ビジネスシーンで使われる、『オブザーバー』という言葉の意味や定義を解説します。オブザーバーが必要とされる理由や求められる場面、オブザーバーとして出席する際の心構えを確認しましょう。
目次
オブザーバーの意味と基本的な役割
オブザーバーという言葉の意味が、よく分からない人も多いのではないでしょうか。まずは、オブザーバーの基本的な意味や役割などについて解説します。
■「立会人」「傍観者」という意味
オブザーバーとは、『立会人』や『傍観者』を意味する言葉です。英語の『observer』が語源で、第三者的な視点で見守る役割を果たす人を指します。
ビジネスシーンでは、会議や話し合いに中立的な立場で参加する人のことをいいます。参加者の一人ではあるものの、決定権や積極的な発言権を持つことはありません。
また、オブザーバーとなるのは、会議の内容に直接関係のある人とは限らないのも特徴です。他部署のメンバーが務める場合もあれば、研修の一環として新入社員が幹部クラスの会議に出席するケースもあります。
■会議では「観察役」を担う
会議におけるオブザーバーの位置付けは、進行状況や参加者の発言を見守る『観察役』です。会議の進行には直接関与せず、文字通り、客観的な立場で状況を観察するのが主な役割です。
ただし、参加者から求められたときには、必要に応じてフィードバックをすることもあります。その場合も、特定の意見を支持するのではなく、会議全体に対する感想を述べるにとどめます。
また、専門的な知識を持つ立場として参加したときは、議論の方向性が正しいか、話し合いの内容に漏れがないかなどを確認することもあるでしょう。
■アドバイザーとの違い
アドバイザーとは、専門知識や経験を生かして、企業やプロジェクトの意志決定をサポートする役割です。オブザーバーと同様、第三者として会議に参加するケースもありますが、ただ傍観するのではなく、専門家としての意見・アドバイスを提供することが求められます。
両者とも会議の質を高める重要な役割を果たすものの、その方法が異なるのが特徴です。また、税理士やコンサルタントのように、専門分野の資格を持つ職種や肩書きをアドバイザーと呼ぶケースもあります。
オブザーバーの類義語や関連用語
オブザーバーの類義語や、関連用語についても確認しておきましょう。三つの主な用語を例に挙げ、それぞれの役割やオブザーバーとの違いについて解説します。
■コメンテーター
コメンテーターとは、主に外部から意見や解説を提供する人のことを指す言葉です。例えば、テレビ番組でスポーツの試合を解説する人が該当します。コメンテーターは、必ずその場にいなければいけないというわけではなく、離れた場所からでも意見を述べられるのが特徴です。
オブザーバーは必ずしも専門家とは限りませんが、コメンテーターは通常、その分野の専門的な知識を持つ人とされています。また、積極的に意見を述べることが求められる立場である点も、大きな違いです。
■スーパーバイザー
スーパーバイザーとは、組織内の監督やリーダーなどの役職を指す言葉です。対するオブザーバーは、特定の会議やプロジェクトにおける一時的な役割であり、組織内での固定的な地位ではありません。スーパーバイザーの主な役割は、業種によって異なりますが、一般的にチームメンバーの指導や育成、業務管理などを担当します。
例えば、飲食・小売業では複数店舗の運営支援、コールセンターではオペレーターのサポートや顧客対応などが、スーパーバイザーの主な仕事です。そのため、スーパーバイザーには、高いコミュニケーション能力や統率力が求められます。
■ファシリテーター
ファシリテーターとは、会議の進行役のことを指します。進行役とはいっても、単なる司会者ではありません。議論をまとめ、会議の目的を達成させる役割です。
発言が少ない人から意見を引き出したり、参加者同士がぶつかり合ったときには、感情的にならないようコントロールしたりすることもあります。
客観性・公平性が求められるという点では同じですが、ファシリテーターは会議そのものを仕切る役割を担います。
オブザーバーはなぜ必要?
