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仕事において「ケーススタディ」を実施する4つのメリットと活用シーン

2024.11.05

よく聞くケーススタディの意味を正しく説明できるだろうか?メリットややり方を理解して、賢くビジネスシーンに役立てていこう。

ビジネスシーンにおいて、しばしば『ケーススタディ』という言葉を耳にする機会があるだろう。しかし言葉の輪郭は理解していても、説明を求められると答えに詰まってしまう、という場合も少なくない。

そこで本記事では、ケーススタディとは何か、その意味やメリット、やり方、活用できるシーンなどを可能な限りわかりやすく解説していく。ぜひ最後までご覧いただきたい。

ケーススタディとは

初めに、ケーススタディの定義について確認したい。

■ケーススタディの意味

ケーススタディの意味を辞典で調べると、このように書かれている。

■ケーススタディ【case study】

ある具体的な事例について、それを詳しく調べ、分析・研究して、その背後にある原理や法則性などを究明し、一般的な法則・理論を発見しようとする方法。事例研究法。

※出典:小学館「デジタル大辞泉」

つまり、実際に起こった事例の詳細を研究し、法則や傾向を明らかにすることである。

ケーススタディはビジネスだけに留まらず、教育や医療、介護の分野でも活用されている。事例に合わせた分析を重ね、最適解を導き出す訓練をするのが目的であり、擬似的経験により座学や理論だけでは身に付きにくい実践的な対応力を養うことが可能なのだ。

■ケーススタディを実施するメリット

ケーススタディを実施するメリットは以下の通りだ。

1.事例を擬似的体験できる

ケーススタディでは実際の事例を分析・研究して解決策を模索するため、知識と併せて実践的な対応力も養えるのが大きなメリットである。ケーススタディを繰り返し行って擬似的体験をすることにより、より状況を具体的に想像できるため、意思決定能力・問題解決能力・経験値が向上し、現実のビジネスシーンに活かすことができるだろう。

2.トラブル等のリスクを回避しやすくなる

ケーススタディにおいて実際の失敗事例を学ぶことで、事故やトラブル等のリスクをある程度予測できる。そのため、それらを回避することが可能である点もメリットの1つと言えるだろう。ケーススタディを通して失敗事例について学ばなければ、リスクをリスクとして捉えられない、気付かない場合も十分にあり得る。事例の中に見える危険性をしっかり把握しておけば、失敗を防げるに違いない。

3.創造性を高められる

ケーススタディで過去の事例を詳らかにすると、新しい提案が生まれる場合もあるだろう。例え成功事例だったとしても、それが唯一の最適解であるとは限らないからだ。よりよい方法・やり方はないかを思索したり、ともに学ぶ社員や仲間とアイデアを出し合ったり話し合ったりすることで、発想力・創造力が鍛えられ、発見や別の回答が導き出すことが可能である。

4.精神力の向上につながる

ケーススタディでさまざまな事例を学ぶことで、現実世界で困難な状況に陥った際にも冷静に適切な対応ができるようになっていく。そのため、多少のことでは動じないメンタルを養うことが可能で、問題解決に対するモチベーションアップや自信に繋がっていくだろう。

■ケーススタディの一般的な手順と流れ

ケーススタディの一般的な手順と流れは以下の通りである。ここではビジネスにおいてチーム内で行うことを想定して解説していく。

1.事例を決定する

まずはケーススタディにおいて題材にする事例を決めよう。

事例については過去に経験したものでも、メディアから趣旨に沿ったものを探してくるのでも、どちらでも構わない。

事例が定まったらテーマを決めよう。「トラブルの解決策を考える」、「収益アップの戦略を立てる」等、何をするのかを設定しておこう。

2.事例の詳細を読み込む

次に事例を細部まで読み込み、事実関係やバックグラウンド・問題点を理解しよう。事例について不足している情報がある場合には、合理的な推論で補完したり、ケーススタディの担当者に確認するとよい。

なお、事例については事前に参加者(チームメンバー)に共有しておけば、タイムロスが生じず滞りなく進行できるので、各々に読み込んできてもらうことをお勧めする。

3.問題を明確化する

事例の詳細を把握したら、分析して問題点を明確にしよう。

1つの事例に対して複数の問題がある場合が多いため、抽出されたものに優先順位をつけ、どの問題を解決するべきかを決める必要がある。

4.解決策の洗い出しをする

問題を明確にできたら、具体的な解決策を洗い出していく。グループに分かれ個人で考案したアイデアを持ち寄り、必要であればディスカッションを行いながら、グループ内での結論を決める。

5.結論・解答を共有する

グループで出した結論と、そこで得た学びをチーム内で共有する。ここまでの過程や、グループ間での意見交換等で得た気づきや発想により、意思決定能力や問題解決能力を向上させることがケーススタディの目的である。

