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【ヒット商品開発秘話】累計出荷数500万本を突破したライオン「クリニカPROハブラシ ラバーヘッド」

2024.11.08

■連載/ヒット商品開発秘話

 歯ブラシはナイロンや飽和ポリエステル樹脂(PBT)でできた人工毛をヘッド部に無数に植え込んだ植毛ブラシが一般的だが、いまヘッド部がラバー素材(ポリウレタン)でできた歯ブラシが売れている。ライオンが2023年9月に発売した『クリニカPROハブラシ ラバーヘッド』(以下、ラバーヘッド)のことである。

『ラバーヘッド』は従来の植毛歯ブラシとは歯垢の落とし方が異なるのが特徴。従来の歯ブラシが毛先の束で歯面の汚れをかき取るのに対し、毛先がしなって歯面に密着し歯垢を拭い取る。

 ヘッドの大きさと毛の当たり心地の組み合わせで全4種(超コンパクト・やわらかめ/ふつう、コンパクト・やわらかめ/ふつう)をラインアップ。これまでの累計出荷数は500万本を超えている。

2023年9月に発売された『クリニカPROハブラシ ラバーヘッド』。ヘッドの大きさと毛の当たり心地から全4種(左から超コンパクト・やわらかめ/超コンパクト・ふつう/コンパクト・やわらかめ/コンパクト・ふつう)をラインアップする。ブラシ部の素材を進化させ従来の歯ブラシとは一線を画したデザインが高く評価されたことなどから、2024年度のグッドデザイン賞を受賞した

どんなみがき方をしても達成感を得るために

「毎日の歯みがきで『うまくできた!』『やりきった!』と思う瞬間があるのだろうか? という疑問から開発は始まりました」

『ラバーヘッド』の開発経緯を聞くとこのように答えたのは、ヘルス&ホームケア事業本部オーラルケア事業部で『クリニカ』のブランドマネジャーを務める今村健一さん。きちんと3分みがくなど、うまくみがけたと思える基準は人それぞれだが、何らかの基準があったとしても歯みがきで達成感が得られているのか? ということが長年の疑問だったという。

「歯みがきは毎日の生活習慣です。お客様が歯をみがいた後に『うまくできた!』『やりきった!』とこれまでより汚れが落とせて、達成感が得られる歯ブラシを模索しました」

 このように思いを明かす今村さん。汚れが落としやすく歯をツルツルにできるようにするため、同社は毛の素材に着目した。実用化に一定のメドが立ちつつあったラバー素材を使った歯ブラシづくりにチャレンジすることにした。

高い歯垢除去力がもたらすツルツル実感

ラバー素材のヘッドと同社の従来の歯ブラシを比較すると、ラバー素材のヘッドは歯面や咬合面(こうごうめん)などの歯垢除去力が高く歯がツルツルになるほか、みがいている時の心地良さ、毛の当たり心地がいいという。研究開発本部グローバル開発センターの青木優子さんはラバー素材の優位性をこのように説明する。

「これまでの歯ブラシよりも歯をツルツルにみがけた達成感と、みがいている時の心地良い快適さが従来の歯ブラシより圧倒的に高いです」

従来の植毛歯ブラシとの汚れ除去力を実験で比較。『クリニカPROハブラシ ラバーヘッド』のほうが圧倒的に高い汚れ除去力を発揮することがわかった(YouTubeライオン公式チャンネル「クリニカPROハブラシ ラバーヘッド 汚れ除去力実験映像/12秒/ライオン」より)

 高い歯垢除去力がもたらすツルツル実感、当たり心地の良さは、ラバーの硬さに加え毛の長さ、形状や配置などヘッド部の設計によって実現した。ラバーの硬さは、硬すぎず柔らかすぎない最適な硬度を繰り返し試作検証して決めた。毛の長さに至っては1ミリ単位で検証した。

『クリニカ』ブランドから発売されている『クリニカアドバンテージ ハブラシ』(以下、クリニカアドバンテージ)に採用されているコンパクトで極薄のヘッド部も踏襲した。ただ、ラバー素材を使うことから製法が変わるためヘッドのサイズがやや大きくなってしまう。大きくなることで奥歯への届きやすさやみがきやすさが低下しないように形状やサイズを決めるのが難航し、0.1ミリ単位でサイズを検討したほど。ヘッドの形状は先端を極薄にし、奥歯の奥まで歯ブラシを入れやすくして隅々までみがけるように工夫した。

上から比較した『クリニカPROハブラシ ラバーヘッド』と『クリニカアドバンテージ ハブラシ』のヘッド部(サイズは両者コンパクト)。左のクリニカアドバンテージと比較すると形状が若干異なるほか、ラバーヘッドほうがやや横幅が広いことがわかる

横から比較した『クリニカPROハブラシ ラバーヘッド』と『クリニカアドバンテージ ハブラシ』のヘッド部(サイズは両者コンパクト)。奥のクリニカアドバンテージのヘッドが極めて薄く平らなのに対しラバーヘッドはそれよりやや厚いほか、中ほどから先端にかけて徐々に薄くなっているのがわかる

 ラバー素材の毛はヘッドから直接、1本ずつ生えている。高い歯垢除去力を実現しツルツル実感が得られ、当たり心地が良くなる毛の本数と毛の配置にこだわった。青木さんは次のように話す。

「毛の本数は従来の歯ブラシより少ないのですが、毛が歯面に密着しやすいというラバーの特性、毛の硬さや配置、ヘッドの形状により、従来の歯ブラシよりも高い歯垢除去力によるツルツル実感と当たり心地の良さを実現しました」

歯垢の落とし方の比較。右の植毛歯ブラシ(同社従来品)は毛先の束で歯面の汚れをかき取るのに対し、ラバーヘッドはラバー毛が毛全体で歯面に密着し汚れを拭い取る

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