ゆとり世代の特徴や一緒に仕事をする際の注意点、指導する際のポイントについて解説します。職場のゆとり世代との付き合い方が分からず、困っている人は参考にしてみましょう。
目次
ゆとり世代の定義とは
ゆとり世代は、他の世代とは異なる独自の傾向を持っているといわれています。世代の特徴を理解することで、職場でのコミュニケーションや指導方法を適切に選択できるでしょう。まずは、ゆとり世代の定義や特徴を解説します。
■個性重視のゆとり教育を受けた世代のこと
ゆとり世代とは、1987年4月2日から2004年4月1日までに生まれた世代を指します。この世代は、ゆとり教育と呼ばれる教育改革の影響を受けて育ちました。
ゆとり教育は、詰め込み型の学習から脱却し、個性を重視しながら豊かな人間性を育むことを目的としています。子どもたちが自由な時間を持ち、個性に合わせた学びを経験するために、完全週5日制の導入・授業時間の削減・絶対評価への移行などが行われました。
さらに、ゆとり世代の中でも、小学校入学から高校卒業までゆとり教育を受けた世代は『スーパーゆとり世代』と呼ばれています。
他の世代との違い
『ゆとり』以外にも、『Z』『さとり』『ミレニアル』など、さまざまな呼び方をされる世代が存在します。それぞれの特徴や、ゆとり世代との違いについて具体的に見ていきましょう。
■Z世代との違い
一般的に、1990年代中盤から2010年ごろまでに生まれた人々がZ世代です。生まれたときには、すでにスマホやパソコンなどのデバイスが普及しており、特にインターネットを活用したコミュニケーション能力が高いという特徴があります。
両世代ともITリテラシーが高く、個性や多様性を尊重する点では共通しています。しかし、Z世代の方がより高度なデジタルスキルを持ち、社会問題への関心も強いといえるでしょう。
また、メンタルヘルスに関する意識も高く、職場選びの際にも心身ともに健康で働けることを条件としている人が多いようです。
■さとり世代との違い
さとり世代とは、1980年代後半から2000年代初頭生まれの世代を指す言葉です。インターネット上で生まれた名称ともいわれており、バブル崩壊やリーマンショックなどの厳しい社会状況を『悟って』育ったことが、由来とされています。
現実主義的で堅実さを重視する傾向があり、競争意識が低く、所有や出世への欲求は薄いのが特徴です。また、他人に左右されず自立した意思決定をする傾向も見られ、ブランドのステータスではなく、自分の好きなものに価値を見いだすともいわれています。
■ミレニアル世代との違い
ミレニアル世代は、1980年代前半から1990年代半ばに生まれた人々のことで、Y世代とも呼ばれています。『ミレニアル』とは、英単語の『millennial(1000年の)』を由来とする言葉で、2000年代に成人を迎えた世代を指すのが一般的です。
ミレニアル世代も、他の世代と同様に、デジタル技術との親和性が高い傾向にあります。しかし、アナログ時代も経験しているため、適度な距離感を持ってITツールを使いこなせるのが特徴です。
また、キャリア意識が高いものの、モノよりコト(経験)を重視するため、『キャリアの向上=収入増加ではない』という傾向もあります。
ゆとり世代の主な特徴
ここでは、ゆとり世代によく見られる四つの特徴について詳しく解説します。これらの特徴を把握することで、ゆとり世代の価値観や行動パターンをより深く理解し、職場での協力関係を築くためのヒントを得られるでしょう。
■ワークライフバランスや効率性を重視する
ゆとり世代は、仕事が生活の中心という従来のライフスタイルではなく、ワークライフバランスを重視する傾向があります。仕事との両立を図りながら、趣味や遊びなどのプライベートも充実させようとする人が多いでしょう。
これは、勉強以外の時間も持たせようとした、ゆとり教育の影響があるといわれています。また、インターネットの普及によって、分からないことがあればすぐに検索できる環境で育ったため、仕事にも効率性を求めるのが特徴です。
無駄のない合理的な方法を好み、非効率的なやり方には疑問を抱きやすいでしょう。
