部下から「異動したい」と言われたとき、ショックを受ける管理職も多いのではないでしょうか。
部下が異動したいという気持ちを持ってしまったのは、「自分のせいかもしれない」と思う人もいれば、「ここまで育ててやったのに」と裏切られたという気持ちが強くなってしまう人もいるでしょう。
人はショックを受けたときには、悪いことばかり考えてしまったり、何も考えられなくなったりします。
そうなってしまわないよう、部下が異動を希望する理由や、その理由から異動を希望するまでに起こる前兆、そして、日常の部下とのコミュニケーションで気をつけたいことをご紹介していきます。
部下が異動を希望する理由は?その前兆とは
まず考えてほしいのは、部下が異動を希望する理由のすべてが上司のせいなのか、ということです。決してそれだけではないはずです。
ここでは、異動を希望するのにはどのような理由が考えられるのか、そしてその理由を抱えたときの異動希望までの前兆を見ていきましょう。
1.プライベートの環境の変化
年を重ねるにつれてプライベートの環境も変化していくのは当たり前のこと。例えば、今いる部署が毎月決まった時期に残業が必ず発生するところだったとして、子どもが誕生したことでその残業が厳しくなることもあります。また、体調の変化も部署異動の大きな理由になるでしょう。
環境や体調の変化であれば本人から周囲に伝えている場合が多いでしょう。前兆として考えられるのは、その上で周囲にお詫びの言葉を頻繁に述べていたり、いつもよりも表情が暗いといった言動や表情です。このような言動があれば本人は続けていくことが難しいと考え始めている可能性があります。
2.部署内の人間関係のトラブル
部署内の人間関係のトラブルも大きな理由になります。気持ちよく仕事をするためには、周囲との円滑なコミュニケーションが必要となります。この部分が滞ってしまうことは、仕事に対するモチベーションが下がる原因にもなります。
前兆としては、部署内の人との関わりになることに消極的になることや、いつも表情が硬かったり、笑顔を見る機会が減るなどです。これに気づくには普段から部下のことを気にかけている必要があります。
3.今の仕事との相性
希望していた部署ではなかった、不得意な仕事をさせられているといった、前から仕事に対する不満を抱えている場合も考えられます。
この場合は前兆などではなく、異動希望を受けたら、その理由をしっかりとヒヤリングすることが大切です。
4.上司との関係不和
最後に、すべてではないものの、上司との関係が良くないことも理由の1つと言えます。
パワハラは論外ですが、そうではなくても、部下からの意見を聞かずに一方的に決めたり、聞かなくてもわかるという態度を取ったり、「後で聞くから」と断ってそのままにしてしまったりなど、コミュニケーションがうまく取れていないことはないでしょうか。そのようなことが続くと、「話しても意味がない」と部下から判断されてしまいます。
前兆は、意見をまったく言わなくなるなど、部下からのアクションが一切なくなることです。
部下とのコミュニケーションで日常から気をつけたいこと
管理職には、部下が働きやすいような環境づくりを行うことが仕事の1つとして求められています。そのためには、部下と積極的なコミュニケーションを取り、風通しのよい職場環境を構築する必要があります。
ここでは、部下とのコミュニケーションで日常から気をつけたいことを見ていきます。
1.部下から話しかけやすい態度を意識する
話しかけやすい態度には、日常からの聞く姿勢が重要になります。仕事中で部下から話しかけられたとき、何か作業をしながら聞くことはないでしょうか。この態度は改めなければいけません。
話しかけられたときには、状況が許す限り作業を止めて、視線と体を部下に向けましょう。話を聞いている最中は言葉を遮ることなく、聞き役に徹してください。傾聴する姿勢を見せることで、話しかけやすい、話を聞いてくれる上司という印象を与えることができます。
2.意見を受け入れ、褒める
次に大切なのは、部下の意見を受け入れることです。意見を受け入れることで部下は承認欲求が満たされ、仕事に対するモチベーションを高めることにつながります。
また、意見の中は良い点は積極的に言葉にして褒めるようにしてください。この行動により、部下はこの仕事に対する自分の必要性を感じることができます。
褒めるときには、結果を褒めることも大切ですが、プロセスをより褒めるようにしましょう。自分のことをしっかり見てくれていると上司に対する信頼感もアップします。
3.目的と目標を共有する
仕事に対する目的を明確にすることも上司の役割です。上司からの指示で行う仕事の中には、なぜこの仕事を行う必要があるのかと腑に落ちないこともあるはず。そのような状態であれば、部下は「やらされている」という感覚に陥ってしまいます。やらされている感じてしまうと、意欲的に取り組むことは難しくなります。
なので、まず目的を明確にし、その上で目標を共有してください。そうすることで一緒に目標を達成するという意欲を持つようになり、チームとしての士気も上がっていきます。
文・構成/藤野綾子