会議や打ち合わせに、なぜオブザーバーを参加させるのでしょうか。必要な理由や、会議に参加することで得られるメリットについて解説します。
■会議の質を向上させるため
オブザーバーを会議に参加させる主な理由は、客観的な視点を取り入れ、議論の質を向上させることにあります。第三者が存在することで、参加者に『見られている』という意識を与え、発言・行動に責任を持たせる効果が期待できるでしょう。
会議に遅刻する参加者がいないか、議論の方向性がずれていないかなどをチェックする目的もあります。また、発言の偏りや、慣例による結論決めを防ぐためにも、公平な立場で会議を見守るオブザーバーの存在が必要です。
ほかにも、人事担当や上司がオブザーバーとなり、会議を人事評価の場として活用するケースもあります。
■組織全体の活性化を図るため
第三者が参加することで、会議の緊張感が高まり、活発な議論が交わされるという効果が期待できます。また、オブザーバーを務める側にとっても、メリットとなることが少なくありません。
例えば、新入社員が上司や経営陣の会議に参加することで、会社側の視点に気付いたり、実践的なスキルアップにつながったりします。
他部署のメンバーが参加する場合は、異なる部門の社員同士の意思疎通を円滑にし、業務効率化のヒントを得る機会にもなるでしょう。このように、会議の生産性向上だけでなく、組織全体の活性化にも大きく貢献します。
オブザーバーが必要となる場面
オブザーバーが、特に重要となる場面について解説します。それぞれの状況における役割や効果、注意点を詳しく見ていきましょう。
■若手社員が中心となるミーティング
若手社員が中心となるミーティングでは、上下関係を意識して発言を控えたり、萎縮してしまったりすることが少なくありません。公平な目線を持つ参加者がいることで、発言しやすい雰囲気が生まれ、活発な意見交換が期待できます。
社会人経験が浅く、会議の進め方に慣れていない若手ばかりが集まる場では、進行を促すような助言をするのもよいでしょう。また、人事担当者が務めることで、若手社員の発言を適材適所の配置や、昇進を検討する判断材料にも使えます。
■参加者が多い会議
参加者が多い会議では、議論が拡散しやすく、時間も長くなりがちです。第三者が参加することで、要点を絞った議論が交わされ、時間短縮の効果が期待できます。
また、大人数の会議にはさまざまな人が参加するため、立場によっては意見を述べにくい状況が起こる可能性もあるでしょう。中立的な存在が会議全体を観察することで、発言力の強い参加者の意見に偏るのを防ぎ、議論の妥協点が見つかりやすくなります。
■進行が遅れているプロジェクトの会議
進行が遅れているプロジェクトの問題点を分析するためには、会議にオブザーバーを参加させるのが有効です。プロジェクトリーダーや管理職が参加することで、チームの状況や具体的な問題点を直接把握できます。
もしくは、あえて他部署の社員を参加させ、新たな視点を取り入れてみるのもよいでしょう。社内に適任者を見つけられない場合は、外部から専門家を招くのも効果的です。
ただし、オブザーバーはあくまでサポート役に徹し、チームのモチベーションを低下させないように注意する必要があります。
オブザーバーに求められる心構え
オブザーバーとして、会議に参加する際の心構えについても知っておきましょう。三つのポイントを挙げて解説します。
■第三者として参加することを自覚する
まず、第三者としての立場を自覚することが重要です。オブザーバーは、議論に直接加わるのではなく、客観的な視点を持って会議の行方を観察する役割を担います。
特定の参加者に肩入れしたり、求められていないのに意見を述べたりするのは避けましょう。中立的な立場を保ちつつ、会議全体の公平性・透明性を確保することが大切です。
参加者の発言・態度を観察し、必要に応じて会議の質の向上に貢献することが求められます。自身の役割を十分に理解することで、会議の質や組織の生産性向上に貢献できるでしょう。
■責任を持って発言する
会議中に意見を求められる場面はあまりありませんが、発言が必要になった際は責任を持って述べることが重要です。第三者の立場だからといって、無責任な発言は避けましょう。
発言の影響力を認識し、会議全体への影響を考慮することが大切です。具体的で建設的な提案を心がけ、曖昧な表現は控えます。
ただし、意見を押し付けるのではなく、あくまで助言する立場だという認識を忘れないことが必要です。専門家としての見解を述べる際は、根拠を示せる場合に限定しましょう。
■求められる役割を理解する
自分の役割を十分に理解した上で、会議に参加する必要があります。基本的には、公平な立場で会議を観察することが期待される役割です。
しかし、場合によっては、プラスアルファの目的のために参加を促されるケースもあるでしょう。例えば、新入社員として上層部の会議に参加する際は、会議の進行を見守るほかに、会社全体の状況を把握することも求められている場合があります。
また、他部署からプロジェクト会議への参加を求められたときは、当事者には分からない問題に気付いてもらう目的もあるでしょう。自分が参加する意義や目的の理解が、求められる役割を果たすことにつながります。
オブザーバーは客観的な視点を持つ見守り役
オブザーバーは、会議や議論の場で客観的な視点を提供する重要な役割を担います。その必要性は、中立的な立場からの意見や新たな視点が求められる場面で顕著です。
アドバイザーとは異なり、直接的な助言よりも観察と分析が求められます。常に第三者という立場を認識し、会議の成り行きを見守ることが大切です。
発言を求められた場合には、公平な立場から傍観者としての意見を述べましょう。会議の質を高め、より良い意思決定を支援するオブザーバーの存在は、多くの組織で重要視されています。
構成/編集部