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地域活性化に貢献!エステーが「クリアフォレスト」の技術でウェルネス市場に参入

2024.11.13

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

エステー」は、今年5月に発表したエステーグループの中期経営計画「SMILE 2027」において、“10年後のありたい姿”として、日用品メーカーからウェルネス・カンパニーへの転換を掲げ、拡大するウェルネス市場への参入を発表した。

かおりを軸としたウェルネス市場に参入したエステーの取り組み

ウェルネス事業は「地方創生ビジネス」「かおりブランディングビジネス」「かおりソリューションビジネス」の三本柱で構成される。中核を担うのが今年4月に新設されたかおり事業開発部で、エステーグループの日本かおり研究所CODE Meee(コードミー)エステーPROと共に事業を進めていく。

林地未利用資源から、かおりを抽出する「クリアフォレスト」技術を活用したウェルネス事業を推進する、日本かおり研究所 代表取締役社長 奥平壮臨氏(下記画像右)、エステー株式会社 シニアエグゼクティブスタッフ かおり事業開発部の橋本亮氏(同左)に、エステーのかおり×ウェルネス事業について話を伺った。

「ウェルネス事業を拡大していく中で、重要な立ち位置にあるのがかおり事業開発部です。立ち上げ当初は少人数で始まりましたが、現在は増員されてエステーとしても力を入れている部署になっています。

かおりによる地域経済活性化を目指すのが地方創生ビジネスで、アロマの地産地消をコアとした創生事業、樹木水(後述)を活用した温浴ウェルネス事業があります。

かおりブランディングはAI創香を活用したブランディング事業です。昨年子会社となったコードミーは、かおりとITを組み合わせたアロマ空間デザイン事業を手掛ける会社で、コードミーを開発のエンジンとして、企業やスポーツチームなどのブランディングにつながるような、かおり創りを行っていきます。

かおりソリューションビジネスは、かおりによる空間環境改善を目指すものです。ホテルや空港などを対象としたかおりの空間ビジネスに加えて、企業のバックオフィスにおける従業員のストレス軽減やリラックス促進など、かおりで健康経営をサポートするビジネスを行います。こちらについては、今年の4~9月に森ビルホスピタリティコーポレーションの協力を得て、『かおりによる健康経営推進協働実験』を実施しました」(橋本氏)

地方創生、かおりビジネス、アップサイクルを掛け合わせた「クリアフォレスト」

エステーといえば防虫剤や除湿剤のイメージが強かったが、現在、売り上げの半数近くは「消臭力」などのエアケア商品が占めているという。

「空気事業ビジネスは今後も拡大すると見越し、2004年に当時社長だった鈴木喬特別顧問の提案でかおりの基礎研究を行う『日本かおり研究所』を立ち上げました。

大きな研究テーマとして“森の空気はなぜきれいなのか?”ということに着目して、森林の専門機関である『森林研究・整備機構』にご相談し、2007年から共同研究を始めました。

日本で一番空気がきれいな森がわかれば、その森は空気をきれいにする成分をたくさん出す木が生息しているだろうとざっくりとした仮説を立てて、約2年かけて日本全国66ヵ所の森の空気を調査しました。

調査研究を進めていくと、森林内の二酸化窒素濃度は周辺地域と比べて低いとわかり、各地の樹木のかおり成分(精油)による二酸化窒素除去試験を行ったところ、北海道の阿寒湖近くの森にあるトドマツ葉油の空気浄化能力が圧倒的に高いことがわかりました。

トドマツの浄化成分を分析した結果、空気をきれいにする成分が多く含まれており、中でもモノテルペン類が有効だとわかりました。この物質をエアケア商品に入れたら空気の浄化能力が高まると考え、トドマツから精油を抽出して商品に活用することにしました。

空気浄化成分はトドマツの葉に含まれていますが、間伐や主伐の際に発生する枝葉は未利用資源として森林に放置されたままになっていました。そこで国有林の管理を主に行っている釧路市の『北都』という林業会社とパートナーシップを組み、間伐の際に発生する枝葉を集めてプラントまで運んでもらう林地残材の回収システムを確立しました。

今後も日本全国の林地で捨てられている未利用資源を探し、クリアフォレストの技術を活用してかおりを抽出して社会実装の実現を進めていきます」(奥平氏)

枝葉から効率よく空気浄化成分を抽出するための装置が、エステーが独自開発した「減圧マイクロ波水蒸気蒸留装置(VMSD)」。VMSDで精油と樹木水を抽出して商品化し、残った粉体は牛舎の敷料として販売するゼロエミッションを確立したことで、ゴミの出ない工場として「令和元年度 北海道ゼロ・エミ大賞」を受賞している。

かおりを抽出するために使われる一般的な水蒸気蒸留法に比べて、非常に効率が良いのがVMSDの特長で、ボイラー設備も不要であるため環境負荷も低く、短時間での抽出が可能。VMSDは外部から水を加えずに、植物に含まれている水分を水蒸気に変えて水蒸気蒸留をさせる仕組みであるため、香気成分も多い。

抽出した成分はさまざまな商品に採用され、トドマツの樹木水を活用したホテル専用の消臭ミスト「Air Forest Refresh Mist」は全国約14万室のホテル客室に採用され、現在はECサイト一般向けにも販売されている。

抽出後に残った粉体もペット商品「エステーペット 実感消臭」の消臭原料として使われ、エアコンフィルター、消臭ゴミ袋など他社の商品にも採用されており、B2B、B2Cで商品化されている。

「北都の抽出工場と、精油・樹木水の抽出原料がエコサートのCOSMOSオーガニック認証を受けました。森林抽出物のエコサートCOSMOSオーガニック認証は前例がほとんどないそうです。

長谷工グループと一緒に取り組んでいるのがバーチャル森林浴です。マンションの共有部分に自然空間の映像を投影、トドマツのかおりで演出する没入体験により、リラックス効果の検証を行っています。

『クリアフォレスト』は、森林の整備で発生する未利用の枝葉が原料なので、アップサイクル事業であることも大きな特色です。それに加えて地域活性化を軸にしており、釧路市の抽出工場では、高齢やケガなどの理由で森での作業ができなくなった林業に携わる方を中心に仕事をお願いすることで、地域経済に還元できる仕組みにしています。

かおり×地方創生を目指すウェルネス事業は、日本中の森の未利用資源から良いかおりを抽出して地域ならではのかおりを創りたいと考えています。地域のホテルで消臭スプレーとして利用したり、抽出したての樹木水を使って地元のサウナでロウリュに活用したりと、地域活性にも貢献できればと考えています」(奥平氏)

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