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日本における大規模メモリ半導体工場の経済効果は10年で860億ドルに到達する見込み

2024.11.07

経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、日本の半導体産業の課題や将来の展望を考察したレポート「日本の半導体産業の再興:技術革新を通じた『経済産業政策の新機軸』の加速」を発表。本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。

生成AIの需要増を背景に2024年~2027年DRAM出荷量の年平均成長率は21%

半導体メモリには、主にデータの保存に使用されるNAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)と、演算処理負荷の高いデバイスの「作業用メモリ」として機能するDRAMの2つの装置が含まれる。

生成AIへの極めて強い需要を背景に、AI関連サーバーの出荷台数は2023年から2027年にかけて6倍に増加すると予測されている。これと同時期の2024年から2027年の間、DRAM出荷量の年平均成長率は21%に達すると見込まれており、この成長は主に生成AIなどに使用される次世代DRAMである高帯域メモリ(HBM)が牽引すると予想されている(図表1)。

■日本の次世代メモリ分野における2つの強み、知的財産と最先端技術の活用

今回のレポートでは、次世代メモリ分野における日本の優位性について、2つの点が指摘されている。

1点目は、日本がメモリ関連の素材レベルで多くの知的財産を生み出している数少ない国であることだ(図表2)。

2点目は、先進的なメモリチップの製造において、最先端技術である「EUV(極端紫外線)リソグラフィー[注1]」の活用が見込まれる国である点だ。
[注1] 半導体製造において極端紫外線(EUV)を使用して回路パターンを形成する技術。これにより従来では難しかった微細なパターンを高精度で描けるため、チップの性能向上に貢献。

これらの優位性は、日本が従来強みを持つ半導体材料や製造装置のエコシステムと結びつくことで、次世代DRAM開発の成功を後押しすると分析している。

■日本における大規模メモリ工場の経済効果は10年で860億ドル

日本の半導体産業では近年、政府の経済政策である「経済産業政策の新機軸」に基づくさまざまな投資が行われ、特にロジック半導体分野を中心に活性化が進んでいる。

このような状況下で、次世代DRAM産業の育成は、日本の半導体産業のさらなる活性化を促し、「経済産業政策の新機軸」の実現を加速させると期待されている。

BCGの分析によると、大規模なメモリ工場が10年間で創出する雇用・賃金、税収、材料供給者などの経済効果は最大860億ドルに達する可能性があり、日本は大きな経済的恩恵を享受すると見込まれる(図表3)。

さらに、次世代DRAM産業の発展は、脱炭素の推進や供給網の強靭化、生産性向上といった重要な社会課題への対応にも貢献できると考えられている。

日本の半導体産業再興のための成功の条件

レポートでは、今後、日本が「経済産業政策の新機軸」の方向性に沿って半導体産業の発展を加速させていくために、以下の成功に必要な条件を満たすことが重要であると解説している。

1. 単なる市場の参加者ではなく、技術的なリーダーを目指す
2. 民間投資の呼び込み
3. 国内でのイノベーション
4. 長期的な視点で政策を策定する
5. 国内人材の育成を優先する

レポートの共著者であるBCG産業財・自動車グループの日本共同リーダー・小柴優一氏は次のようにコメントしている。

「半導体産業への世界的な投資という長期的なトレンドとAIの進展を背景に、次世代DRAMの需要は急速に高まっています。この中で日本は、先進的なメモリへの投資を含め、半導体分野の成長を目指すにあたり、多くの強みを活用することが可能です。

正しい目標設定と大規模な投資、そして慎重に策定された政策を組み合わせることで、日本は『経済産業政策の新機軸』の方向性に沿って、半導体産業をさらに力強く発展させていけると考えています」

関連情報
https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2024/revival-of-japans-semiconductor-industry

構成/清水眞希

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