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【ヒット商品開発秘話】シリーズ累計出荷数100万個を突破した貝印の「ファンデーションが染みこみにくいパフ」

2024.10.23

連載/ヒット商品開発秘話

 メイク時に使用するファンデーションはできるだけ少量で済ませたいもの。パフに必要以上に染みこませたくないものである。

 ファンデーションをムダ使いすることなくベースメイクができるパフとして人気を博しているのが、貝印が2023年3月に発売した『ファンデーションが染みこみにくいパフ』だ。外側のスポンジと内側のスポンジの間にフィルムを挟み込んだ多層構造の採用により染みこみにくく、少量のリキッドファンデーション、パウダーファンデーション、クッションファンデーションでのメイクを可能にした。2024年8月末時点でシリーズ累計出荷数が100万個を突破した。

2023年3月に発売された『ファンデーションが染みこみにくいパフ』。幅60×奥行60×高さ12mmと厚みのある正方形に仕上げた。裏に指が通せるリボンが付けられている

本来の機能を維持しながら悩ましい点を解決

 貝印といえば刃物。美粧品でもカミソリやハサミのイメージが強いが、刃物以外の美粧品も多数扱っている。パフもその1つで、中でも売れ筋になっていたのが2017年3月に発売された『汚れが落ちやすいパフ』であった。

『ファンデーションが染みこみにくいパフ』は、『汚れが落ちやすいパフ』が売れ行き好調なことを受けパフのシェア拡大を目指すために開発されることになった。

「ファンデーションは毎日使うといってもいいものなので、女性はパフに関し思うことがいろいろあります。パフはファンデーションをキレイかつムラなく塗るためにあるので、この機能を維持したまま悩ましいと思っていることの解決を目指しました」

 このように話すのはマーケティング本部第一ブランド・商品戦略部 マネージャーの松永由香さん。2022年4月頃から開発が検討されたが、社内で挙がったパフに関する悩みの1つが「ファンデーションが染みこみすぎてもったいない」であった。

貝印
マーケティング本部
第一ブランド・商品戦略部
マネージャー 松永由香さん

中にフィルムを挟んだ多層構造の採用

 パフは単層構造(スポンジのみ)か二層構造(外側と内側で異なるスポンジを使ったもの)を採用したものが多いが、これでは染みこみにくくするのが難しいと思われた。そこで開発に当たっては、多層構造を前提とすることにした。

「協力会社と一緒に構造を検討してきたのですが、外側のスポンジと内側のスポンジの間にフィルムを挟み込んだ多層構造にすることでファンデーションの染みこみすぎが解決できそうな見込みが立ったことから、最初から多層構造で開発を進めてきました」と松永さん。スポンジについては外側に耐油性、耐摩耗性に優れたもの、内側に弾力のあるものを採用することにした。どちらも特殊な素材は使っていないが、外側はファンデーションをムラなく伸ばせるなめらかな感触のもの、内側は厚み、弾力のあるものを選んだ。

『ファンデーションが染みこみにくいパフ』の断面。内側の厚いスポンジと外側のスポンジの間にフィルムが挟まっている

 薄めのパフもある中、『ファンデーションが染みこみにくいパフ』は厚みを持たせた。ポンポンとはたきやすいよう弾力感を持たせるためで、内側に弾力のあるスポンジを採用したのもこのためであった。

 ただ、厚すぎると使いづらくなるので、ムラなく仕上げられるようにするには形状が重要になった。「小鼻とか細かいところを仕上げる時にきちんとフィットし、額や頬のように大きな面がムラなく塗れる形状を検討しました」と松永さん。いくつか候補があった中から現在の角が丸い正方形が採用された。正方形のパフは丸型や卵型より多くはないが、細かいところは角を使って仕上げることができ、大きく塗る時は面を使えることから採用に至った。

 この形状を決めることが、開発では一番時間がかかったという。松永さんは「異なる形状のサンプルをつくってもらっては検討することを繰り返しましたが、サンプルはすぐできるわけではないので、形状が決まるまで時間がかかりました」と振り返る。ファンデーションの染みこみにくさの検証とは別に、使いやすいかどうかの検証を複数回実施した。

 手間をかけて開発した『ファンデーションが染みこみにくいパフ』であったが、社内では期待が高いとはいえなかった。パフを使わない男性社員が多いので、ピンと来ていないところがあったからだ。

 社内の反応が変わったのは、2022年12月に開かれた新商品発表会だった。新商品発表会は年1回実施されているが、招いた小売店が独自の多層構造やファンデーションが染みこみにくいという商品コンセプトを高く評価した。

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