脳には様々な特性があります。それを十分に理解し、最大限に活用する方法を考えて実行に移せば、より短い時間で大きな仕事の成果を残せるようになるのです。そもそも脳は、大脳、脳幹、小脳の3つに大きく分かれ、全体の約8割を占めるのが大脳です。大脳には思考と行動をコントロールする「前頭葉」、感覚や知覚を司る「頭頂葉」、聴覚や記憶を司る「側頭葉」、視覚を司る「後頭葉」というパーツが含まれます。
人間と動物を比較した時、大きく異なるのが前頭葉の前にある「前頭前野」の割合です。人間の「前頭前野」が大脳の中で占める割合は約30%。一方、動物の中で最も大きいチンパンジーでは、せいぜい7~10%しかありません。「前頭前野」は、考える・記憶する・感情をコントロールする・判断する・応用する、など人間にとって重要な働きを担っています。うまく使って仕事の作業効率を高めるようにしましょう。
「前頭前野」の能力をフルに発揮させる方法は?
「前頭前野」は、仕事で集中力が必要な時に働く「ワーキングメモリー(作業記憶)」の機能を持っています。ワーキングメモリーの容量は限られており、それを超えると機能が著しく低下してしまいます。したがって仕事のパフォーマンスを高めるためには、ワーキングメモリーの容量内で最大限に使いこなさなければなりません。
また「前頭前野」には〝硬直化〟や〝得意時間〟という特性もあります。「前頭前野」を使って考えたり集中したりすると、頭が徐々に硬直化してしまいます。それを防ぐためには適度に休憩を入れたり、リラックスした状態にしてあげたりするといいでしょう。硬直化を避けられるとともに、思考と集中のパフォーマンスを回復させることができます。
脳の特性をふまえた高効率な仕事の取り組み方
このような、脳の特性をふまえた仕事を進め方などについて、いくつか具体例を紹介しましょう。
【45分1セット】
考えごとや発言をする際、45分に1回は休憩を入れるとパフォーマンスが高くなることが、2万人の実証実験でわかっています。会議時間を60分ではなく45分にしたところ、発言数は増え、時間どおりに終わる確率が高まるのです。
【タイムリミット13時間】
起床してから13時間程度が経過すると、脳の機能は急激に低下します。6時の起床なら夜19時までです。それ以上の残業は非効率といえます。集中すべき作業、難しい案件、重要な意思決定など、脳に大きな負荷がかかる仕事は、脳が元気な午前中に。19時以降の残業はパフォーマンスが下がると理解したほうがよいでしょう。
企画は夕方に練るのが理想。休憩して脳を休めるのも大事
脳が疲労している人は、ほかの脳機能が活性化する傾向もあります。例えば、思考や集中をコントロールしている「前頭前野」は16時ぐらいから疲れ始め、機能が低下していきます。一方、感覚を司る「頭頂葉」は「前頭前野」が疲れ始めてから機能が高まりますので、創造的なアイデアを出したいのであれば、16時から20時くらいが理想的といえるでしょう。また、生産性を高めるうえで、ある程度のすき間(バッファー)を作ることは必要です。心のゆとりを持っている人から新しい発想が生まれます。脳がリフレッシュすると長く動かすことができるので、夕方まで高いパフォーマンスを発揮させられるでしょう。これは私も実践していますが、集中する時間を短期的に設けて、小まめに休んだほうが疲れにくくなります。
休憩を入れて脳を休ませるだけでなく、集中する時間には〝タイムプレッシャー〟をかけることにより、脳が活発に動きます。アイデアの量が増え、結果としてその中に質の高いアイデアが含まれている確率が上がるのです。これは「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれ、締め切り時間を意識させて集中力を増す方法として多くの人が活用し、成果を残しています。このような脳の特性を理解したうえで、集中が必要な作業は午前中にし、お昼明けは眠くなるのでライトな作業を行なうなど、ぜひ実践してみてください。
前頭前野には、ワーキングメモリーのほか、複雑かつ不明瞭な情報によって集中力の低下を招く〝認知の処理〟が行なわれる。特性をよく理解して、仕事に生かしたい。
文/越川慎司
全員が週休3日のクロスリバー代表。700名全員がリモートワークのキャスター執行役員。これまで529社の働き方改革を支援。
800社17万3000人のAI行動分析でわかった「仕事の無駄」を絶つ超タイパ仕事術
「時短を意識して仕事を進めるためには、一日を通して計画的に準備することが大切です。仕事時間だけに意識を傾けるのではなく、働く前後の時間を有効に活用することも心がけましょう。精神を落ち着かせることや、リフレッシュのための時間を確保することで、仕事時間中の効率が高まり、結果的には時短につながります」と話すのは、ビジネスコンサルタントの越川慎司さん。複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革のノウハウを提供し、24冊以上のビジネス書を執筆している、まさに仕事の達人だ。同氏がこれまでに働き方改革を支援してきたのは800社以上にのぼる。クライアント企業の優秀なビジネスパーソンに見られる行動を分析して導き出した、業務の無駄を徹底的に省き、仕事のタイパ(タイムパフォーマンス)を高める方法を著書「最速で結果を出す超タイパ仕事術」で詳しく解説している。