%
・どんなことが必要かわからない:22.9%
■投資家の多くはIPOよりもM&Aを支持
経営している会社の出口戦略に対する投資家の意見について聞いたところ、「M&Aを支持している」が20.2%、「IPOを支持している」が12.8%という結果になり、投資家はM&Aを支持している割合が多いことがわかった(n=109)。
オーナーズ株式会社 代表取締役社長 作田 隆吉氏 コメント
過去10年で国内スタートアップの資金調達市場は10倍以上に拡大しました。しかし、同期間におけるIPO市場は件数・規模ともに横ばいで、スタートアップがIPOを実現するハードルは相対的に上がっています。
多くの起業家にとっては、M&AでのEXITも選択肢と検討すべき環境といえるでしょう。
しかしながら、スタートアップのM&Aにおける平均買収価格は2019年において4.7億円(同2018年:2.7億円、同2017年:5.2億円)と、魅力的なM&A EXIT事例は極めて数が限られる状況です。
今回のアンケートでは、起業家がM&Aを有効な選択肢と考える一方で、約6割の起業家がM&AとIPOの準備の違いを十分に理解していないことが明らかになりました。
実際にM&Aを検討する場合には、キャッシュ・フローを意識した経営が求められ、IPOを目指している時に陥りがちな大型調達至上主義、売上至上主義からは脱却していく必要があります。
こうした経営方針の転換には一定の期間を要する可能性があるため、ランウェイが短くなり、追加の資金調達も厳しいという状況からM&Aを検討しても魅力的なEXITを実現することは難しいという点も起業家は認識しておく必要があるでしょう。
調査概要
調査名称/出口戦略としてのM&Aについてのアンケート
調査機関/FASTASK
調査対象/日本国内の創業5年未満の創業経営者
調査方法/Webアンケート
調査日/2024年10月28日〜10月31日
有効回答数/109件
出典/オーナーズ調べ
関連情報
https://owners-ma.jp
構成/清水眞希