PDCAサイクルを成功させている企業例
PDCAサイクルは、多くの企業で成功を収めている。ここでは、特に効果的に活用されている企業の例を紹介する。
■トヨタ自動車株式会社の事例
長期的な事業である自動車産業のトヨタ自動車では長らくPDCAが活用され、同社は大きな成功を納めてきた。同社では主に製造工程における品質管理と効率向上のため、PDCAサイクルを効果的に活用している。持続的な改善を追求し、「なぜなぜ五回」(Whyをクリカス手法)「見える化」(業務データの徹底的な可視化)などの同社独自の手法を組み合わせた実践が、業務の改善に大きく寄与している。
「なぜなぜ五回」は特に重要であり、PDCAサイクルのCheckの段階で「5W1H」の手法を用いることで、問題発生時の原因を的確に分析し、迅速に改善するためのサイクルを確立している。通常の5W1Hとは異なり、5Wの中の「Why」を五回繰り返すのが「なぜなぜ五回」だ。問題の発生した理由を深掘りし、「真因」を特定、その後にHowを考えることを信条としている。Whyを重要視することで原因を追求するためのデータ取得の重要性をメンバーに認知させ、Howの柔軟な発想を促している。
このように、トヨタのPDCAは、
- 適応業務を製造工程や品質管理などの長期的に継続改善が必要な業務適応
- 「見える化」によるデータ収集とその重要性の周知
- 「なぜなぜ五回」による真因到達によって解決策には幅広い解決手段探索の可能性を担保
以上によって、PDCAを現代で活用するポイントを網羅している。
トヨタのPDCAサイクルは単なる理論ではなく、現場での実践を通じて磨き上げられたものであり、品質向上と持続的な改善を両立させるための強力な手段となっている。トヨタ自動車の事例は、PDCAが現代の製造業においても依然として効果的であり、読者もご存知の通り自動車産業のトップランナーであることの原動力の1つになっている。
まとめ
PDCAサイクルは、ビジネスの持続的な改善を目指すフレームワークとして、長年多くの企業で採用されてきた。特に、安定した業務環境や大規模なプロジェクトにおいては、段階的な改善が可能で、未だに有効な手法であることは間違いない。しかし、近年では「PDCAサイクルは古い」とされる背景があり、その理由として変化への対応の遅さや、データドリブンの不足、柔軟性の欠如が挙げられる。
現代のビジネス環境は、スピードと変化に対応する柔軟性が求められるため、「OODA」や「PDR」といった代替フレームワークが登場し、注目されている。しかし、すべての場面でPDCAが効果を失うわけではない。業務の性質やプロジェクトの規模に応じて、最適なフレームワークを選び、効果的に運用することがビジネスの成功につながる。重要なのは、各フレームワークの特性を理解し、適材適所で活用することで、競争力のある組織づくりを目指すことである。
文/諏訪 光(すわ ひかる)
大手ネット系企業にて10数年に渡りプログラマーからプロダクトマネージャーまでを幅広く経験。新規事業から企業再生に至るまで様々な案件の開発に携わる。DX推進者や起業経験を経て現在は大手信託銀行でDX推進を行いながら、フリーランスの新規事業、DX、デジタルマーケティングのコンサルティングも行う。