見どころ【6】 国民的アーティストグループ期間限定再結成!?『挂甲武人埴輪』
今回の特別展のメインは群馬県太田市で出土した東京国立博物館所蔵の挂甲武人埴輪。実は彼には同じ工房で作られたのではないかと考えられる、とてもそっくりな4人の兄弟が存在するのをご存じだろうか。
現在はそれぞれ別々な道へ、西は奈良から一番遠くはアメリカで活躍中の彼らが国宝指定50周年を機に史上初、ここ東京国立博物館に大集結する……!これは古墳・埴輪オタクにとって見過ごせない激エモな展開で、何はともあれ馳せ参じずにはいられない、大注目な現場なんです!
期待の展示は第2会場。薄暗い空間でスポットライトに照らされた5体の挂甲武人埴輪が一定の距離を置き、舞台の迫り上がりのようなガラスケースの中に立つ凜々しい姿は、まるで5人のアーティストグループ!今にもLIVEが始まりそうな、思わず息をのむ圧倒的存在感と高揚感で時が止まる。
が、そうはしていられない。すかさず埴輪のそばに駆け寄って正面、横、後ろと全方位ぐるぐる舐めまわさんばかりに観察してからの、カメラでパシャ・パシャ・パシャ!
そんなぼくがオススメするのは……もちろん三者三様、そっくりでも5体それぞれに微妙な違いがあって優劣や順位をつけることなんて絶対にできないけど、あえて特に見ておかねばならないメンバーを紹介するなら、左から2番目。アメリカ・シアトル美術館所蔵の挂甲武人埴輪です。
このたび特別展のために63年ぶりに日本へ里帰りしてくれた彼に、次はいつ会えるだろうか。昨今の円安で海外旅行もままならないなか、国内で拝観できる大チャンスなのでぜひこの機会をお見逃しなく!
見どころ【7】 顔色がヤバい!『国宝 挂甲武人埴輪の彩色復元』
実は東京国立博物館所蔵の挂甲武人埴輪には彩色が残存している。ベンガラの赤と白土の白、そして白土にマンガンを混ぜたと考えられる灰色の3色らしいのだが、実物を何度観察してもよくわからない。残念だなぁ……と思ったら、彩色復元された埴輪がいた!
なんと今回、2017年から2019年にかけて行われた解体修理に伴う調査研究の結果を基に彩色復元した実物大の挂甲武人埴輪が誕生していたのです。
こうして見ると今の姿と古墳時代当時の姿では全然印象が違います。こう言っちゃ失礼だけど全体の色合いが結婚式の新郎みたいな、しかも恥ずかしいのか酔っ払っているのか、顔がエグいほどに真っ赤じゃないか!
個人的な昔話で恐縮なんじゃが、小学校の卒業式で男子のほとんどが黒のスーツを着用するなか1人だけ淡い灰色のスーツを着てきてしまい、みんなから口々に「新郎」と呼ばれた同級生がおりましてな……そんな出来事をふと思い出させてくれた彩色復元挂甲武人埴輪。きっとこの埴輪だけでなく他の埴輪たちにも鮮やかな彩色が施されている可能性大なので、これからも要観察です!
見どころ【8】 ようこそ魅惑のハニランドへ、全国から精鋭形象埴輪大集合!
第1会場が古墳時代の概要や埴輪の起源と造形を紹介する展示だとすれば、第2会場の後半部はまさに埴輪の楽園ハニランド!全国各地から集まった様々な埴輪たちが並ぶ壮観な展示です。
思わずギョッとする両面顔やちょいオコ?な顔、ニッコリ笑顔などの表情を楽しんだり、服装や持ち物で職業を推理するも良し。家形埴輪をよく見ると家の中には何がある?
