2024年夏に起きた「令和の米騒動」の余波が米菓製造業界にもおよんでいるという。そこで帝国データバンクでは、「米菓製造業」の倒産発生状況について調査・分析を実施・結果をグラフにまとめて発表した。本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
原料国産米の価格高騰に加え、安価な輸入米も円安で価格が上昇
全国的なコメ不足と価格高騰の影響が、せんべいなどコメを原料とする菓子にも及んできたようだ。
実際、コメを原料にせんべいやあられ、おかきなどを製造する米菓製造業の倒産(負債1000万円以上、法的整理)や休廃業解散は9月までに計11件発生。これは2023年通年の件数(5件)を上回る増加ペースで、過去最多となる可能性がある。
米菓メーカーでは、米菓需要の低迷と原料となる国産米の価格高騰によるコストアップの狭間で厳しい経営環境が続いている。総務省の調査によれば、せんべい(100g)の小売価格は2024年平均で149円・2020年比で2割超上昇し過去10年で最高値を記録した。
大手米菓メーカーを中心に、製造コストの上昇による値上げの実施が影響した。一方で、せんべいへの家計支出は2020年比17%増にとどまり、購入枚数も推計で家計当たり月2枚分(同7%)減少。近年はお中元・お歳暮などの需要減が続いたことに加え、家計の節約志向で買い控えや他ジャンルの菓子への需要が流出するといった影響も大きかったとみられる。
足元では原料となる国産米の価格高騰に加え、安価な米国産など輸入米も円安で価格が上昇、生産現場における人手不足も重なって製造コストの上昇が続いており、「値上げしなければ経営が成り立たない」状況が続いている。
今後も、原料米の価格高騰などコスト高の局面が続くとみられるものの、中小米菓メーカーでは消費量拡大の糸口がみえないなかでの単純な値上げは難しい。
これまでの「硬い」食感のせんべいから、「ふんわり」とした米菓の開発でファミリー層の支持を取り込むなど、消費者の生活スタイルに合わせた商品の提供などが、今後の米菓メーカーの成否を左右する可能性がある。
調査概要
集計期間/2024年9月30日まで
集計対象/負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関/株式会社帝国データバンク
関連情報
https://www.tdb.co.jp/index.html
構成/清水眞希