KGIは、目標の明確化と効果の定量的な把握に役立つ経営指標です。KPIと連動させることにより、目標達成がより現実的になります。具体例を挙げながら、設定のポイントを解説します。
目次
KGIの基礎知識
企業経営やビジネスの成功には、明確な目標設定が欠かせません。その中心となるのが、KGIです。
最終目標を数値化した指標で、組織のモチベーションを上げるのにも有効です。KGIを設定する目的や、KPIとの関係性を理解しましょう。
■KGIは「Key Goal Indicato」の略称
KGI(Key Goal Indicator)の日本語訳は、『重要目標達成指標』や『経営目標達成指標』です。企業の成長や競争力強化に直結する要素を定量的に表したものであり、売上高・経常利益・市場占有率・成約件数などがKGIとして設定されます。
KGIは単なる目標数値ではなく、組織全体で共有され、常に見直される重要な指標です。適切なKGIの設定は、従業員の意識統一を促すほか、経営層の戦略的な意思決定を助けます。
■KPIとの違いと関係性
KGIとKPIは、企業の目標達成において密接に関連する重要な指標です。KPIは『Key Performance』の略称で、『重要業績評価指標』と訳されます。
KGIが最終的な目標であるとすれば、KPIはその達成に向けた中間指標です。例えば、年間売上高をKGIとした場合、月間の新規顧客数や商品別の販売数などをKPIに設定するのが通常です。
KPIは、KGI達成のための具体的な行動指針であり、進捗を測る役割を果たします。両者の関係は階層的で、KPIの達成がKGIの実現につながります。
■KGI設定のメリット
KGIを設定することで、組織にどのようなプラスの効果がもたらされるのでしょうか?
- 組織全体のベクトルが統一される
- 従業員のモチベーションが向上する
- 戦略的な意思決定につながる
- ステークホルダーへの説明が容易になる
到達すべきゴールが数値で表されると、従業員のモチベーションが高まります。一人一人が自分の役割を認識するようになり、組織全体の生産性向上につながるでしょう。
KGIやKPIに基づいた進捗管理は、経営陣の戦略的な意思決定をサポートします。目標と達成までのプロセスが可視化されるため、戦略の見直しや改善計画の立案が容易になるのです。
また、企業の成長度合いや方向性を数値で表すことで、投資家や顧客からの理解を得やすくなります。
KGIの設定方法と具体例
業界ごとの具体例を挙げながら、KGIやKPIを適切に設定する方法を解説します。ロジックツリーを作成し、KGIとKPIの関係性を可視化するのがポイントです。
■具体的で測定可能な目標を設定する
KGIは、具体的かつ測定可能な目標でなければなりません。例えば、『来年度の売上を25%増やす』のように、達成時期と目標値を明確にします。『SMARTの法則』に当てはめると、精度の高いKGIが設定できるでしょう。
- Specific(明確な):客観的に評価できること
- Measurable(測定可能な):数値目標であること
- Achievable(達成可能な):正しい努力で達成できること
- Relevant(関連性がある):KPIに関連があること
- Time-bound(期限がある):具体的な達成期限があること
SMARTの法則は、目標達成に有効なフレームワークの一つです。上司や他のメンバーとの共通認識が形成されやすくなるほか、自分自身の振り返りもしやすくなります。
■KGIとKPIを連動させる
KGIは、KPIと合わせて設定し、両者を連動させる必要があります。KGIを細分化したものがKPIであるため、KGIが『売上目標』であれば、KPIには『新規顧客の獲得数』や『顧客単価』などを設定します。
KGIとKPIを設定したら『ロジックツリー』を作成し、それぞれの関係性を可視化しましょう。ロジックツリーとは、KGI達成に必要なKPIを、樹形図の形でまとめたものです。目標達成への道筋が明確になり、各部門や個人がアクションプランを立てやすくなります。
設定後は、定期的な進捗確認と必要に応じた軌道修正が必要です。CRM(顧客管理ツール)やSFAツール(営業支援システム)などを活用すれば、データに基づいた客観的な評価が可能になります。
■KGI設定の具体例
