店頭で目立つためのパッケージと商品名
今までのパフと違うことを示すためにパッケージにも力を入れた。安価なこともありポリプロピレン(PP)製の袋に入れて販売されるのが普通のパフにあって、ブリスターパックで販売することにした。「今までにない特徴があることをしっかり伝え、それなりの単価で販売するためには、店頭で目に留まり手に取ってみたくなるパッケージデザインが必要でした」と松永さんは話す。
目に留めてもらうには商品名も重要な要素。『汚れが落ちやすいパフ』での経験から解決できる悩みをストレートに打ち出した商品名にすると店頭で注目されやすいとわかっていたことから、同じ路線から考えられた『ファンデーションが染みこみにくいパフ』が採用されることになった。
一時は商品の供給が追いつかなかったことも
『ファンデーションが染みこみにくいパフ』は現在、同社のパフで一番の売れ筋となっている。「正直、ここまで売れるとは思っていませんでした」と松永さんは話す。
予想以上に好調に売れているが、特別な販促はしていない。貝印公式Xでプレゼントキャンペーンを実施したほか、売り場をつくるために店頭ディスプレー用のボックス什器や吊り下げ式の陳列什器の用意といった普段から行なっていることをした程度である。
特別なことは何一つしていないのに注目されたのは、SNSでクチコミが拡散したためであった。インフルエンサーが自発的にXやTikTok、YouTubeなどで商品に関する内容を投稿し、軒並みバズったという。
「影響力のあるインフルエンサーの方々が偶然商品を見つけ、使ってみたら良かったことから自分たちの意思でSNSに投稿してくれました」と松永さん。発売当初からSNSで話題にされる機会が多く、クチコミの拡散に伴って販売が伸びていった。
予想以上の売れ行きに一時は商品の供給が追いつかなかったこともあった。2023年7月から8月頃がもっとも需給が逼迫したという。
ラインアップの拡充を図る
予想以上に売れ評判も良いことから、同社は安定供給に努めると同時にラインアップを拡大することにした。まず2023年12月に、クッションファンデ用を新たに発売した。
クッションファンデ用は2023年6月頃から開発の検討を始めた。松永さんは次のように話す。
「ここ最近クッションファンデーションの売れ行きが大きく伸びていますが、パフがないと使えない上に顔にはたくような使い方をすること、油分が多くパフが汚れやすくなる、使わない間はケースにしまわれ衛生面が気になるといった理由から買い替え需要が高いところがあります。ファンデーションが染みこみにくい特徴を生かせば洗うのが楽で衛生的に長く使えることから、クッションファンデーションのユーザーにウケると考えました」
多層構造とマシュマロのようなふわもち感触を踏襲しつつケースへの収納が必須になるためサイズと形状を見直した。サイズは先に発売されたものより薄くし、形状はしずく型に変更。小鼻や目元などの細かいところはしずくの角で仕上げる。
クッションファンデ用の『ファンデーションが染みこみにくいパフ』。幅54×奥行54×高さ8mmで正方形からしずく型に変更した
2024年7月には新色としてブラックを追加。ブラックやダークトーンのパフは現在人気が高いこともあって追加したが、ブラックにするとファンデーションの色がわかりやすく使いすぎが防げる、洗った時にきちんと落とせたかがわかりやすいといった利点がある。さらに2024年11月に、数量限定でペールピンク、ミントブルー、ピスタチオグリーン、ライラックミストの4色が発売される(クッションファンデ用は除く)。
2024年7月に発売されたブラック。ファンデーションの色がわかりやすく使いすぎが防げる、洗った時にきちんと落とせたかがわかりやすいといった利点がある
2024年11月に発売される数量限定カラー。左からペールピンク、ミントブルー、ピスタチオグリーン、ライラックミスト
取材からわかった『ファンデーションが染みこみにくいパフ』のヒット要因3
1.機能性と実用性の向上
内側と外側のスポンジの間にフィルムを挟むことで商品コンセプトの『ファンデーションが染みこみにくい』を実現。洗うのが楽でファンデーションの使いすぎも防げるようになり、機能性と実用性を大幅に高めた。
2.SNSでのクチコミ拡散
コンセプトが優れ機能性や実用性が上がっても、注目してもらえないと手に取ってもらえない。この点に関しては、クチコミの拡散が寄与した。多くのインフルエンサーが自発的にSNSで好意的な内容を投稿。商品に好印象を持ってもらうことができた。
3.店頭で目を引くパッケージと商品名
パフは消耗品ということもあり、パッケージはPP袋に入れるだけといった簡素なものが多い。パッケージにコストをかけないものが多い中、ブリスターパックを採用。特徴をストレートに表現した商品名と相まって他のパフより店頭で目立つことができた。
ファンデーションを使わない男性にはわかりづらいが、塗る時に使うパフの手入れや衛生面を女性は気にする。男性だとなかなか気づきにくいこれらの点は、ユーザーの女性だからこそ気づけるといってもいい。つくり手がユーザーの視点を持って企画・開発する大切さを『ファンデーションが染みこみにくいパフ』のヒットは示している。
製品情報
ファンデーションが染みこみにくいパフ
ファンデーションが染みこみにくいパフ(クッションファンデ用)
ファンデーションが染みこみにくいパフ BK
ファンデーションが染みこみにくいパフ(クッションファンデ用)BK
文/大沢裕司