好きを仕事にしている人を訪ねて今回はSF映画好きのベンチャー社長を取材!
今回取材するブライトヴォックス社の代表取締役CEO・灰谷公良さんは、1999年に入社したリコーの新規事業開発部に所属中、SF好きが高じて3Dホログラム(技術的に、厳密にはホログラムではなく体積走査型立体ディスプレイ)の開発と事業化を実現。現在、リコーからカーブアウト起業し、斬新な立体サイネージのサービスを様々な企業に展開している。
自分の「好き」を相手に理解させて仕事にするにはどうすればいい?
3Dホログラムの事業化を果たすべく社内プレゼンを何度も行なった灰谷さんに対し、SF好きの共通点を持つ玉川さんが直撃。両者のSF愛が炸裂するとともに、好きなことを仕事にする際に必要な〝説得するコツ〟や、新規事業を立ち上げる際に欠かせないブルーオーシャンの意外な見つけ方にまで話は及んだ。
一度失敗したからといって諦めちゃダメ!
繰り返して行動することで「好き」を仕事にできる
玉川 最近『星を継ぐもの』(J.P.ホーガン著)を読んで、改めて「SFっていいな」と感じていたところです。灰谷さんはホログラムを使った立体映像装置の開発という、まさにSFの世界を仕事にしていますが、特に好きな作品は?
灰谷 仮想空間にいる人たちと共生するようなSF作品です。スパイク・ジョーンズ監督の『Her/世界でひとつの彼女』(2014年日本公開)や手塚治虫作品の『火の鳥』に影響を受けました。
玉川 僕は高校時代に『ブレードランナー』(1982年公開)を見て、SFの世界観が変わったのを覚えています。スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968年公開)とは全く違うSFの世界で驚きました。
灰谷 『2001年宇宙の旅』も最高ですよね。『ブレードランナー』は、続編『ブレードランナー 2049』(2017年公開)の映像がとても印象に残っています。玉川さんは『ブレードランナー』で特撮監督を担当した、SF映画界の神様といえるダグラス・トランブル氏に、お会いしたことがあるとか?
玉川 テレビ朝日の研修制度を利用し、特撮技術の最先端についてハリウッドの現場を取材した時ですね。同氏はすでに巨匠と呼ばれていたのに、とても気さくで。新しい映像表現について果敢に挑戦している姿が印象的に残っています。
SF映画の未来を先取りして事業化した3Dホログラム
玉川 灰谷さんがリコーに入社したのは、好きなSFを意識した結果ですか?
灰谷 はい。SFのような、未知の世界を実現させるためには、何より技術が必要です。リコーは最先端の高い技術力で新しい世界を提案する企業ですから。
玉川 そんなリコーで果たしたのが、立体映像装置の事業化というわけですね。灰谷さんが開発した3Dホログラムは、どのようなガジェットなのでしょうか。
灰谷 SF映画に描かれることの多い、デジタルのリアルなキャラクターが当たり前のように暮らしているシーンが好きで。3Dホログラムは、それを実現できるような装置です。具体的には『ブレードランナー 2049』で、主人公ジョーと感情を寄せ合って生活する、AIホログラムのジョイから着想を得ました。
玉川 同作品では、卓上に小さなホログラムを投影する、(物語の設定上は)少し古い時代の装置も描かれますよね。
灰谷 3Dホログラムは、まさにそれと同じような装置で、同作品の時代設定より少し早く実現できたことになります。
玉川 それはすごいことですね!