企業のコンプライアンス意識を問われる「粉飾決算」の発覚が相次いで発生
2023年は40種類以上の偽の決算書を作成するなど、“世紀の大粉飾”と言われた堀正工業の破産事件が注目を集めた。2024年も取引先や金融機関を欺き、企業のコンプライアンス意識が問われる「粉飾決算」の発覚が相次いで発生している。
そこで帝国データバンクでは、売り上げの架空計上や融通手形などの「粉飾」をはじめ、法律違反に伴い行政処分を受ける等の「業法違反」といったコンプライアンス違反が取材により判明した企業の倒産を「コンプライアンス違反倒産(以下、コンプラ違反倒産)」と定義。
本調査では、特に件数の多い「粉飾」を取り上げ、2024年1月~9月の「粉飾」倒産(法的整理のみ、負債1000万円以上)について分析を行なった。
本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。なお同様の調査は2020年1月31日実施に続き、今回で2回目となる。
■1~9月として集計開始の2016年以降で最多、2024年通年でも年間最多を更新する可能性
2024年1月~9月の「粉飾」倒産は74件となった。前年同期と比べると16件(前年同期比27.6%増)多く、3年連続で前年同期を上回った。1月~9月として集計開始の2016年以降で最多となり、2024年通年でも年間最多件数(2019年・84件)を更新する可能性が高い。
74件を業種別(大分類)にみると、「建設業」が18件(構成比24.3%)で最も多く、「卸売業」が16件(同21.6%)、「製造業」が14件(同18.9%)と続いた。
■負債「50億円以上」の倒産が全体の約10%
業歴別にみると、最も多いのは「30年以上」で37件(構成比50.0%)となった。次いで「20年~30年未満」が19件(同25.7%)と続き、業歴20年以上の企業が75.7%を占めた。
また、負債規模別では、「1億~5億円未満」が21件(構成比28.4%)で最も多かった。続いて、「5億~10億円未満」が20件(構成比27.0%)、「10億~50億円未満」が19件(同25.7%)となった。負債50億円以上の倒産は7件(同9.5%)発生し、負債規模の大型化が相次いだ。
粉飾決算の発覚は、2020年以降のゼロゼロ融資等の各種支援策の効果もあり、表面化しづらい状況が続いていた。しかし、アフターコロナの局面では金融機関に借入金の返済猶予や追加融資を申し入れた際に資産査定で発覚する事例が相次いでいる。
金融機関の信用リスク管理体制に懸念を抱かせる案件が続くなか、金融庁は個別債権(融資先)の資産査定も辞さない姿勢を示した。各金融機関がこれまで以上に企業を見る目が厳しくなるのは明らかだろう。
さらに今後、金利が上昇する局面に入れば、借り換えの機会が増え、財務内容を精査するなかで不正が発覚して倒産に至るケースが増加傾向で推移しそうだ。
関連情報
https://www.tdb.co.jp/index.html
構成/清水眞希