さらに進むと可愛い埴輪の大行列!子馬ちゃんと魚の埴輪を先頭に、界隈ではおなじみの人気キャラたちが自慢げに誇らしげに並んでいます。時代は今、キティちゃんに続いてハニィちゃんが来てるんじゃないか?おっと、横たわる筒状のアレも忘れないで。
そして何より嬉しいのは、普段ガラスケースの中で正面の姿しか見せてくれない子たちがかわいいおしりを見せてくれていること(言い方!)。ほんとに貴重な機会なので、ぜひいろんな角度から埴輪たちを観察してみてほしい。
見どころ【9】 大正時代に埴輪が大復活?!『武人埴輪模型』
特別展「はにわ」のエンディングを飾るのは武士埴輪? 武人埴輪模型って紹介されてるけど、何だか戦国時代みたいな甲冑姿で五月人形みたいだよ?
だがしかし、こちらはただの模型ではありません。明治時代の著名な彫刻家・吉田白嶺先生が大正元年に製作し、明治天皇陵に副葬された武人埴輪の模型なのだ!
なんせ約1500年ぶりの埴輪製作、試行錯誤しながら念のため多めに用意したのでしょう。完成したものの中から選りすぐって副葬し、残りは博物館へ。現在は東京国立博物館と奈良の天理参考館に所蔵されています。
キリッとした表情で並んだ3体。よく観察してみるとちょっとした違いがあるのをおわかりいただけるだろうか?
それにしても古墳時代のはにわ展のはずなのに、ラストがあえての大正時代。この疑問を解く鍵は東京国立近代美術館で開催中の企画展「ハニワと土偶の近代」にあり!
ちょっとネタバレになっちゃうが、この企画展では明治時代以降、人々がどのように埴輪や土偶を見つめ各自の解釈で日本古代の歴史を紐解いていたか、国家として埴輪に何を投影していたか貴重な書物や絵画・美術品とともに紹介しています。
今回ぼくは東京国立博物館の特別展「はにわ」を観覧する前に東京国立近代美術館で企画展「ハニワと土偶の近代」を拝観していたために、より格別な想いをもって大正時代の武人模型を見つめることができた。ぜひ2館セットでの観覧がおすすめです!
■東京国立近代博物館:ハニワと土偶の近代 公式サイト
見どころ【10】 高額出費も後悔ナシ!特設ミュージアムショップ
みんな大好きミュージアムショップ!今回の特別展でも会場となる2階で特設ショップがオープンしています。
SNSでも話題になった『すみっコぐらし』『はなかっぱ』『おーい!はに丸』のコラボに、フェリシモ『ミュージアム部』とのタイアップをはじめ、北海道を拠点に活動する『ドニワ部』や京都の『京東都』などなど各地の魅力的なミュージアムグッズが所狭しと並び、もちろん特別展オリジナルのグッズもございますが……なんせどれもすごい人気で、売り切れ続出。
開館時に山積みだった商品が午前中にはなくなって、閉館時には売り場が焼け野原状態なんてことも。ちなみに思うままに買い物できた人は懐が焼け野原だ!特に日曜日は配送会社の配達がお休みで商品が入荷しないんだとか。
よって、どうしても欲しいグッズがある人は、展示を観覧する前にショップでお買い物を済ませたほうが安心だし、まだ何を買うか決めてない人は、事前にSNSでどんな商品があるのかリサーチしておくことをおすすめします。実は公式HPに全ての販売商品が紹介されているわけではないのだ!
あと、図録購入はマストです。今回の図録はまるで埴輪のグラビア写真集みたいにオシャレな仕上がりなので、後日自宅でゆったり特別展の余韻に浸れます。図鑑並みの分厚さで重たいけど内容も重厚。展示についての詳しい解説もあるので価格に見合う価値ありです。
ちなみにここまで図録を推す理由……それは数年前に同じく東京国立博物館で開催されたJOMON展でうっかり図録を買ってもらい忘れ、さらに気づいたときにはすでに公式で売り切れ。ネットの中古本扱いでも定価の倍以上の値でしか手に入らなくなってしまうという、まさかの展開に悔し涙した自分の失敗から。
そう、素晴らしい特別展の図録はあっという間に売り切れて手が届かなくなるんです!!皆さんどうか、ぼくと同じ失敗をしませんように。
マル秘テク伝授! 特別展「はにわ」攻略の秘策とは?