■ITリテラシーが高い傾向にある
ゆとり世代は、『デジタルネイティブ』とも呼ばれており、高いITリテラシーを持っていることが特徴です。幼少期からインターネットやパソコン、スマホに囲まれて育ったため、これらのデジタルデバイスを使いこなす能力に長けています。
オンラインでの情報収集が得意で、PCを用いた基本的な事務処理能力も備えている人が多いでしょう。この特徴は、企業にとっては大きな強みとなります。新しい社内システムにもすぐになじみ、デジタル化が進む現代社会に柔軟に対応できるからです。
また、コミュニケーションツールの選択肢も広く、チャットやメールを活用してスムーズな情報共有を行えます。
■転職に対する抵抗感が低い
転職に対する抵抗感が低いことも、ゆとり世代の特徴の一つです。これは、不安定な経済状況下で育ち、終身雇用の概念が薄れていく時代を経験したことが背景にあります。
そのため、一つの企業に長く勤めるよりも、自分の価値観やライフスタイルに合った職場を求めて、転職を選択する人が多いでしょう。
仕事の内容が自分の能力に合っていなかったり、プライベートの時間が削られてしまったりなど、現在の職場に不満を抱けばためらいなく転職を考える傾向が強いようです。
■ストレスへの耐性が低い
ゆとり世代には、ストレスへの耐性が低いという特徴もあります。これは、個性尊重型の教育を受けたことが影響しているといわれています。
周りと競争せず、また褒めることを重視した教育を受けてきたため、叱責・厳しい指導に対処する経験が少ないことが理由です。職場では、上司からの指摘や業務上のプレッシャーに、強いストレスを感じやすいでしょう。
特に『つらいことがあっても頑張って乗り切る』といった精神論のもとで働いてきた人にとっては、世代特有のストレス耐性の低さをより強く感じてしまうかもしれません。
しかし、ストレスに対処できなくなれば、メンタル不調による休職・離職へとつながるケースもあるので注意が必要です。
ゆとり世代と円滑に仕事をするための注意点
世代を問わず、より良い職場環境をつくるためには、相手の特徴を理解して適切なアプローチをすることが大切です。ここでは、ゆとり世代と円滑に仕事をする上での注意点について解説します。
■プライベートに立ち入り過ぎない
コミュニケーションを取る際は、プライベートな話題に踏み込み過ぎないことが重要です。ゆとり世代は、仕事とプライベートを明確に分ける傾向があり、職場での過度な親密さを好まない場合があります。
例えば、飲み会への参加を強要したり、休日の予定を詳しく聞いたりすることは避けましょう。代わりに、業務時間内でのコミュニケーションを充実させ、仕事の意義や価値を伝えることが効果的です。
ただし、個人差もあるため、相手の反応を見ながら適切な距離感を保つことがポイントです。親睦を深めたいときは、ランチなどのカジュアルな場でのコミュニケーションから始めてみるのもよいでしょう。
■相手の価値観を尊重する
相手の価値観や働き方に対する考え方を、尊重する姿勢が重要です。ゆとり世代は、個性を重視した教育を受けており、異なる価値観・文化があって当たり前という考え方を持つ傾向にあります。
職場においても、自分の意見・考えを尊重してほしいという思いを持つことが少なくありません。例えば、飲み会などに参加するのは当たり前という社風でも、プライベートを優先させたいと思えば断ることもあるでしょう。
そのような考えを頭から否定するのではなく、相手の気持ちに配慮しつつ妥協点を探すことが大切です。
■ミスを叱らずに改善策を一緒に考える
仕事上でミスを犯したときは、叱るのではなく、改善策を一緒に考えるアプローチが効果的です。ゆとり世代は、叱られることへの耐性が低い傾向にあるため、ミスに対して感情的に注意してしまうと逆効果になる可能性があります。
代わりに、『なぜミスが起きたのか』『どう改善できるか』を冷静に分析し、共に解決策を見いだすプロセスを大切にしましょう。これは、単なる甘やかしではありません。自ら考え、問題解決する力を養う重要な機会にもつながります。