インフレや原材料・エネルギーコストの上昇に伴い、「価格交渉」が企業にとって重要な焦点となっている。しかし、企業の間で価格交渉の理解と実施にはまだ大きなギャップがあるようだ。
Green(グリーン)とDigital(デジタル)を活用した中小企業の変革を目指すフォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業経営における物価高対策と価格交渉促進の実態について探るため、中小企業の経営者851人に「中小企業経営に関する実態調査」を実施した。
物価高による影響、約7割の企業が「マイナス」と回答、経営環境の厳しさが浮き彫りに
Q1.円安や物価高による貴社の影響をそれぞれ教えてください。
円安の影響について、「マイナスの影響を受けている」(23.7%)「ややマイナスの影響を受けている」(26.2%)と合わせて、49.9%がマイナスの影響を受けていることが判明。
一方、「影響は受けていない」は44.7%、「ややプラスの影響をうけている」(3.6%)「ややプラスの影響をうけている」(1.8%)は合わせて5.4%となった。
物価高の影響については、「マイナスの影響を受けている」(33.4%)「ややマイナスの影響を受けている」(43.2%)と合わせて、76.6%がマイナスの影響を受けたという回答結果に。
「影響は受けていない」が17.9%、「ややプラスの影響をうけている」(3.6%) 「ややプラスの影響をうけている」(1.9%)と合わせて5.5%でプラスの影響を受けたと回答し、約7割の企業が物価高からマイナスの影響を受けていることが明らかになった。
これらの結果から、円安と物価高により多くの企業がマイナスの影響を受けていることがわかる。
Q2.貴社は物価高による影響で資金需要が発生しましたか。
物価高の影響による資金需要については、資金需要が「発生した」と回答した企業が18.1%、「発生していない」と回答した企業は81.9%となった。約5社に1社の中小企業において、物価高の影響で資金需要が増加していることが明らかに。
物価高対策を実施している企業は約3割、約8割が物価高対策で「価格転嫁」を実施
Q3.貴社は物価高への対策を実施していますか。
物価高への対策を実施しているかについての設問では、「実施している」と回答した企業が34.2%、続いて「実施していないが検討している」が32.0%、「実施しておらず検討もしていない」が33.8%となった。
Q4.貴社での物価高に対する具体的な対策を教えてください。
物価高に対する具体的な対策について、「価格転嫁」を行っている企業が86.3%と最も多く、続いて「固定費の見直し」が38.8%、「生産性の向上」が26.8%で続く。物価高の対策を実施している中手企業の8割以上が「価格転嫁」を行っていることが分かる。
Q5.物価高への対策による貴社での効果を教えてください。
物価高対策による効果について、「十分に効果を感じている」(7.9%)「やや効果を感じている」(53.6%)と合わせて61.5%が効果を感じているという結果に。
また、「あまり効果を感じていない」は33.0%、「全く効果を感じていない」は5.5%となり、合わせて38.5%の人が効果を感じていないことが分かった。
これらの結果から、物価高への対策を実施している企業は34.2%で、そのうち61.5%が効果を実感しているようだ。中小企業への物価高対策実施の促進と、より効果を実感できる対策が必要であると推測される。
約4割の企業が価格転嫁に成功している一方、 約2割の企業は交渉すらできず
Q6.貴社での価格転嫁に対する状況を教えてください。
価格転嫁に対する状況について、「取引先(発注側事業者)に協議を申し入れることができていない」と回答した企業が17.0%、「取引先(発注側事業者)に協議を申し入れたが、協議に応じてもらえなかった」が5.6%。
「取引先(発注側事業者)に協議を申し入れ、協議に応じてもらった・もらっている」が45.7%、そして「取引先(発注側事業者)に協議を申し入れる必要はないその他無回答」は31.7%という結果に。
Q7.今後貴社では商品やサービスの値上げをする予定はありますか。
今後の商品やサービスの値上げをする予定に、「ある」と回答した企業が46.7%、続いて「ない」が31.7%、「既に直近で値上げを行った」が21.6%という結果となった。
Q8. 「価格交渉促進月間」について知っていますか。
「価格交渉促進月間」についての認知度については、「知っており、他の人に説明できる」と回答した企業が2.2%、「知っているが、説明できるほどではない」が9.5%、「聞いたことはあるが、よく知らない」が22.6%、そして「知らない」が65.7%となっている。
政府が定めている「価格交渉促進月間」について認知度が低く、わずか2.2%の中小企業でしか理解が進んでいない現状が浮き彫りに。
Q9.政府の物価高に対する対応について、どの程度満足していますか。
政府の物価高に対する対応についての満足度についての調査結果では、「十分に満足している」と回答した企業が0.5%、続いて「やや満足している」が5.2%、「あまり満足していない」が42.2%、そして「全く満足していない」が52.2%となった。
円安や物価高からマイナスの影響を受けている中小企業が多い中、Q3では物価高対策を実施している企業が少ないことが判明。
一方でQ4の結果では、実施している企業の中では「価格転嫁」を実施している企業が多いこともあきらかに。この結果から、価格転嫁を実施したいができていない、または、価格交渉がしきれてないという中小企業の現状を推測される。
また、Q8,Q9の結果では「価格交渉促進月間」についての認知度が低く、中小企業への価格交渉の促進に課題がありそうだ。
調査概要
調査主体:フォーバル GDXリサーチ研究所
調査期間:2024年7月8日~2024年8月10日
調査対象者:全国の中小企業経営者
調査方法:ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
有効回答数:851
※フォーバル GDXリサーチ研究所調べ
関連情報
https://gdx-research.com/
構成/Ara