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「解雇規制緩和」とは?見直しの背景とメリット、デメリット

2024.11.04

解雇規制緩和が実現した場合、私たちの生活や労働市場はどのように変化するだろうか。 現状の解雇規制を確認し、規制緩和の背景についても理解を深めてみよう。

解雇規制緩和は、近年の労働市場の変化などを背景に議論が交わされている重要なテーマだ。人々の生活に身近な内容であるため世間の注目度も高いが、具体的にどうなるのか理解が浅い人も多いのではないだろうか。

本記事では、「解雇規制緩和」とは何か、現状の規制の内容と規制緩和のメリットやデメリットを解説する。また、解雇規制緩和の実現が労働市場や経済環境に与える影響も紹介する。

解雇規制緩和とは

解雇規制緩和とは、簡単に言うと「企業が従業員を解雇する際に設けられている制限を見直すこと」を指す。まずは現状の解雇規制を確認し、規制緩和の背景についても理解を深めよう。

■現状の解雇規制とは?

日本では現在、法律によって解雇に関する制限や条件が設けられており、一般的にこれらの規制を解雇規制と言う。

解雇規制は、労働者の権利を守るための制度だ。この規制により、テレビドラマのワンシーンのように上司の機嫌を損ねたくらいで「君はクビだ!」と言われる理不尽な解雇は認められない。解雇規制は労働者の雇用環境を守るために重要な役割を果たしている。

解雇に関して、労働契約法によって規制されている。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法 (解雇)第16条より引用)

しかし、解雇の妥当性を判断するにあたり、この条文にある「客観的に合理的な理由」や、「社会通念上相当」といった表現には具体的な定義がない点が難しいところだ。企業側は正当な理由をもって解雇の判断をしたとしても、従業員側は不当解雇であると無効を求め、裁判で争われるケースも少なくない。

また、不況や経営不振などを理由に行われる整理解雇(リストラ)についても、以下の条件を満たす必要がある。

  • 客観的な必要性があること
  • 解雇回避のために最大限の努力を行ったこと
  • 解雇対象の人選の基準が客観的、合理的で、運用も公正であること
  • 労働者に対し、解雇の必要性と時期や規模、方法について納得を得るために十分な協議を行うこと

これらは「整理解雇の4要件」といわれる。法律で明確に定められてはいないが、過去の判例によって確立した事項であり、整理解雇の有効性を判断する基準となっている。

【参考】

e-Gov 法令検索|労働契約法

厚生労働省|労働契約の終了に関するルール

■解雇規制緩和が議論される背景

解雇規制緩和が議論される背景には、いくつかの要因がある。現状の解雇規制は、労働者の保護と雇用の安定を支える一方で、企業が柔軟に労働力を調整することを困難にしているとの指摘がある。また、終身雇用制度の維持が難しくなっており、働き方の多様化が広がっている点や、解雇規制が労働生産性の伸び悩みの一因となっている指摘もあり、規制の緩和が議論されている。

■自民党総裁選をきっかけに話題になる

解雇規制緩和はこれまでも度々議題に挙がっていたが、2024年の自民党総裁選をきっかけに一気に注目が集まった。

主に総裁選に出馬する小泉進次郎氏と河野太郎氏が、解雇規制の見直しや新たな制度の必要性を掲げたことが要因だ。具体的には、小泉氏は整理解雇の4要件の見直しや再就職支援の整備、河野氏は不当解雇に対する金銭補償などについて言及した。

日本の雇用システムが大きく変わる可能性のある規制緩和に大きな関心が寄せられ、SNSでもさまざまな意見が飛び交うこととなった。

■いつから施行される?

2024年11月現在、解雇規制緩和の具体的な内容や施行の時期については決まっていない。新総裁となった石破茂氏は、解雇規制緩和に慎重な姿勢を示しているのが現状だ。石破氏は、労働者の権利の保護と企業の人材確保の両立の観点から、十分に議論されるべきだと主張している。解雇規制緩和が実現したとしても、関連法案の施行などにはある程度の時間を要することが予想されている。

【参考】毎日新聞|解雇規制など雇用政策 候補者政策発言集 自民総裁選

解雇規制緩和のメリットとデメリット

解雇規制緩和は、企業と労働者どちらの立場にもメリットをもたらすとの見方がある一方で、デメリットも指摘される。ここからは、具体的なメリット・デメリットと関連する意見を紹介する。

