グループ経営ビジョン「変革2027」のスピードアップのため、デジタル技術を活用した業務変革(DX)を推進しているJR東日本グループでは、生成AIのさらなる活用を見据え、鉄道固有の知識を学習した「鉄道版生成AI」の開発に本格着手することを発表した。
本稿では、同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
「鉄道版生成AI」で目指す姿とは
JR東日本では、グループ経営ビジョン「変革2027」実現のため、業務変革を通じて社員の仕事を高度化することを目指している。
これまでも各種デジタルツールの導入により業務のDXを進めてきたが、「鉄道版生成AI」を開発して、社員の日常的な業務遂行を生成AIがサポートできるようにする。
同社では「生み出された時間を活用して、新しい事業の開発や地域活性化、お客さまサービスの充実など、社員が人ならではの創造的な役割に注力できるようにしていきます」と説明している。
■「鉄道版生成AI」の活用例
実現したい例としては、利用客からの問合せへの回答をより迅速に行なうことができるようになる、新入社員や鉄道経験年数の浅い社員の知識レベルの底上げに活用し、ベテラン社員が隣にいなくても生成AIから同等のアドバイスを受けられるようになることで、顧客サービスの向上につなげていくこと、などが想定されている。
また、「鉄道版生成AI」がより専門的な情報を学ぶことで、設備や車両のメンテナンスや工事における注意点や過去の発生事象を例示して作業の安全性を高めるほか、専門領域ではない鉄道業務の知識が必要になるような分野をまたがった調整を行なう際に、他分野の社員に問合せをしなくても生成AIが分野をまたがった回答ができるようになるなど、人手をかけずにサステナブルに業務ができるようにしていく。
この件に関して同社では、「JR東日本は、生成AIを活用したサービスも開発しており、あわせて社員自身の生成AI活用スキルも高めていくなど、今後も継続して鉄道事業における生成AI活用を推進していきます。生成AIを活用していく領域、ヒトが守っていく領域を見極めながら、ヒトと生成AIが協業する世界を描いていきます」とコメントしている。
■開発スケジュール
「鉄道版生成AI」には、鉄道事業を担う社員に求められる鉄道固有の知識を学習させます。3つのSTEPに分けて開発され、2027年度末の完成を目標として段階的に性能を高めていく予定だ。
ベースとなる大規模言語モデルは日本語で学習をしたモデルを採用。既に日本語の大規模言語モデルをもつパートナーとの開発を進めているという。
開発したモデルは、社内の各業務で必要とされる知識レベルを備えていることなどを評価する。STEPごとに正答率を評価し、「鉄道版生成AI」の性能を段階的に高めていく予定だ。
今後、鉄道事業における生成AI利活用の基盤として「鉄道版生成AI」を位置づけていく他、将来的には生成AIが社内システムと連携することも検討される。
また、鉄道事業者で共通的に利用できる生成AIモデルの開発を目指して、「他事業者においても利用可能な仕組みを検討するなど、日本の鉄道インフラ全体が将来にわたって安全かつサステナブルになることに貢献していきます」と述べている。
■参考:これまでの経緯
関連情報
https://www.jreast.co.jp/
構成/清水眞希