上司は部下の言い訳を取り除くスキルが求められています。部下が言い訳をすることで、成長機会を失います。つまり、「自身の不足を受け入れられない=成長機会の喪失」ということです。そもそも人は弱い生き物ですので、自分が傷つかないように「言い訳」を探して生きているといっても過言ではありません。では、なぜ、「言い訳は発生するのか」、「どのように上司は言い訳を取り除くのか」、を考察していきましょう。
言い訳が多い部下の特徴とは?
言い訳が多い人は「仕事はできないのにプライドが高い」、「自信がない」など、特徴があります。心の内は、「不安な気持ち(失敗したらどうしよう、私にはできる訳がない、怒られたくない、など)」が、自己防衛や保身(責任逃れ、叱られたくない)に走って、自分の非をなんとか誤魔化そうとするために言い訳が多くなります。
例えば、「プライドが高い人=自己評価が高い人」は、自分で勝手に自分を凄いと評価している状態です。一方で、「自信が無い人=自己評価が低い人」は、自分で勝手に自分にダメ出しをしている状態と言えます。この「自己評価と他社評価のギャップ」が不安の原因と言えます。
不安の正体は「自己評価と他社評価のギャップ」
他者評価とは「周りの人の評価、数字含む)」です。一方で、自己評価とは、「自分で自分を評価すること」です。不安の正体は、スタート前にゴール後のことを「自己評価(起こってもいないことを妄想して、勝手に自分で自分のことを評価している状態)」して不安になり、自分で自分を正当化する理由が「言い訳」と言えます。
ただし、世の中は、どこまで行っても「他社評価」の1つだけです。よって、自己評価を手放して、他社評価を受け入れること。つまり、起こってもいないことを妄想して、言い訳を考えて動けなくなるのではなく、まず目の前のことに集中して、動いてみて、出た結果を素直に受け止めて、未来に向けて行動変化することが重要です。
ゴールを手前に置いてあげる
目の前のことに集中するため、他社評価を受け入れる土台として、「見える化(数値化)、分ける化(因数分解)」が必要です。
例えば、営業マンのノルマが「1か月で売上1000万(果たして欲しい大きな責任)」とします。毎月、目標達成の人は達成イメージがありますが、目標未達の人は、達成イメージが持てずに「不安(失敗したらどうしよう。私にはできる訳がない)」に駆られます。そのため、ゴールを分解(因数分解)し、手前に明確なゴール(数値化)を置いてあげることで、達成イメージを持たせてあげることです。
営業であれば、月間目標は「粗利100万」とすると、「今週のゴールは見込1件を作るために3件訪問しよう(小さな責任に因数分解し、数値化する)」とし、たった1週間後のゴールに集中できる状態にします。遠足であれば、目的地は「1時間で5km先の公園」とすると、「次のゴールはコンビニ(500m)まで頑張って歩こう」という感じです。
部下の言い訳を取ってあげる
多くの言い訳は、責任と権限が不一致な状態で起こります。そのため、上司は部下に対して「責任>権限(権限が不足していると思っている状態)」⇒「責任=権限」にすることです。
~間違った言い訳の対処方法とは~
• 言い訳なんか言うなよ。
• 私もそう思うよ(同調)
• 私の言う通りにやって
• 私が代わりにやるよ
全てNGです。
言い訳なんか言うなよ。⇒心理的安全性が担保されないので、発言自体しなくなります。
私もそう思うよ(同調)⇒愚痴、言い訳を聞いて終わりで、上司が無理なら私もムリでしょ。
私の言う通りにやって ⇒指示待ちになり、未達でも上司に指示が悪いと責任転嫁します。
私が代わりにやるよ ⇒責任を巻き取ってくれるので、部下は常に上司をあてにします。
~正しい言い訳の対処方法とは~
言い訳を聞くにしても、同調ではなく「懸念材料や弊害(言い訳)」を全部聞くことで、部下は「上司が言い訳を聞いてくれる」という思考になります。そして、部下に「言い訳」+「こうやったらできる」を言わせるようにし、「言い訳」ではなく、「課題(やる前提)」にすることです。ポイントは「何が足りないの?」「何があればできるの?」です。
〇何が足りないの?
リソース(時間、人数、スキルなど)を確認します。例えば、40時間必要(5営業日×8時間/日)な仕事を割り振っていたとします。その場合は、今週どういう仕事していた?で
事実確認をします。
例えば、40時間できるのに、30時間しかやってない?(物理的にできない理由が無い状態)とします。この場合は、上司の指示が落ちない状態であることが考えられます。つまり、上司の指示を守らなくても問題ないという部下の意識状態です。別アプローチが必要です。
40時間でやれること全てやったが、できなかった場合は、調整する(何があればできる?)
〇何があればできる?(=言い訳を消してあげるには?)
• 権限を増やす⇒システム化する(作業を減らすための自動化)
• 責任を減らす⇒上司が巻き取る(代行は、期限を決めて実施)
• 事実を達成者の存在を示す
意識上の上下関係が大前提
別アプローチとは、上司と部下の意識上の関係が崩壊している場合があります。つまり、部下が上司を上司と思っておらず、別にやらなくても良い、と思っている状態です。野球でいえば、監督の指示を聞くかない選手の関係です。バントのサインが出ているのにホームランを狙う選手です。
例えば、「上司が部下とお友達の関係」になっている(上司がプレイヤーの位置に意識上、降りている状態)と、これくらいやらなくても許されるだろう、とルールや上司の指示の実行レベルが下がります。他方、部下が上司を軽んじている(部下がマネージャーの位置に意識上、上がっている状態)は、腹落ち納得しないと、やりたくない、と指示が落ちないです。
上司と部下の関係は、責任の大きさです。上下関係には年齢や社歴は、一切関係ありません。会社とは糧を得るコミュニティ(求められる成果を果たして給与をもらう場所)ですので、上司は、責任を果たすために「指揮命令の役割」があり、部下は「実働の役割」を持っています。とは言え、「無暗に上司の指示に従いなさい」と言うのではなく、「プランA(上司の指示)」よりも、良い「プランB(自分の意見)」があれば、躊躇なく上司に提案してください。ただし、却下されたら役割として「プランA」を即実行して、出た結果に対して、新たに上司にプランBを提案してください。そして、PDCAを速く多く回すことで速く正解に近づけます。その結果、チームが勝つことで、メンバーも多くのメリットを享受することができます。
まとめ
1.言い訳の心の内には「不安な気持ち」が隠れている
2.不安の正体は「自己評価と他社評価のギャップ」
3.自己評価を手放して、他社評価を受け入れる
3.ゴールを分解し、手前に置いて達成イメージを持たせる
4.部下に「言い訳」+「こうやったらできる」を言わせる
6.ポイントは「何が足りないの?」「何があればできるの?」
7.「責任>権限(言い訳)」⇒「責任=権限」にするには?
(1)権限を増やす
(2)責任を減らす
(3)達成者の存在を示す
8.上司と部下の関係は、責任の大きさ
文/株式会社識学 本田務