【AJの読み】日本中にある未利用資源からかおりを抽出して地域活性化につなげる
現在は北海道のトドマツが主体だが、全国の森林で放置されている未利用資源の探索も進めており、奥平氏をはじめ日本かおり研究所ではVMSDの仕組みがわかる簡易な抽出装置を使って、クリアフォレストの技術と抽出されるかおりが体験できるデモンストレーション各地で行っている。
森林の割合が約8割と全国で2番目に高い岐阜県の飛騨古川で行われたイベントでは、「飛騨五木」と呼ばれるスギ、ヒノキ、クリ、ケヤキ、ヒメコマツの5種類の木を使ったデモを紹介。
VMSDはマイクロ波を減圧して蒸留し空気浄化成分を抽出する装置のため、デモ用の小型装置ではマイクロ波を発生させる電子レンジを使用。沸点を低くするために、空気を抜いて真空に近い状態にする工夫も施している。
真空に近い状態にすることで、沸点を50℃以下と通常の水蒸気蒸留の半分程度の温度で蒸留することができ、高い温度をかけると壊れてしまう成分もVMSDではしっかりと抽出されるのでフレッシュなかおりに。また、植物に含まれている水分だけを抽出するため、芳香蒸留水のかおりも強く感じる。
VMSDは枝葉だけでなく、花や果物、お茶などからもかおりを抽出することが可能とのこと。デモでは宇治茶、いちご、ホップ、ウイスキー樽から抽出したかおりも披露された。
「不要なもの、廃棄してしまうものからかおりを抽出することが事業の根幹なので、観光シーズンが終わり枯れてしまった富良野のラベンダー畑を見て、まだかおりは抽出できるのではないかと思ったこともあります。
飛騨古川のデモで展示したいちごのかおりは、伊豆のお菓子屋さんがいちご大福を製造する際に取ってしまう、いちごのへた部分を使って抽出してみました。機械加工だと、へただけでなくざっくりと果実の上部も切ってしまうのでもったいないなと思ったんです。
枝葉や間伐材はもちろん、ジュースの搾りかすとか、落果したり傷んだりして売り物にならない果物からもかおりを抽出できますので、ゆくゆくは日本中にある未利用資源を使って現地でかおりを抽出して、地域活性化や自社製品への活用を目指していきたいと考えています」(奥平氏)
取材・文/阿部純子