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パーパス経営は、近年注目度が高まっている経営手法のひとつです。ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)と似ているものの、意味に違いもあります。どのように違うのか、またどう取り組めばいいのかと迷うことがあるでしょう。
この記事では、パーパス経営の意味やメリット・デメリット・注意点などを解説します。さらに、実際に取り組む場合に知っておくべきポイントもあわせて詳しく確認しましょう。
「パーパス経営」とは?簡単に基礎知識を解説
「パーパス経営」とは、「企業の存在意義」を軸とした経営のあり方を指します。ビジネス環境が大きく変化するなかで、「パーパス経営」「パーパス・ブランディング」が注目を集めています。
それでははじめに、どのような経営を指すのか、またミッション・ビジョン・バリュー(MVV)との違いや注目を集める背景、求められるものを確認しておきましょう。
■自社の社会的な存在意義を掲げる経営手法のこと
パーパス経営とは、「自社の社会的な存在意義を掲げる経営手法」のことを指します。そもそもパーパス経営の「パーパス(purpose)」とは、「目的」「理由」「意志」を表す単語です。ビジネスシーンでは、「社会における存在する意義」や「役割」を意味します。
パーパス経営では、企業は利益を追求することばかりを重視しません。自社が何のために存在するのかを考え、企業としての存在意義、目的、社会貢献などを明文化します。そのうえで、企業としての存在意義などを軸として、実際の事業に取り入れていく経営方法です。
■ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)との違い
パーパス経営と「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」は、似た概念として比較されやすいです。
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とは、以下を表す言葉です。
・ミッション……企業の使命
・ビジョン……企業の方向性・将来像
・バリュー……企業の価値
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、企業を主体として目指す未来を考えます。一方、パーパス経営は社会を主体として自社の存在意義を表現するものです。
■パーパス経営が注目を集める背景
パーパス経営が注目を集める理由は、社会や従業員の気持ちの変化に対応するためです。
以前は、利益を追求することを重視した経営をする企業が一般的でした。しかし、利益を追求するあまり、大量生産・大量販売による環境問題や富の偏差などが問題視されるようになりました。
近年は、持続可能な開発目標「SDGs」や、サステナビリティ経営が注目されています。社会問題への取り組みなどが顧客からも評価されるようになり、社会における企業の存在意義が重要視されるようになりました。
また、企業のDX化が求められていることも注目を集める要因のひとつです。デジタル技術を活用して利便性を高めるDX化によって、業務効率化やSDGsの推進などにつながっています。
企業活動が環境や、社会に与える問題を重視したESG投資が注目されていることも、パーパス経営が注目を集める理由です。
先行きが不透明なVUCAの時代と呼ばれるほどに、変化の激しい時代であることも、パーパス経営が注目を集める理由だといえます。
そのような先行きが不透明な時代でも通用する明確な指針を提示し、さまざまなステークホルダーと進むべき方向性を共有することが、企業に求められているのです。
■パーパス経営に求められるもの
パーパス経営をする際に求められる条件として、以下のようなものがあります。
・社会課題を解決する
・実現可能な目標を掲げる
・自社の利益につなげる
・合理性がある活動をおこなう
・従業員を鼓舞できるような活動を実施する
パーパス経営をするならば、「社会に対してどのような価値を提供できるか」「どのような役割を果たすべきか」をよく検討することが大切です。
社会全体に対する責任を考慮しつつ、環境問題や人権、労働などのさまざまな社会課題への取り組みをすることで、ステークホルダーなどから共感を得られます。
企業の経営は慈善活動ではないため、自社の利益につなげられるかどうかを判断することもポイントです。また、自社のノウハウや知見をいかせる合理性のある活動は、市場から理解を得やすくなります。
パーパス経営によるメリット
パーパス経営は、直接的に利益に作用するものではありません。
しかし、パーパス経営の実施には、以下のとおりさまざまなメリットがあります。
1.意思決定が迅速になる
2.従業員エンゲージメントが向上する
3.ブランディングにつながる
4.サステナビリティの実現につながる
それぞれのメリットを、詳しく確認していきましょう。
■1.意思決定が迅速になる
パーパス経営の実施によるメリットのひとつが、社内の意思決定が迅速になることです。
企業としての価値観や判断基準、達成したい目標などの方向性が明確になることで、それぞれの従業員が同じほうを向いて活動できるようになります。
結果として、従業員の意思決定の判断基準が統一でき、明確な判断基準をもとにスムーズに意思決定しやすくなるでしょう。
さらに、非効率な業務や企業理念に反した活動の抑制にもつながります。
■2.従業員エンゲージメントが向上する
パーパス経営は、従業員エンゲージメントが向上することもメリットです。
社会のなかでの自社の存在意義が明確になることで、従業員が日々取り組む仕事内容の意義や価値も認知できるようになります。進むべき道への理解が深まり、やりがいや誇りを感じて、仕事のモチベーションアップにつながるでしょう。
従業員エンゲージメントがあがることによって、勤務意欲や業績の向上、離職率の低下が期待できます。さらに、存在意義の明確化は優秀な人材の獲得にもつながります。
■3.ブランディングにつながる
ブランディングにつながることも、パーパス経営のメリットです。
パーパス経営をおこなっていると、「社会的に果たすべきことは何か」などの使命を持って社会貢献活動などに取り組みます。そのため、パーパス経営をおこなう企業は、消費者や投資家、従業員などに「責任ある企業」として認識されやすくなります。
結果として、企業イメージが向上し、応援してくれる人が増え、競合他社との差別化が図れるなどの効果が期待できるでしょう。
社会活動の内容を示して自社を連想させることで、商品やサービスの購入を促すことにもつながります。
また、一貫性のある経営ができるようになるため、投資家から信頼されやすくなるでしょう。
■4.サステナビリティの実現につながる
さらに、サステナビリティの実現につながることもメリットです。
「サステナビリティ(Sustainability)」の意味は、「持続可能性」です。パーパス経営ではさまざまな社会課題に取り組むため、企業と社会のサステナビリティに貢献できます。
また、消費者を「社会問題を解決する一員」と捉えなおすことで、能動的に社会貢献に参画する相手に対して自社から提供できる新たな価値が見つかるかもしれません。
パーパス経営によるデメリット・注意点2つ
多くのメリットがあるパーパス経営ですが、以下のようなデメリットや注意点もあります。
1.形だけになってしまう可能性がある
2.パーパスの浸透に時間がかかる
それぞれのデメリット・注意点も確認しておきましょう。
■1.形だけになってしまう可能性がある
せっかくパーパス経営に取り組んでも、形だけになってしまう可能性があります。
さまざまなことを検討して社会における企業の存在意義を定めても、実際の行動がともなわなければ意味がありません。パーパスとして定める内容が現実的ではなかったり、社員の共感を得られなかったりすると、実際の行動につながりにくいでしょう。
形だけのパーパス経営では、逆に企業に関係するさまざまな相手からの信頼を失ってしまう可能性があるため、注意が必要です。
■2.パーパスの浸透に時間がかかる
パーパス経営に取り組む際は、その浸透に時間がかかることもデメリットです。
パーパスを浸透させるまでは、意思決定の迅速化や従業員エンゲージメントの向上、ブランディングにつながることなどのメリットは受けられません。
パーパスを浸透させるためには、社員教育や株主への説明などが必要です。パーパスの内容に反対する意見が出れば、意思統一できるようになるまでさらに時間がかかるかもしれません。
効果の実感までにある程度の時間が必要であることを理解したうえで、パーパス経営に取り組むとよいでしょう。