KGIやKPIは、業界の特性や企業の戦略、成長段階に応じて適切に設定する必要があります。
例えば、サービス業・飲食業では、年間の営業利益がKGIとなるケースが多いでしょう。KPIには、顧客単価や月の予約件数、FL比率(売上高に占める食材費と人件費)などが設定されるのが一般的です。
IT企業の場合、製品のリリース日やアクティブユーザー数がKGIとして設定され、月のバグ報告数やダウンロード数などがKPIに設定されます。
製造業では、製品の品質・生産性・コスト管理の全てが重要です。生産効率の向上をKGIにした場合、機械稼働率や不良品率などをKPIに設定します。
社内でKGIを活用するポイント
KGIを社内で活用するには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを押さえることで、目標達成に向けた効果的な取り組みが可能になります。
■定期的に見直しをする
KGIの定期的な見直しは、企業の持続的な成長に欠かせません。組織の成長や事業環境の変化を反映させ、KGIの目標値や期間を調整することが求められます。
見直しの際は、KGIが具体的に測定可能か・現実的に達成可能か・企業戦略との関連性があるかを再確認します。同時に、KPIの進捗状況を分析し、KGIとの整合性を検証することが重要です。
見直しのタイミングは、業界ごとに異なります。小まめに進捗状況を確認し、目標と現在地のギャップを埋めるための施策を考えましょう。このプロセスを通じて、環境変化に強い企業体質が築かれます。
■KGI達成のための組織体制を構築する
KGI達成のための組織体制が構築されていない場合、それぞれが異なる方向に進む恐れがあります。部門間の連携を強化するとともに、全員がタイムリーに進捗を把握できる環境を整える必要があります。
まずは、定期的に会議を開いたり、ダッシュボードを活用したりして、情報共有を徹底しましょう。データを一元管理できるデジタルツールを、導入するのも効果的です。
適切な指示やフィードバックが行えるように、部門・チームの管理者にKGIとKPIの知識を学ばせることも欠かせません。KGI達成に向けた取り組みを奨励し、PDCAサイクルを回すことで、組織全体の成長が加速します。
覚えておきたい関連用語
KGIに関連する用語として、『KSF』と『OKR』を取り上げます。これらの指標・手法を適切に活用することで、より戦略的な目標設定と管理が可能になるでしょう。
■KSF
KSFは『Key Success Factor』の略称で、『重要成功要因』と訳されます。KGIが最終目標を表すのに対し、KSFは目標達成のための重要な成功要因を意味します。
例えば、KGIが『売上高1億円』であれば、『新規顧客の獲得』や『既存顧客の満足度向上』などがKSFです。
企業や組織の課題を解決する場合は、『KGIの決定』『KSFの分析』『KPIの設定』の手順でロジックツリー(KPIツリー)を展開します。KSFに基づいてKPIを設定し、進捗を管理することで、KGIの達成確率が高まります。
■OKR
OKR(Objectives and Key Results)は、『目標と主要な結果』を意味する目標設定手法です。KGIが最終的な成果指標を示すのに対し、OKRでは『目標(Objectives)』と、その達成度を測る『主要な結果(Key Results)』を設定します。
OKRの特徴は、挑戦的な目標設定と短期的なサイクルにあります。KGIは100%の達成を目指し、より長期的な視点で設定されますが、OKRでは60~70%の達成率を目指し、四半期ごとに見直しを行うのが一般的です。
OKRは、組織全体の方向性を示し、従業員の自主性を促進するのに適しています。KGIとOKRを使い分けることで、効果的な目標管理が実現します。
適切なKGI設定が組織と事業を成長させる
KGIは、企業の最終目標を示す重要な指標です。ゴールが定量的に示されることで、今何をすべきかがより明確になります。
KGIに至る過程を評価する指標には、KPIがあります。KGIとKPIの適切な設定により、優先順位を意識したより生産的な業務を展開できるでしょう。
ビジネスでは、KSFやOKRもよく登場します。それぞれの特徴を押さえた上で、うまく使い分けることが肝心です。
構成/編集部