■解雇規制緩和のメリットと賛成意見

解雇規制が緩和されることで企業に生じるメリットの一つは、柔軟な人員配置が可能になり、経営の自由度が高まる点だ。市場の変化に迅速に対応でき、企業の競争力の向上につながると見られている。また、解雇規制の緩和により人員削減がスムーズになると、人件費が抑制され経営の効率化が図れるとの意見もある。

企業にとって柔軟性のある経営や積極的な事業展開を促進することは、結果的に新たな雇用の増加ももたらす。労働者にとっては、スキルを活かした再就職が可能になり選択肢が広がることもメリットとして挙げられている。

解雇規制については、1950~60年代頃の高度成長期に形成された年功序列や終身雇用の雇用システムがベースとなっていることもあり、現代の社会情勢との乖離を指摘する声も多い。

規制の緩和に賛成する有識者や世間からは、「年功序列で給料が決まり解雇もされない環境では、新しいものに取り組む意欲が生まれない」「働かない従業員が能力に見合わない収入を得ているのは、納得がいかない」「労働者の保護ばかり手厚くすると、企業が立ち行かなくなる」など、さまざまな意見が出ている。

■解雇規制緩和のデメリットと反対意見

解雇規制緩和を行うことで深刻なデメリットがもたらされる可能性も指摘されている。反対意見としてもっとも強く挙げられるのは、雇用の不安定化だ。企業による解雇が容易になれば、労働者は常に不安定な雇用状況に置かれる可能性がある。正社員の雇用が不安定になることで非正規雇用が増加し、結果的に労働者の待遇が悪化することを懸念する声もある。

さらに、解雇規制を緩和することは企業の権限強化につながり、労働者の保護を軽視しているとの批判もある。

SNSなどでも「育児、介護、病気などの事情を抱えた従業員は解雇されるのではないか」「雇用が不安定な状況では、労働者のモチベーション低下やうつ病を招くのではないか」といった不安の声が多く見られる。

また、解雇規制緩和は企業がデメリットを被る危険性もある。解雇や再就職へのハードルが低くなり人材の流動が活発化する労働市場では、自社の優秀な人材が他社へ流れる可能性もあるだろう。

解雇規制緩和が実現するとどうなる?

解雇規制緩和が実現した場合、私たちの生活や労働市場はどのように変化するのだろうか。規制の緩和が与える影響や、想定される変化について確認しよう。

■労働市場の流動性向上が期待される

解雇規制緩和が労働市場にもたらす効果として、流動性の向上が挙げられる。強い反対の声がありながらも、賛成派が規制緩和の必要性を主張する理由の一つは、労働市場の流動性向上による経済成長を見込んでいるためだ。

人材の移動が活発になれば、企業は必要な人材を適切に配置できるようになり、競争力向上を図ることができる。成長分野に人材が投入されることで、産業の新陳代謝が進むことも期待されている。

■労働者を保護する新たな制度が生まれる可能性

解雇規制の緩和と同時に、労働者を守るための制度が整備される可能性がある。解雇規制緩和は、現行の規制が緩くなり企業が解雇しやすくなるだけのものではない。解雇される労働者に対する再就職支援や失業保険の拡充など、なるべく不安を解消し転職できる環境づくりの必要性も議論されている。労働者の権利を守ることは大前提であり、より良い制度への改革が検討されている。

■企業や労働者の意識の変化

解雇規制緩和が実現すれば、企業や労働者の雇用に対する意識は大きく変化するだろう。企業は優秀な人材の確保と育成のため、採用条件や評価制度の見直しを検討することが予想される。業務内容を明確に決めて雇用契約を結ぶジョブ型雇用が増加し、年功序列ではなく能力や働きに見合った評価がなされる成果主義が進むのではないだろうか。

労働者は、転職を視野に入れた働き方がスタンダードになり、スキルアップや自己成長への意識が高まる可能性がある。

【参考文献】

山口周「ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式」, ダイヤモンド社, 2019年7月

山口周「ビジネスの未来」, プレジデント社, 2020年12月

落合陽一「日本再興戦略」, 幻冬舎, 2018年1月

※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。

文/編集部

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