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セブン-イレブンの苦戦は「上げ底」が原因ではない?節約志向とポイントで失われた競争優位性

2024.10.20

セブン&アイ・ホールディングスが2025年2月期通期の見通しを引き下げました。

5450億円としていた営業利益を、26.1%低い4030億円としたのです。この数字は前期を24.6%下回るもの。好調だったセブン&アイの業績に急ブレーキがかかりました。

不調の主要因は海外のコンビニ事業によるものですが、国内戦略にも課題があります。セブン&アイに何が起こっているのでしょうか?

海外店舗で中間層の消失とタバコの販売不振の影響を受ける

2025年2月期上半期の営業利益は、前年同期間比22.4%減の1869億円でした。

海外コンビニ事業の営業利益は、前年同期間比35.0%減の733億円。この数字は期首予想を32.1%(346億円)下回るもので、通期予想の営業利益を大幅に引き下げた元凶になっています。

海外のコンビニ事業においては、2024年2月期4Qから既存店の商品売上が減少に転じました。客数減が減収を引き起こしたのです。

アメリカでは、極端なインフレの進行によって富裕層と貧困層の二極化が進行しています。中間層が縮小していると言われており、ウォルマートやコストコのような巨大な小売チェーンが人気。コンビニのように店舗ネットワークと適正価格を強みとする小売店は、消費者へのアピール力が弱まりました。

それに加えて、コンビニが得意とするタバコが売れなくなったことも打撃を与えています。2023年のアメリカ全体のタバコの販売数は76億パック。2019年比で実に26%も減少しています。タバコの価格は上昇しており、消費者は安価なタバコやその他のニコチン製品に切り替えていることが背景にあります。

セブン&アイは海外コンビニ事業において、オリジナル商品でコンビニの優位性を確立することや、M&Aを通して店舗ネットワークを拡大し、競争力を高めるとしています。

2024年に入って既存店の客数は前年割れを起こすように

海外事業は不調の主要因ではありますが、国内のコンビニ事業が順調なわけではありません。

セブンイレブンが足元でやや苦戦している様子は、既存店の売上高と客数の推移を見るとよくわかります。客数は2023年1月から2024年1月まで前年同月を上回る推移が続いていたものの、2024年2月からは下回る月が続くようになりました。6月から8月までは3ヶ月連続で前年割れを起こしています。

2024年の夏は気温の高い日が続いており、コンビニは稼ぎやすい季節。2023年6月から8月の客数は、平均で前年同期間を2.5%上回っていました。今年は0.4%下回ったのです。

※月次営業情報より筆者作成

なぜ、集客力が弱くなったのでしょうか。SNSでは弁当容器の「上げ底」などの施策にネガティブな反応がみられ、愛想をつかされたなどというコメントもありますが、どちらかというと、セブンイレブンがとっていた戦略とマクロ環境の変化が大きく影響しているでしょう。

戦略と消費者意識の巧みなすり合わせを行っていたセブンイレブン

セブンイレブンはもともと、高品質のものを販売する高価格路線をとっていました。

ビッグデータ解析を行うリサーチ・アンド・イノベーションは、トップバリュとセブンプレミアムの価格帯を比較調査しています(「長引く物価上昇で、小売のプライベートブランドが好調?!トップバリュとセブンプレミアム、その人気の理由を調べてみた」)。それによると、麺類の価格帯構成比率において、トップバリュは150円未満の商品が全体の73.4%を占める一方、セブンプレミアムは50.7%に過ぎません。しかも、セブンプレミアムは2022年に150円未満の商品が56.0%ありましたが、2023年には6%程度減少しているのです。

ヒット商品である「蒙古タンメン中本辛旨味噌122g」が259円であることを考えても、割高な戦略をとっていたと言えるでしょう。

消費者にもそのブランドイメージは浸透していました。セブンイレブンの利用者は年収が高いことがわかっています。

マクロミルの「ブランドデータバンクが調査した、「セブン・ローソン・ファミマ コンビニ3ブランドの利用者を徹底比較!購入商品の違いや特徴とは?」では、セブンイレブン利用者の平均個人年収は480万円。ローソンが443万円、ファミリーマートが461万円でした。

更に別のブランド調査(LINEリサーチ「好きなコンビニ、全エリアでセブンイレブンが1位に/若年世代にはファミマが人気」)では、セブンイレブンが好きな理由のトップに「お惣菜・お弁当がおいしい」があがっています。ファミリーマート、ローソンは、ともに「ポイントがたまりやすい」というものでした。

すなわち、セブンイレブンは戦略的に高価格のものを提供することに注力した結果、競合と比較して高品質であるという消費者意識を獲得することに成功していたのです。

ファミリーマートやローソンはポイントに代表されるように、お得であるというイメージが根強いものになっていました。

急速なインフレの進行で節約志向が高まる

セブンイレブンの競争優位性は有利な方向に振れていましたが、インフレが状況を一変させます。

2024年8月の消費者物価指数(総合指数)は前年同月比で3.0%上昇しました2020年を100とした場合、109.1まで上がる計算です。

生鮮食品とエネルギーを除いた指数でも前年同月比で2.0%上昇しています。消費者の節約志向が高まったのです。

リクルートは節約行動の調査を行っています(「物価高で高まる節約志向の実態と外食での節約行動を調査(2024年1月実施)」)。それによると、最近の物価高で節約志向が高まった人は46.1%に上ります。

節約する出費の第1位が「内食の費用」。食事にかける出費を抑える様子がわかります。

更に、節約方法として1位にあがったのが「インターネットやアプリ、フリーペーパーからクーポンを入手し利用」で52.6%。ポイントで賢く買い物ができる、という消費者意識を獲得していたローソンやファミリーマートが有利になります。

しかも、ローソンは2023年9月に弁当やおにぎりなどの商品を最大20%引き下げるという、安値路線強化に動いていました。

ローソンが上場廃止になったのが2024年7月23日。いきなりの安値路線は、経営のかじ取りがしやすくなったことが背景にあるのは間違いないでしょう。

セブンイレブンの競争優位性は薄れてしまいました。

しかし、2024年9月にセブンイレブンは「うれしい値! 宣言」と銘打って、弁当などの値下げに動きました。セブンプレミアムの商品205アイテムも含まれます。

この路線変更が、下半期の業績にどのような影響を与えるのか。注目のポイントとなるでしょう。

文/不破聡

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