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パートも収入アップ!第3の賃上げから正社員並み待遇まで家計にうれしい企業の取り組み事例

2024.10.21

物価高で誰もが苦しく、勤め先の会社による賃上げもあまり期待できない昨今、夫婦共働きでできるだけ世帯収入を増やしたいと考える世帯もあるのではないだろうか。中には、夫の扶養内で働くために年収を押さえるべくパートやアルバイトとして働く妻もいるだろう。一般的にパートやアルバイトは、正社員と比べて賃上げ対象になることは少ないが、企業によってはパート従業員であるからこそあえて待遇を良くしているケースもある。

そこで今回は、パートとして働いている主婦が賃上げや待遇改善によって得したリアルな声を紹介する。

食事補助による「第3の賃上げ」でパート主婦が得した事例

定期昇給や給与のベースアップではなく、福利厚生で実質的賃上げを行う「第3の賃上げ」が広まりつつある。食事や住宅などの補助を行うことで、従業員の手取り額が増える上に、企業にとっては税負担も減るため注目を集めている。

そんな第3の賃上げは、福利厚生を利用するため、どうしても正社員に偏りがちだが、パート従業員に対する食事補助などの導入も進んでいる。その一例が、部品検査を行う株式会社サニクロだ。

同社はフィルター製品の目視検査を中心に、主にパート従業員を採用して業務を行っている。

株式会社サニクロ 業務風景

「従業員が一番」との考えのもと、パート従業員の給料を少しでも上げたいという思いがあったが、従業員には扶養控除の壁があることから、食事補助という別の形で、利益を還元する仕組みを作った。

導入したのは、食事補助サービスの「チケットレストラン」。ICカードを利用した食事補助サービスで、企業が福利厚生で食費を半額補助するため、従業員は飲食店やコンビニなどでのランチ代が実質半額で利用できる。

フルタイムパート従業員の清水瑠美氏は、チケットレストランがコンビニのお弁当代などに充てられるようになってから、どんなメリットが得られているのか。

「手元に残るお金が増え、自分の食事にかかる食費が抑えられていると実感しています。頑張った自分へのご褒美として、コンビニの少しお高めな新作スイーツも半額感覚で購入できます。また、毎日のお弁当作りから解放され、お弁当作りの時間に充てていた時間の分だけ早く出勤できるようになり、勤務時間が増えたことでお給料も増えました」

食事補助は給料アップによる賃上げと比べてどんな利点があるだろうか。パート従業員の小林みずき氏は次のように話した。

「給料アップによる賃上げは、夫の扶養の枠を気にしなければなりませんが、チケットレストランの支給に関してはその点を気にせず利用できる上に、食事という日々の生活に直結した部分をサポートしてもらっているので、扶養内で働く主婦にとって、とても力強い味方です」

実質手取りが増えることで、共働き世帯の収入アップにつながるのであれば、よりメリットが大きいだろう。中小企業も導入しやすい賃上げ方法として、今後も各所で採用されていくだろう。

パート待遇を正社員と同等にした大手リテール企業の事例

(画像はイメージ)

大手リテール企業であるイオンが、パート従業員の待遇を同じ業務の正社員と同等にする制度を2023年に始めた。2024年度からグループ40社で順次導入を進めている。この制度新設により恩恵を受けたパート従業員のリアルな声を紹介する。

イオンリテール株式会社 人事総務本部 人事部 マネージャーの泉行信氏は、本制度導入の背景について次のように話す。

「我々にとって、地域密着経営の主役として現場で活躍いただいているパート社員の戦力化は事業戦略の要です。これまでは同じ店マネージャーであっても、パート社員と正社員とでは処遇に差がありました。パート社員の皆さんに上位職を目指し、これまで以上に活躍してもらうにはどうすべきかを本気で考え、それに見合う制度を整備し、担う役割が同じであれば処遇も同じにすべきという同一労働同一賃金の考え方を導入しました」

具体的な待遇内容とは?

「パートであっても一定の上位職(CG資格)は、正社員の基本給を時間換算して時給を設定しますので、働く時間が同じであれば年収は正社員と変わりません。また子育て支援金などの各種手当金や、育児休職制度などの福利厚生面も同じです。さらには退職金についても『前払い』という形で正社員同等の金額を支払います。今後は正社員でなければいけないなどといった固定概念をなくし、地域密着経営の主役としてパート社員の店リーダー、マネージャーを積極的に登用していきます」

正社員と同等の待遇を受けることとなった主婦のパート従業員の声は次の通り。

「物価の上昇に伴い、やはり家計や賃金について気になっている。賃金を上げる手段が最低賃金の上昇だけでなく、頑張ってスキルを磨けば給料も上がる仕組みがあることは助かる」

「パート社員として社員より少し労働時間は短く働くこともできる。それでも時間当たりでは同じ給料になった。家計としてはもちろん、家事・子育ての時間に充てることができて助かる」

「社員と同じようにミーティングにも参加するようになった。会社の方針や考え方など情報は社員と同じものが見えるようになった。最初は慣れずにむずかしいと思うこともあったが、それだけにプライドを持って働くことができるようになった」

ただ給与が正社員並みになったというメリットだけでなく、仕事内容の変化からより成長意欲がわいてくる可能性もあるようだ。

2つの事例より、パート従業員といえども、何らかの形での賃上げは従業員にとっても会社にとっても意義のあることだとわかった。今後、さらにパート従業員が働きやすい環境が作られるのを期待したい。

文/石原亜香利

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