話題沸騰の特別展「はにわ」も会期終了まで折り返し地点。同じ敷地内の東京国立博物館表慶館ではじまった「ハローキティ展」も相まって人が押し寄せ、入館前の待機列もエグい状態だとの情報だ。
そしてもちろん、会場内も特設ショップを含め大変な激混み状態です!今回は宮内庁所蔵品を除く全ての展示が写真撮影・SNS投稿可ということで、展示会場における人の流れの停滞具合もハンパなーい!!
そこで土日の2日間をかけ、2人がかりで収集し体得したマル秘テクをコラムを読んでくださった方に献上いたします。
- グッズ狙いは朝駆け必須!土日は8時目安で並ぶとほぼ入館と同時に入場できるかも。
- 荷物は特別展入場前に返金式ロッカーへ。2階の特設会場近くが便利です。
- 映り込みナシ撮影狙いは開館直後か閉館間際の40分間!特にメインの挂甲武人埴輪や動物埴輪の行列をベストタイミングで撮影されたい方は開館直後に第2会場へ直行です。そして閉館40分前ぐらいから第1会場が空いてくるので、今度は踊る埴輪等々のシャッターチャンスとなります。
- 混雑回避は夜間開館日を狙え!20時までゆっくり展示を楽しめる可能性大。
- おかげさまで思っていたより楽しくて滞在予定時間をかなりオーバーしてしまったとの声をたくさん見かけております! あくまでも個人の感想ではありますが、念のため小腹が空いたとき用に、少しの食料とスマホなどの撮影器具の予備バッテリー、そして現金も多少多めにご準備されると安心です。特設ショップではクレジットカードも使えますが、先日は全国的に通信不具合が起きた事象があったことをご報告いたします。
ぼくなりに思う存分堪能した埴輪の世界。まずはじっくりキャプションを読みつつ展示をじっくり1周。2周目は軽く写真も撮りつつ全体の雰囲気を体感して、3周目はひたすら撮影しまくり。そして4周目は埴輪たちとアイコンタクトを取りつつ存分に別れを惜しんだ。
そんなスペシャルな土日2日間を特別展「はにわ」で過ごしたのだが、展示会場では大勢の観覧者の皆様と一緒に埴輪を愛で、「かわいい」「エモい」「埴輪ってこんなに種類があったんだね、知らなかった」といった感嘆の声をたくさん聞くことができた。
お気に入りのマスコットと埴輪との「スマホぬい撮り」を楽しむお姉さん、ごっついカメラで埴輪を接写するあの方は、もしかして考古学研究者?古墳仲間も見かけたけど、きっと大好きな埴輪に会いに来たであろう貴重な時間を奪ってしまいたくなくて、あえてスルーしたよ。
車椅子やベビーカーの家族連れもけっこういらっしゃったし、障害のあるお子さんたちのグループだろうか?もしデイサービスのレクの行き先で博物館を選んでくれていたのなら、こんなに嬉しいことはない。多様性を認め合う博物館鑑賞をもっともっとスタンダードに、会場ではお互いに譲り合う・優しい心で待つ・そっと見守るといった思いやりが大切ですね。
特別展「はにわ」を通じて皆様の博物館体験が素敵な思い出になりますように!
文/古墳王子
愛知県在住の現役高校生。小学4年生で古墳の魅力に目覚め、南は鹿児島から北は北海道まで延べ3000基以上の古墳を巡りSNSで情報発信中。古墳だけでなく縄文や弥生時代にも目を向け、日々各地の博物館に出没し先史古代の珍しい逸品を探しています。
X(旧Twitter):https://twitter.com/kotetu2019
Instagram:https://instagram.com/kofun_ouji/
■挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」詳細
会期:2024年10月16日(水)~12月8日(日)
会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間:9時30分~17時00分
※毎週金・土曜日は20時00分まで開館
※入館は閉館の30分前まで
観覧料金:一般 2,100円(一般前売1,900円)、大学生 1,300円(大学生前売1,100円)、高校生 900円(高校生前売700円)
公式サイト:https://haniwa820.exhibit.jp/
公式X:https://x.com/haniwa820_ten
公式Instagram:https://www.instagram.com/haniwa820_ten/
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