世界保健機関(WHO)の2022年のデータ*によると、世界で約10億人が精神疾患を抱えており、10月10日の世界メンタルヘルスデーはその重要性を訴えるために定められている。
また、2024年11月1日に施行予定のフリーランス保護新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスの権利を保護し、より安定した働き方を支援することを目的としている。
この法律の施行により、フリーランスの法的地位が明確化され、より多くの人々がフリーランスという働き方を選択することが予想される。
*World mental health report: transforming mental health for all. Geneva: World Health Organization; 2022. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO.
こうした背景を踏まえ、テックビズはフリーランスのメンタルヘルスとそのサポート環境の実態を把握し、より良い支援策を検討するための調査を実施した。
フリーランスの孤独
フリーランスの10人に4人(40.7%)が仕事中に孤独感を経験していることが明らかに。特にフリーランス歴が短い人ほどこの傾向が強く、フリーランス経験一年未満では62.5%が孤独を感じていた。キャリア初期段階でのサポートが特に重要であることを示唆している。
孤独を感じる主な要因としては、第一に「仕事の獲得・維持の難しさ」、第二に「健康保険や福利厚生の不足」が上位を占め、第三に「仕事上の相談相手や同僚の不在」が続く。
これらの結果は、フリーランスの不安定な立場が孤独感を助長している実態を浮き彫りにしている。
フリーランスのメンタルヘルス
フリーランスの10人に4人(41.8%)がメンタルヘルスの不調を経験していた。年齢とメンタルヘルスの関係では、若年層ほど不調を感じやすい傾向があるようだ。
20代の半数以上(54.1%)がメンタルヘルスの不調を経験したことがあると回答しており、これは他の年代と比べて最も高い割合に。
若年層やキャリア初期のフリーランスが直面する孤独感の高さやメンタルヘルスの不調経験の傾向は、組織的支援や日常的な同僚との交流機会の不足に起因すると考えられる。
この時期は、専門スキルの向上や顧客獲得に加え、自己管理や時間管理のスキルも急速に求められる挑戦的な段階だ。また、描いていた理想のフリーランス像と現実とのギャップが顕在化する時期でもある。
フリーランス向けの適切なメンタリングプログラムや信頼できる相談相手のネットワーク構築、そして福利厚生の整備が解決の鍵となる。
また、コワーキングスペースの活用やオンラインコミュニティへの参加促進など、物理的・仮想的な「つながり」を提供する取り組みも効果的。
長期的には、フリーランスの孤独やメンタルヘルスサポートを体系化し、キャリアステージや背景に応じた支援策を整えることが、多様性のある健全なフリーランス市場の発展と個々のフリーランサーの成長に不可欠となりそうだ。
フリーランスの孤立と専門的支援へのアクセスの課題
フリーランスの64.3%が孤独感や不安に関して気軽に相談できる相手がいないと回答。67.8%がメンタルヘルスの専門家への相談がしにくい環境にあると感じていることが判明した。
フリーランスの労働環境における社会的孤立の深刻さと、専門的支援へのアクセスの難しさを示している。
フリーランス保護新法の制定により、今後フリーランスを選択する人が増えることが予想される。この変化に伴い、フリーランスの心理的安全性を高め、持続可能なキャリア構築を支援する環境整備がより一層重要になってきそうだ。
これらの取り組みは、個人のウェルビーイングだけでなく、社会全体の生産性向上にも貢献する。今後、フリーランスの孤立解消と専門的支援へのアクセス改善に向けた具体的なサービスやサポート体制の整備が不可欠となりそうだ。
調査概要
調査期間:2024年8月2日-8月20日
調査方法:インターネット調査
調査対象:20~60歳の男女フリーランス600名
■テックビズ代表取締役の中島一樹のコメント
今回の調査結果は、フリーランスの方々が直面するメンタルヘルスの課題を明確に示しています。
特に、経験の浅いフリーランスや若年層において孤独感やメンタルヘルスの課題が際立って見られ、また、専門的支援へのアクセスの難しさは幅広いフリーランスの方々が感じている課題であることが分かりました。
フリーランス保護新法の施行により、今後フリーランスの増加が見込まれる中、これらの課題に対する具体的な支援策の実施が急務となっています。
フリーランスの多様な経験と広い視野、業界や組織の垣根を越えた独自の視点は、企業の持続的成長と変革の鍵となります。
テックビズは、フリーランスを重要な「人的資本」として捉え、その価値を「社会的に共有」することで、個人と企業双方の成長、ひいては日本経済全体の活性化につなげたいと考えています。
この理念のもと、専門家による支援やより気軽に利用できる相談サービスなど、新たなフリーランス向けのサービスや支援策を展開していく予定です。これにより、多様な働き方を受け入れ、個人の能力を最大限に活かせる社会の実現に貢献していきます。
関連情報
https://techbiz.com/
構成/Ara