インフレや人手不足が企業経営に大きな影響を与える中、実際の賃上げ状況には課題が見受けられる。
また、令和6年6月21日に「経済財政運営と改革の基本方針2024 ~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太方針2024)が閣議決定されたが、経営者の認知度はどの程度なのだろう。
GDXリサーチ研究所は、企業が賃上げをどのように実施し、どのような課題が在るのかを明らかにするため、中小企業の経営者851人に「中小企業経営に関する実態調査」を実施した。
物価上昇を上回る賃上げを実現できている中小企業は2割未満。「経済財政運営と改革の基本方針2024」の認知度は?
「物価上昇を上回る賃上げ」の状況について、「実現できている」と回答した企業は14.3%、次いで「物価上昇を上回るほどではないが、賃上げは実施した」が41.7%、「賃上げを実施していない」が43.9%という結果に。
この結果から、「物価上昇を上回る賃上げ」を実現できている企業は2割未満で少数であることが伺え、物価上昇を上回る賃上げの実現には課題があることがわかる。
賃上げを実施した背景について、「従業員満足度の向上のため」と回答した企業が66.7%と最も多い結果となった。
次いで「物価上昇を受けて」が41.7%、「人材確保のため」が39.8%、「最低賃金の上昇を受けて」が30.6%、そして「業績がアップした、または業績アップが見込めるため」が22.9%、「賃上げ促進税制が施行されたため」は4.4%という結果に。
この結果から、従業員満足度の向上を目的とした積極的賃上げを実施している中小企業は多いものの、実際は防衛的賃上げ理由が背景にあることが推測される。
「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)に関する認知度について、「知っており、内容を理解している」が4.3%、「聞いたことはあるが、内容はよく知らない」が35.5%、そして「知らない」が60.2%という結果に。
この結果では、全体の約6割が「骨太方針2024」について「知らない」と回答しており、政策の認知度が低いことが示されており、賃上げ政策の認知拡大と効果的な実施の必要性が高まっていること浮き彫りになった。
Q1では物価上昇を上回る賃上げを実現している企業が少数であり、中小企業での物価上昇を上回る賃上げ実施には課題があることが浮き彫りに。
Q2では、従業員満足度の向上を背景としつつ、防衛的な賃上げの実施となっている現状がわかった。また、Q3の結果が示すように、「骨太方針2024」の認知度は低く、約6割の企業が認知していない状況にあることが判明。
これらの結果から、中小企業の賃上げ実施の支援や、政策の認知拡大が今後の重要な課題であると言える。
調査概要
調査主体:フォーバル GDXリサーチ研究所
調査期間:2024年7月8日~2024年8月10日
調査対象者 :全国の中小企業経営者
調査方法:ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
有効回答数:851
※フォーバル GDXリサーチ研究所調べ
フォーバル GDXリサーチ研究所所長 平良 学氏のコメント:骨太の方針2024と中小企業の賃上げの現状について
今回の調査結果から、物価上昇を上回る賃上げを実現できている中小企業が2割未満であること、また、約4割の企業が賃上げを実施していない状況であり、賃上げによる物価上昇への対応には大きな課題が存在することが明らかになりました。
賃上げを実施した理由として「従業員満足度の向上」が最も多く挙げられましたが、「物価上昇を受けて」や「最低賃金の上昇を受けて」などの「防衛的賃上げ」も見受けられ、企業が外部環境の変化に対抗するために賃上げを行っているケースが多いことを示しています。
また、政府の「骨太方針2024」に関する認知度の調査も実施し、約6割の企業が「知らない」と回答しており、国や政府の声が中小企業に届いていない現状も露呈しました。
今回の賃上げのような国を挙げての施策を実施する場合、国や政府は企業への情報、支援策などを発信、提供します。まずはそのような国や政府の声が中小企業に確実に届くような状態になることが重要と言えるでしょう。
そして、それらを中小企業が活用できるようになれば、今の状況は改善へと向かうでしょう。今後も国や政府と中小企業の橋渡しとなるべく、フォーバル GDXリサーチ研究所は調査・発信を続けてまいります。
関連情報
https://gdx-research.com/
構成/Ara