ケーススタディの活用シーン

ここでは、ビジネス、医療・看護、教育現場においての活用シーンについて解説していく。

■ビジネスシーンにおけるケーススタディとは

ビジネスシーンにおけるケーススタディは社内研修の中で行われることが多い。具体的には新入社員研修、リーダー研修、管理職研修等である。

「売上を15%アップさせるには」、「SNSでの機密情報漏洩を防止するにはどのような対策を打つか」等、実際の事例を分析・研究し、意思決定能力や問題解決能力、リスク回避能力を高めるのが目的となる。

ケーススタディでさまざまな事例を経験しておくことで、似たような状況下に置かれた際に的確な対応ができるだろう。

■医療・看護におけるケーススタディとは

医療・看護におけるケーススタディは、医師や看護師達が一堂に会し、症例や事例の検討を行うことである。

医師のみ、看護師のみといった特定の職種だけが集められる場合、複数の職種が集められ一つの症例や事例について議論する場合などさまざまである。

治療の経過や病状を細かく分析することにより、治療法の改善や開発に繋がることが期待できる。

また、医療・看護の現場では瞬間的な判断能力が求められる場合も多いが、ケーススタディを重ねることにより瞬発力の向上が見込めるだろう。

■教育現場におけるケーススタディとは

教育現場におけるケーススタディは主に教職員や管理職が行うものである。

教職員のケーススタディでは、実際の授業や学生(生徒)への指導をロールプレイして、質の改善を図る場合が多い。

管理職のケーススタディでは、現場で実際に起きた事故やトラブルについて分析し、原因を究明・解決方法や再発防止策を探る。

一方で、学生が行うケーススタディというものも存在する。大学の授業で取り扱う場合には、学科や講義にまつわる専門家を講師として招き、実際に起きた事例について講義してもらう形式が多いだろう。内容について学生同士で議論し、グループで発表を行い、学びや発見を得るのが目的である。

ケーススタディの失敗事例と注意点

ここでは、ケーススタディの失敗事例と注意点について触れておく。

■ケーススタディの注意点

ケーススタディにおいて注意するべき点は2点ある。

1点目は、成功事例を安易に応用しないことである。ケーススタディはある1つの企業や組織の事例を分析・研究したもので、全ての企業や組織に応用できるとは限らないことを理解しよう。取り巻く環境や状況により十分な効果を得られない可能性を心得つつ、導入については慎重に検討するべきである。

2点目は、古すぎる事例は参考にならないことである。実際に起きた事例をもとに解決策を学ぶのがケーススタディだが、当時と現在の環境に大きく差異がある場合には参考にならないどころか、逆に間違った判断や対応を引き起こす要因となってしまう。

そういった状況を防ぐために、扱う事例を極力新しい事例に限定し、時代とともに対策や結果が変わることを視野に入れて学ぶのが望ましい。

■ケーススタディの失敗事例

具体的なケーススタディの失敗事例については以下の通りである。

失敗事例①:不適切な事例の選定

ある日本企業が内部研修でケーススタディを導入した際、アメリカのスタートアップ企業の成長戦略を事例として選定した。しかし、参加者のほとんどが中高年の社員であったため、スタートアップ特有のスピード感やリスクマネジメントが理解しづらく、また実際の業務に役立てるのが困難であったと評価された。この結果、研修の目的であった「イノベーションの促進」が十分に果たされなかった。

失敗事例②:古すぎる事例の使用

日本のある大学で行われたケーススタディでは、1990年代の経済バブル崩壊直後の企業の戦略を分析する事例を用いた。しかし、その事例が現在のデジタル化やグローバル化のビジネス環境と乖離していたため、学生たちは現代の市場に直接適用可能な戦略を学ぶことができず、授業の効果が低かったと報告されてしまった。

過去の事例を通して判断力や対応力を高めていこう

ケーススタディとは、実際に起こった事例を通して法則や傾向を明らかにすることである。

ビジネスシーンのみならず医療・看護や教育現場でも活用されており、事例に対する擬似的経験、トラブル等のリスク回避、創造性の向上等が見込めるというメリットがある。

ケーススタディにおける正解は1つに限定されず、時代とともに正しい対応や解決策が変化する点に留意しなければならない。しかし事例の分析・研究を重ねることで現実世界での意思決定能力や問題解決能力といった実践的な力を養うことが可能であるため、学習の機会があれば積極的に取り組んでみよう。

文/太田 佳祐(おおた けいすけ)
人材系企業にて求人広告の営業や人材紹介部署の立ち上げやマネジメントを経験。転職し、新規事業部門にて新事業の立ち上げや採用業務に従事したのちに独立(ライター・カウンセラー・セミナー講師)。2021年に政治分野のハラスメント対策を行う法人を立ち上げ、2023年にフリーランスの事業を法人化。プロスポーツチームや自治体、企業や個人の目標達成を伴走型でしながら、ライターとしての執筆や講演活動も行っている。

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